創業50年を前に『やきとり大吉』リブランド。赤が白になった。その違いや実力は?

創業50年を前に『やきとり大吉』リブランド。赤が白になった。その違いや実力は?

酒場ファンや業界関係者でなければ『やきとり大吉』がチェーン店だと気づかないかもしれません。今回は、全国の駅からやや離れた場所にある、”あの”『やきとり大吉』をご紹介します。実は、いま「大吉」はコンセプトを刷新した通称「白い大吉」を拡大中です。今回は、昔からの大吉の魅力を紹介しつつ、「白い大吉」の特長を探っていきます。

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筆者も昔は個人店だと思っていた

やきとり大吉 府中店

北は稚内から、南は那覇にまで出店している『やきとり大吉』。山手線の内側にはなく、ターミナル駅でも駅前の人通りが多い一等立地にはありません。なぜか、ほとんどの店舗が繁華街と住宅街の境界のような場所にあります。

大吉で飲んだことがない方でも、赤地に太文字の「大吉」の看板をみれば思い出すのではないでしょうか。

本題の店舗紹介に入る前に大吉の情報を整理します。

大吉は、1977年に創業した焼鳥チェーンです。ブランドの母体は、ダイキチシステム。2022年まではサントリーのグループ会社でしたが、2023年1月4日より鳥貴族HDのグループに入っています。店舗数は500軒以上。 

大吉の出店立地は他の大手居酒屋チェーンとは異なっており、都心やターミナルの駅前には出店せず、郊外の夜間人口の多い地域に店を出しています。影がどこか薄いけれど、確かに見たことがある。そんな存在です。そのため、大吉が全国チェーンだと気づかないお客さんも多いようです。

従来の大吉は「赤い大吉」。個人酒場好きにはたまらない雰囲気

やきとり大吉 府中店 店内

解説が長くなる前に、まずは従来の大吉をご紹介します。やってきた店舗は、サントリー初のビール工場(現在の天然水のビール工場 東京・武蔵野)にほど近い『やきとり大吉 府中店』です。

店内に入って驚くのは、その渋さです。個人系の老舗酒場が好きな方には、このL字カウンターはたまらない雰囲気ではないでしょうか。大吉は、大手居酒屋チェーンと真逆を行くような小箱業態を基本としており、10坪約20席を基本としているそうです。

というのも、大吉はすべての店舗が独立したオーナーの経営で、直営店は存在しません。家族商売として目が届く規模に抑えているため、すべての店舗が小箱なのだそう。一人のオーナーで複数の店舗を持つパターンでも、オーナーが店に立つことがルールとされているなど、家族経営の雰囲気を守る約束事があります。

フランチャイズの居酒屋には、セントラルキッチン(半製品まで仕上げる専用の食品工場)で一括して料理をつくりお店に届けているパターンがあります。大吉が個人店のように見える理由のひとつに、セントラルキッチンがないことも大きいのではないでしょうか。

看板料理の焼鳥を含む食材の仕入れから串打ちなどの下ごしらえまで、すべて店舗でおこなっています。お肉屋さんを選ぶのも店主の仕事です。

品書き

メインメニューは全国の大吉共通のラインナップ。ここに加えて、酒類・料理を含めて15品が一定のルールの中でお店のオリジナルとして追加可能とのこと。

どこの店舗でも決まった値段、決まったメニューが有る安心感と、店ごとに異なる店主の人柄や限定メニュー。チェーンと個人店のちょうど中間のような存在です。

串は1本132円から。リーズナブルな価格設定で、一人あたりの予算はだいたい2,700円前後といったところとのこと。

サントリーグループから離れたいまも、お酒はサントリーが中心。ビールはザ・プレミアム・モルツ。ほんのり甘いタコハイも店の看板ドリンクで、現在、サントリーが販売するRTDやRTS(缶や原液)のタコハイ発売前から「タコハイ」の名称で続けてきたそうです。

ザ・プレミアム・モルツ(539円)

府中店では、ビール工場の関係者などサントリー系列に勤める方も多く飲みに来るそうです。”神泡”のプレミアムモルツが飲めました。

アレンジ系の彩串も何十年と続く人気

大吉では、既存の3店舗を一ヶ月ずつ合計3ヶ月で修行をしてから開業という流れになるそうです。研修が終わると修行元の3店舗からタレを分けてもらい、いよいよ出店。府中店の店主さんは爽やかに接客しつつも、神経は串に向いて真剣そのものです。

