水道橋『猿楽町淺野屋』創業大正14年。100年蕎麦屋で味わう、漆黒の天重と粋な蕎麦前

水道橋『猿楽町淺野屋』創業大正14年。100年蕎麦屋で味わう、漆黒の天重と粋な蕎麦前

お蕎麦屋さんで軽く一杯。板わさや焼き海苔を肴に粋に飲むのも素敵ですが、私が愛してやまないのが「蕎麦屋の天丼」です。

天ぷら専門店の上品なそれとは違う、あえて衣をしっかりまとわせた天ぷらに、出汁がきいた濃厚なタレ。神田猿楽町にある老舗『淺野屋』は、そんな愛すべき「黒天丼」に出会える名店です。

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学生街の喧騒を離れた猿楽町でもうすぐ100年

神田といえば、学生や古書店、出版社が集まる知的なエリア。賑やかな神保町の交差点から少し離れた、猿楽町の静かな路地「錦華通り」に『淺野屋』はあります。

創業は1925年(大正14年)。あと少しで100年を迎えるという、正真正銘の老舗です。現在は4代目と息子さんの5代目が暖簾を守っています。

店先に停められた出前用のバイクが、いまもこの街の胃袋を支えている証拠。観光地化されていない、この街で働く人や学ぶ人のための日常の食事処だからこそ、私たち大人がのんびり蕎麦前を楽しむのに、最高の場所なんです。

正統派の蕎麦前を楽しむ

キリンクラシックラガー中瓶:700円

暖簾をくぐれば、そこは昭和の時間が流れる落ち着いた空間。

まずは瓶ビール(キリンクラシックラガー)で喉を潤しつつ、品書きを眺めます。

金婚:650円

蕎麦前で外せない「板わさ」(650円)は、小田原・鈴廣のかまぼこを使用。15年以上愛用しているそうで、その弾力と魚の風味は、やはり日本酒を呼びます。

合わせるお酒は、東京の地酒「金婚」。実は醸造元との豊島屋本店は同じ猿楽町にあり、神田明神のお神酒としても知られる、まさにこの街のお酒なんです。常温でもらうと、米の旨味がじんわりと広がります。

玉子焼き:500円

蕎麦屋酒の定番「玉子焼き」をお願いしました。

お蕎麦屋さんらしい、旨味がじゅわっと広がる丁寧な仕事。焼き立ての熱々をハフハフしながら、冷や(常温)の酒を流し込む。これぞ蕎麦屋飲みの醍醐味、思わず顔がほころびます。

漆黒の衝撃!ごま油香る、蕎麦屋の「天重」

上天丼:1,500円

さて、ほどよく酔いが回ったところで、いよいよ主役「上天丼」の登場です。お重で供されるので、正確には「天重」ですね。

運ばれてきた瞬間、ふわりと漂う香ばしい香り。淺野屋では揚げ油にごま油を使用していて、この香りがたまらなくお酒を誘います。

そして、見事なまでに黒いビジュアル!

野菜などは一切なし、立派な大海老が3本だけという潔さ。これで1,500円というのは、神田という立地を考えれば良心的すぎます。

衣はサクッと花が咲いた、ボリュームのある関東風。そこへ、継ぎ足しの濃厚なタレがたっぷりとかかっています。

蕎麦屋の天丼は、総じて見た目ほど塩辛くはないんです。

まろやかなコクが衣とごはんに染み渡ります。洗練された天ぷら屋さんの天丼も良いけれど、蕎麦屋の天丼には、この「かきこむ」美味しさがあるんですよね。

日常的に利用したい街の名店

蕎麦(二八)も天丼もボリュームはしっかり。たくさん食べて満足してほしいという心意気も、この店が長く愛される理由でしょう。

木鉢会にも加盟している猿楽町浅野屋

『淺野屋』は土日祝がお休み。完全にこの街の日常に寄り添った営業スタイルですが、平日に時間が取れたなら、わざわざ訪ねてこの黒天丼を味わう価値があります。

長く続く店には理由がある。そんな当たり前のことを再確認させてくれる一軒でした。

店舗詳細

おそばのメニュー。晩酌セットもある!
ご飯物とお酒のメニュー
店名猿神田猿楽町浅野屋
住所東京都千代田区神田猿楽町2丁目7−6 浅野屋ビル
営業時間11時00分~15時00分
17時00分~19時30分
土日祝定休
創業1925年