終戦直後の1946年に横須賀で創業した「お太幸」。横須賀が本店ですが、衣笠店もこれまた実に素晴らしい正統派の大箱酒場です。ベテランの飲兵衛さんが16時の開店に合わせてやってきて、17時頃にはすでに店内は大盛り上がり。
大箱酒場の賑わいの中に交じる楽しみ
横浜から衣笠までは、JR横須賀線で50分。横須賀駅のひとつ南隣の駅です。三崎街道を軸にして横須賀市中心街と連続的なつながりがありますが、衣笠駅前にも立派な繁華街が存在します。その中心的存在が200店舗近くが軒を連ねる衣笠仲通り商店街(衣笠商店街)で、平成初期の頃で時間が止まったような懐かしい雰囲気を留めています。
一般的に商店街と飲み屋街はわかれていますが、衣笠仲通り商店街は喫茶店やお菓子屋、おもちゃ屋、スーパーと飲み屋が共存しており、これが単なるベッドタウンの駅前商店街とはまた違ったムードをつくりだしています。
夕方になると黒帯の飲兵衛さんたちが繰り出してきて、次々酒場へ吸い込まれていきます。駅の近くにある『お太幸』が代表的な存在で、130席もあるかなりの大箱酒場です。
昔の温泉旅館のような独特なエントランスに入るとすぐに階段です。店は二階にありますが、大ベテランの皆さんがテクテクと上って行きます。私も負けていられません。
どうですか、この雰囲気。少々くたびれている?いやいや、それがいいんです。作られたレトロと違う、圧倒的な使用感。ただ古いだけではありません。
しっかり清潔に保たれていますし、なによりお客さんが連日連夜溢れており、猛烈な活気が熱量となってネガティブ要素を吹き飛ばしています。
お客さんの平均年齢は50代後半くらいでしょうか。70代と思われるお父さんたちが楽しそうに焼酎を飲んでいる様子を眺めながら、ぼーっとこの空間に身を置くと、不思議と癒やされるんです。ちなみに店内は禁煙。
せっかく商店街を見下ろせそうな窓際も、この通りところ狭しとPOPで埋まっています。春巻きだの酎ハイだの、そういった活字の嵐の中にいると飲兵衛はテンションアップ。
そんな中に混じって真面目な「*ごあいさつ」がありました。昭和21年に横須賀初の10円寿司や北京料理をはじめてレジャー企業を目指した話が書かれています。現在、お太幸は横須賀と衣笠の2店舗のみですが、ともに大箱で半世紀以上続けてきたのは大変な努力があったものと思います。
スタートが寿司と中華。その名残が感じられる名物料理
「古くても賑わっている大箱の酒場なんてどこにでもあるじゃない」と思われるかもしれませんが、2020年からの数年で急減しました。『お太幸』が残っている理由は、これだけ歴史があっても新メニューを考案したり、接客に気を遣ったり、前向きに取り組まれているからではないでしょうか。
さすがは三浦半島といいましょうか。魚が安くて鮮度がよいです。水揚げ当日のアジ刺しも500円と良心的。
名物はシューマイ。300円ほどながら、しっかりせいろ蒸しで提供してくれます。
辛子をたっぷりつけて一口。中からじゅわっと肉汁がにじみでてきます。
金升の朱ラベルなどの地酒や季節限定酒も豊富。管理状態がよく回転しているため鮮度もよい。目の前で升に注いでくれるのは嬉しいですね。選んだお酒は灘の宮水で仕込んだ「沢の鶴の生酛純米 ひやおろし」。
刺身に焼鳥、ジャーマンポテトとなんでもありの『お太幸』ですが、比率的にはシュウマイ、餃子、チャーハンと中華が多め。そんな中から、中華要素を取り入れた横須賀らしいオリジナルの料理「豚肉カレー煮」をオススメしたいです。
大きな角煮がごろんと6個ほど。箸で持ち上げると崩れるほどトロトロになっています。とろみがかかった蕎麦屋のそれに似たカレーと相性がとてもよい。
横須賀のソウルフードといえば、海軍カレーから続くカレー料理ですが、その街で70年以上続いてきた老舗の酒場にもこうして当たり前にカレー料理が定着しています。そんな地域の色を楽しめるのもローカル酒場巡りの醍醐味です。
店舗詳細
品書き
- アサヒ生ビール:595円~
- 瓶ビール アサヒスーパードライ・サッポロラガー大瓶:各700円
- ホッピーセット:495円
- 横須賀ハイボール(サントリー角):500円
- ブラックハイボール(ブラックニッカ):440円
店名 | お太幸 衣笠店 |
住所 | 神奈川県横須賀市衣笠栄町1-70 |
営業時間 | ■ 営業時間 [月~木] 16:00~22:00 [金・土・祝前] 16:00~22:30 ■ 定休日 12月24日、12月30日~1月2日 |
創業 | 1968年(事業としては1946年) |