焼き台は、ダイキチシステムとメーカーが共同開発したオリジナルの装置だそう。あえて炭火を使わず、安定した調理や提供価格の安さのほうに力を入れているとのこと。

焼鳥を焼いてもらいました。定番の串に加え、アレンジ系も充実しています。ねぎバンバン、チキンチーズ、しそ巻は30年ほど前から続くロングセラーだそう。さらりとしつつも旨味が強いタレをつけて焼き上げた「はさみ」は、まさしく酒場の味。ビールが進みます。

焼おにチーズ

あまり酒場で”〆”を食べない筆者ですが、店の人気メニューと聞けば挑戦してみたくなります。「焼おにチーズ」は、店主も本部の人もイチオシの品。焼きおにぎりにチーズを載せるまではまだまだ一般的。味のポイントはこの赤いトロトロのタレです。

焼鳥の甘タレではなく、チキンチーズにも使っている大吉オリジナルの特製ダレ。わずかにピリ辛で旨味は濃厚。和風とも洋風ともいえる独特な味で、熱心なファンは自宅でも再現しようと挑戦するのだとか。

白い大吉はどこが違う?

やきとり大吉 国分寺店

続いてやってきたのは、『やきとり大吉 国分寺店』。東日本では初となる”白い大吉”です。

府中店の赤い大吉は、老舗の酒場好きにはたまらない雰囲気でしたが、こちらは白木を基調としたナチュラルでモダンな雰囲気です。黒く染めた木に赤地に太文字の大吉の看板がつく従来の店とは大きく異なります。

店内も明るく、ややハイクラスの焼鳥店が採用しそうな内装です。

それでも、大吉の基本は変わらず。カウンターとテーブルあわせて17席のコンパクトなつくりです。

品書き

どこか懐かしいようで今風の紙の品書き。基本的な品揃えは従来の大吉と同様です。ここ数年増えている、現代風アレンジの酒場が取り入れるようなSNS映えするようなお酒はなく、ノンベエにしっかり寄り添っている感じが嬉しいです。

料理に違いが結構あります。味自慢ささみカツ、こだわりレバーパテ、しっとりむね肉の大吉サラダ、串では季節ごとに変わるオススメ串があります。〆メニューには鶏白湯らーめん(600円)がありますが、これも白い大吉で新たに加わった料理です。

店主さんは、2023年4月に白い大吉となった国分寺店。店主さんは、やきとり大吉 小川西町店で10年以上店主をされていた方です。新しい店舗になっても、小川西町店時代の熱心なファンも来てくれると話します。加えて、家族連れやミレニアル世代の来店も増えたそうです。

ここでも活躍中、大吉の電気グリラー。むらなく焼けて、煙も出にくいそうです。串は多い日で300本近く仕込むそうで、慣れた店主さんでも営業時間と同じくらい仕込みに時間をかけているとのこと。

ずらりと並べてもらった国分寺店の人気料理。お通しは5年前に廃止されています。その分一品多く食べられそうですね。

タルタルソースで食べるささみカツは、びっくりするほどふっくらと仕上がっています。ソースの準備はありますが、タルタルで食べてほしいという考えに大賛成!

季節の変わり串はだいぶチャレンジング。取材時(11月)はデュカとチーズです。デュカとはコリアンダーなどのスパイスとナッツを混ぜた中東の調味料。これはおもしろい。

テーブル席がしっかり完備されているので家族連れでの利用がしやすい雰囲気です。そんなファミリーの多くが注文するというしっとりむね肉の大吉サラダ。サントリーのワイン「タヴェルネッロ」(イタリアで小さな居酒屋の意味)をあわせて、ちょっぴりおしゃれに。

でも、やっぱり私はタコハイが一番落ち着きます。関西の酒場ではおなじみのほんのり甘いチューハイです。

ベースはずらさずど真ん中

従来の大吉(赤い大吉)は、正統派の酒場の佇まい。お客さんは40歳以上が中心で、会社帰りのお父さんたちが集う、そんな酒場でした。ただ、コテコテの酒場感は家族連れや20代には入りにくく、「大吉」50周年を前に、新たな客層にも大吉を知ってもらおうという若返りプランが計画されました。それが「白い大吉」とのこと。明るく外から店の様子がわかる外観になりました。

タイミング的にはネオ居酒屋ブームに重なっていますが、料理は基本を大事に、昔からやっていることを守り続けています。華やかさよりも味で勝負。大吉に熱狂的なファンが多い理由のひとつだと思います。

立地や店主の希望に応じて白い大吉に転換していくそうですが、そこは急がずじっくりと取り組んでいくとのことでした。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/ダイキチシステム株式会社)