津軽海峡をはじめとした北の海の幸を味わいたい。ついつい北海道まで行ってしまいがちですが、いやいやむしろ、本州最北端の都市を知らずして北海道に渡るべからずですよ!
青森といえば、イカやホタテ、ウニにアワビなどが名物。田酒をはじめ銘酒もこれでもかと揃っている。一度は飲み歩いて損はない街です。北東北ならではの北海道にはない郷土の雰囲気を肴に乾杯しませんか。
昭和の雰囲気がそのまま残る北国の飲み屋街や、うらびれたスナック街から聞こえてくる津軽三味線の音など、どこか懐かしく、心の何処かで憧れていた人生の先輩が集う空間があるように思います。そんなエリアを一周した後、ちょっぴりお腹がすいてきた頃合い。ここは、さっきの民謡酒場で隣りにいたお父さんに教わったお寿司屋に行ってみよう。
役所裏の古い繁華街でも紹介されるかとおもいきや、おすすめと言われたのは驚いたことにJR青森駅のロータリーに面した新しい建物の寿司屋「大黒」です。聞けば、長く青森でやっている老舗で、最近建て替えたのだそう。場所柄、お昼どきは観光客の利用が多いそうですが、夜は昔から贔屓にしている地元のお父さんたちのたまり場になっているのだそう。
夜9時。地方の酒場ならばすでにお客さんが1順して空いてきそうな時間ながら、なんとほぼ満席。ちょど帰るというポロシャツにジャケット姿が似合う常連さんに席を譲ってもらい、無事にカウンターに着席。板前さんもお店のお姉さんたちもとても親切で暖かい感じ。
悩むことなくビールから。生は一番搾りで瓶はクラシックラガーです。ここに来るまでひたすら豊盃を飲み続けていたので、そろそろ水分補給がしたい時間。生ビールをもらって、では乾杯!
お寿司屋ながら、大きいジョッキの生ビールが550円というのは嬉しい。青森の酒場物価は全体的に安め。
あっという間に飲んでしまい、次は田酒をもらうことに。お通しは昆布です。この昆布がねっとりとした深い味わいで、まさに旨味の塊のようなもの。昆布は北海道産が9割と聞きますが、青森でも地元消費用で少量ながら市場に並びます。
田酒をきゅっと。やっぱりいいよね、旅先のお酒は。
各地でそれぞれ定番のお酒が異なりますが、青森の人たちはやはり日本酒が多いみたい。焼酎のメニューもありますが、あまりボトルをいれてぐいぐい飲むという九州的な人は少ない。
豊富な日本酒の品揃え。すべて青森の地酒で桃川など東京ではあまり見かけない銘柄もあるので、ぜひ飲み比べてみたい。寿司屋の定番のおつまみはあまりなく、ホッキ貝の塩焼き、ホタテの貝味噌焼き、ホヤ酢など、お寿司屋であってもつまみはとことん青森的。1,600円でお酒2杯とお寿司三貫、小鉢とお刺身がついたセットもあり、電車の時間までのほろ酔いに人気だそう。
ちょい飲みセットもよいけれど、ここは教えてくれた地元のお父さんの言いつけを守り、特上握りをオーダー。特上なの2,200円とやはりご当地価格です。内容は仕入れで変わりますが、赤貝、ホタテ、アワビに大間の中トロ、車海老にウニと絢爛豪華な内容。東京でこれを食べたら幾らすることか…(笑)
ネタも酢飯もかなり大きく、1.5倍から2倍はあるボリューム満点の握り。笹の葉が小さいのではなく、握りが大きいのです。かなり大ぶりの車海老がまるで甘エビに見える。
田舎のお寿司だなーって感じるでしょう?いやいや、これが素晴らしいのです。青森漁港まで数百メートルの距離。県庁所在地の中心に漁港があるなんて、他県ではなかなかありませんよね。水揚げ場所と消費地が近いので、ネタの鮮度がとにかく抜群に良いのです。
最後にさっきの海老の頭をつかってお澄ましのサービス。お酒を鳩正宗に変えて、満腹のお腹を擦りつつ板前さんと会話する楽しいひと時。午前中から通しでやっているのは、駅前食堂的な存在であり続けていた名残なのだそう。
近隣の飲食店をいくつか教えていただき、勉強になりました。
板前さん推薦の酒場は、やはり大黒寿司と同様に駅前にあり、細い路地にはぎっしりとよさ気な提灯が並んでいます。まだまだ青森の夜は終わりそうもありませんね。
温もりあふれる大衆寿司は安くて質が良い。こんなお店が当たり前に駅前でお昼から暖簾を出しているのだから、やっぱり旅はやめられません。
さぁ、教わった次の酒場へいってきます。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
大黒寿司
017-722-6480
青森県青森市新町1丁目2-6
11:00~22:00(火定休)
予算3,000円