新子安に残る旧市民酒場3軒のうちのひとつ『甘粕屋』。家族で切り盛りする正統派の正統派酒場です。昭和10年創業と大変歴史があります。飲兵衛の心を掴む料理の数々はどれも500円前後。近所のビール工場でつくられたラガービールで乾杯です。
目次
90年の歴史を持つ酒場
外観
新子安駅前には4軒の老舗酒場があります。再開発等で店を畳む老舗酒場が多い今、実に素晴らしいことです。そのうちの3軒は、戦中・戦後の酒類配給制度時代にあった「横浜市民酒場組合」に加盟していた店なのですから、その歴史の長さに驚きます。
今回ご紹介する『甘粕屋』も市民酒場に加盟していた酒場で、約90年の歴史があります。何度かリニューアルもあったのでしょう。入りやすい昭和の大衆酒場といった雰囲気です。
それでは、縄のれんをかき分けて店内へ。
内観
いらっしゃい!と元気に迎えてくれた女将さんはとても親しみやすい方。厨房に立つ大将もとても温厚な方で、常連さんとちょっとした会話をはさみつつ、刺身や揚げ物を次々と準備されています。
小上がりとテーブル席を配置した店内は、この時代の酒場としては珍しくカウンター席を置いていません。工業地帯最寄りの駅なので、昔は職場帰りのグループでごった返したのでしょう。
現在は、駅前に建つマンションで暮らす人など、幅広い客層が常連さんのようです。店内にキリンビールグッズが多いのは、ここがキリンビール横浜工場の最寄り駅のひとつだから。
品書き
甘粕屋の料理の特徴は派手な名物料理ではなく、しっかり飲兵衛の心を掴む料理が幅広く揃っていることです。壁にかかる短冊の文字だって美味しそう。
お酒
- 大樽キリンラガービール:小550円・中670円
- 瓶ビール キリンクラッシックラガー大瓶:750円
- ハイボール フォアローゼズ:620円~
- レモンサワー・酎ハイ各種:450円
- 宝酒造松竹梅豪快辛口:390円
- 辛丹波300ml:840円
- にごり酒:470円
料理
- 鯵の刺身:500円
- マグロぶつ切:550円
- タコ刺身:580円
- 鶏かつ:570円
- 牛肉コロッケ:700円
- メンチかつ:580円
- 豚ロースのガリバター焼き:570円
- いわし団子:390円
- ポテトサラダ:400円
- もつ煮:500円
- 鯨ベーコン:730円
- 鳥皮黒コショウ焼:520円
- 桜エビの薩摩揚げ:480円
- 銀だら西京焼き:550円
- さきイカ天ぷら:490円
- 粗挽きポークソーセージ:490円
どの料理にも技がある!お酒が進む酒場料理
キリンクラッシックラガー大瓶(750円)
ビールは先代の頃からキリンビールだそう。さすがは、企業城下町。私も悩むことなくビールでスタートしました。取手うまれのハートランドや、フラグシップの一番搾りではなく、ドンと構えた昭和の味「キリンクラッシックラガー」というのがまた似合っています。
それでは乾杯!
ポテトサラダ(400円)
酒場メニューの基本が揃っています。どっしりと構えた昭和の酒場らしい内容です。それでも、ポテトサラダには粗挽きの黒胡椒が使われているなど、随所に大将のワザが隠れています。
松竹梅 豪快(390円)
刺身を貰う前に、ビールから日本酒の燗酒へ。宝酒造の松竹梅豪快がチロリで登場。こういうのがいいのです。
鯵の刺身(500円)
女将さんがお酒と一緒に鯵刺しを運んできました。鯵刺しは常連さんに人気の定番メニューです。
豚の生姜焼き(570円)
お次は、豚の生姜焼き。酒場らしい濃いめの味付けでお酒が進みます。山盛りのキャベツにマヨネーズを付け、そのまま豚肉も一緒に大きく一口。ほら、美味しい。大衆酒場はこれくらい豪快なほうがいいですね。
無糖紅茶割り(450円)
日本酒からキリン「午後の紅茶」を使った紅茶割りへ。ちなみに「午後の紅茶」は東日本では藤沢で製造されています。甲類焼酎の甘味を紅茶が引き出すので、無糖なのでほんのり甘い。
鶏かつ(570円)
感動したのは、こちら。「鶏かつ」です。ボリュームよし、揚げ具合よし、なによりハインツイエローマスタードを出してくれるのが嬉しい!まさか、昭和初期から続く酒場でピッツバーグのマスタードをかけるとは、驚きました。
ごちそうさま
入りやすくアットホーム。良心的な料理が揃う大衆酒場の教科書のような店です。これからも末永くご盛業であって欲しい!生麦・子安へ行く際は次回も必ず伺おうと思います。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 甘粕屋 |
住所 | 神奈川県横浜市神奈川区子安通3丁目288 |
営業時間 | 17:00~23:00 定休日 土曜・日曜 |
創業 | 1935年 |