お酒は言うまでもなく、日本全国、あらゆる土地で造られています。
そして、それぞれの土地に根付いた料理を肴に地元のお酒を飲むというのは、私たち飲兵衛にとってなによりの贅沢です。
お酒と肴を楽しむのを目的に旅に出る人は多いと思います。私もその一人です。
ですが、そうそう旅ばかりするのはなにかと大変。幸い、東京には全国の郷土料理居酒屋が勢揃いしているので、まずはそんなお店で旅気分を味わいましょう。
今回ご紹介するお店は新宿の「とど」。
大分出身の女将さんのお店で、新宿の花園神社横で40年近く続くお店です。
大分の地酒が誇り高く書かれたメニューが有りますが、まずはビールからにしましょう。びんの扱いはなく、樽生のみ。めずらしく、アサヒ・キリン・サッポロと大手4社が揃っています。
ビジネス利用やちょっとした接待で使われることが多いお店なので、たてるべき相手の好みに合わせて乾杯できるような配慮は銀座でもよく見かけます。
お通しは日替わりで、この日はイワシ、かんぴょう、大根を軽く煮付けたもの。一口目からしっかりと伝わる味の良さに「うんうん」と。
九州には各県に個性的な土地の料理があり大変楽しいのですが、大分はその立地柄、環瀬戸内文化圏による西日本らしい料理が多く、醤油や出汁の使い方が他の九州各県とはまったく異なります。
瀬戸内海から採れる関アジ・関サバが有名な通り、やはり魚食いな地域であり、それら大分の特長を最もつよく感じさせるのがこの「りゅうきゅう」です。
醤油、酒、砂糖を味付けに、卵にいりゴマやたくさんのネギをいれ、生姜ですっきりさせたタレでブリやアジを漬け込む料理です。瀬戸内海破産でお向かいの愛媛ではひゅうが飯の愛称で呼ばれていて大分の郷土料理の代表です。
名前の由来は諸説ありますが、千利休からと聞いたことがあります。
そんなりゅうきゅうを世界屈指の歓楽街で味わえるなんて、なんという贅沢。味付けは旅先の別府で味わったものと同じで、大変美味。
この味付けでお酒と相性が悪いはずがありません。
りゅうきゅう(1,300円)にはブリがたっぷりと漬かっているのですが、やはり関サバ・関アジを食べなくちゃ。
お店は昔からの割烹風居酒屋という雰囲気がたっぷりで、外の歌舞伎町の騒がしさとは一変、ここは完全に大分の時間が流れていまする
空輸しているというアジに鯖、たしかにしっかりとしたもので、身の厚みが嬉しいです。鯖は刺し身というのがポイントですね。大分の醤油は甘いというのはご存知でしょうか。野田や銚子の醤油で育った私の概念を覆すのは簡単でした。この醤油でお酒が飲めます(笑)
さて、その気になる日本酒は、大分・国東町の造り酒屋、萱島酒造の地酒。
小倉から日豊本線の特急ソニック号に1時間ほど乗って杵築駅へ。そこから車でさらに国東半島へと進んでいくので旅としてはなかなかのハードコースですが、お酒だったらここで飲めるもんね。
大分では比較的メジャーなお酒で、東京では国際フォーラム内にアンテナショップ的な位置づけのお店を持っています。水は軟水、米はヒノヒカリ(大分の米)で、味はおんな酒の伏見に近いです。
これが、ねっとりとした旨味のある醤油をつけた魚との相性が絶妙。
こちらは別府の名物、鶏天です。
鳥の天ぷらですが、見た目は完全に唐揚げですね。大分の醤油にニンニクで下味をつけ、片栗粉や小麦粉を付けて揚げ、味付けはポン酢というのがとり天の作り方。
ポン酢で食べる唐揚げはほかになく、大分で初めて食べたときはインパクト大でした。味付けは完全に和食なので、これまた純米酒がよく合うのです。
八鹿酒造のお酒「八鹿」を冷酒でいただいています。
こちらもまろやかでフルーティー、雑味の少ないきれいなお酒です。
八鹿酒造は1800年代創業の歴史ある酒蔵で大分では非常にメジャーな酒造場です。お酒と緯度の関係を気にされる方は多いです。確かに、鹿児島や沖縄ではほとんど清酒は生産されていません。大分はどうなの?と思われる方、ご安心ください。素敵なお酒を作っていますから。
有名な由布と湧蓋山(わいたさん)挟んで北側で造られるこのお酒も一度は飲んで欲しい銘酒です。
すっかり観光ガイドになってしまいました本記事ですが、やはりご当地の酒と肴が揃ってこその郷土料理。旅にでたいな―という気持ちになりながら飲むお酒もまたいいものです。
お客さんの9割は50~60代、新宿のおじさまにとって貴重な空間です。こういう酒場、私は好きだなぁ。
美味しかったです。ごちそうさま。
とど
03-3208-9074
東京都新宿区新宿5-17-14 三光町ビルB1F
17:00~23:00(日祝定休)
予算6,000円