日本最大の繁華街・歓楽街である新宿にも、昭和から続く老舗の町中華(大衆中華)があります。今回は新宿で長年愛されてきた地元密着の大衆的な中華料理店を5軒ご紹介!お酒が飲めて酒場のように利用できる店にフォーカスしましたので、中華飲みを楽しみたい方は必見です。
1,『岐阜屋』
終戦後すぐのこと。遠方から列車で運んできた物資を売る人、日々を生きるために食堂や酒場を営む人がそこに集まり、ヤミ市が広がった新宿駅前。やがてヤミ市は再開発され、ビルへと生まれ変わっていきましたが、開発に取り残された一部が「思い出横丁」として残っています。
岐阜屋はそんな思い出横丁で1947年から続く中華店。岐阜出身の創業者が終戦後、満州から引き揚げてきて店を開きました。
思い出横丁で最古参(経営は変わったものの)の一軒で、いまもヤミ市の名残を色濃く残した雰囲気が特徴です。中華店といえばテーブル席もあるイメージですが、ここは巨大なロの字カウンターと僅かな離れカウンターのみ。ロの字の内側が厨房で、それを囲むようにお客さんが飲んでいます。
名物は仕入れにこだわっている肉厚のキクラゲをたっぷり使った木耳玉子炒め。
場所が場所だけに、昼間から飲んでいるお客さんのほうが多く、中華料理店というよりは酒場と認識している人のほうが多そうです。
木耳玉子炒めをはじめ、多くの料理は鶏ガラと豚ガラを使った中華スープを味のベースにしており、これがお酒を進ませる濃厚な旨味をつくりだしています。
炒飯、餃子、五目カタヤキソバなど、中華の定番をつまみにキリンビールで乾杯しましょう。
年中無休で元旦から営業。朝9時から深夜1時までやっているので、使い勝手抜群です。
住所 | 東京都新宿区西新宿1丁目2−14 |
営業時間 | 9:00~翌1:00(木金土は2時まで)年末年始含む年中無休 |
創業 | 1947年 |
2,『中華料理 五十番』
60年以上続く歌舞伎町の老舗町中華『五十番』は、このロケーションでは考えられないほど牧歌的でレトロで平和なお店です。周囲はギラギラとしたネオンでいっぱいで、新宿で何十回と飲んでいる筆者も少し緊張感をもって歩く場所にあります。
典型的な街の中華屋さんで、ベテランのご夫婦が切り盛りされています。お客さんは通い慣れた雰囲気の常連さんばかり。夜はどのテーブルにも当然のように瓶ビール(サッポロ黒ラベル)が置かれています。
おすすめはパラパラに仕上がった炒飯です。味は安定の濃い目。ビールが進むことは言うまでもありません。
店名が書かれた懐かしい炒飯皿も、すべてが町中華好きの心をくすぐります。
住所 | 東京都新宿区歌舞伎町1-15-1 |
営業時間 | 営業時間 11:30~21:00 日曜営業 定休日 水曜日 |
開業年時期 | 1962年頃 |
3,『中華菜房 達磨』
新宿ほどにぎやかな場所ですと、大箱の店ですら街の風景の一部に染まってしまい、なかなか気づかれないことすらあります。新宿のマルイ新宿本館裏で約40年続く『達磨』も、70席ある大箱ながら、岐阜屋ほど話題になることがないのは不思議です。
大将が司令塔で、ベテランスタッフの皆さんがテキパキと調理と給仕をこなすパワフルなお店です。お昼から通しで営業しており、アイドルタイム(昼食と夕食時間の間)も飲み客で席の半分が埋まるほど賑わっています。
特徴は今回ご紹介する店の中でも、特に品数が多いこと。腸詰(620円)や塩ゆで豚耳の特性酢味噌和え(620円)、牛肉とアキレス腱の煮込み(1,300円)など、なかなか個性的。
定番の餃子はニンニクがしっかり効いた豚肉多めのもの。ビールと相性抜群。
一度衣をつけて軽く揚げた鶏レバーをズッキーニ、焦がしニンニクと一緒に炒めた「鶏レバーとズッキーニのニンニク風味炒め」(980円)。とろみがかったタレとプリプリの鶏レバーが好相性です。
どの料理も調味料の使い方が優しく、素材の味で勝負している感じが特筆できるポイントといえます。漬け込んで濃い味になったチャーシューから旨味が広がった炒飯も、とがった個性こそないもののホッとできる美味しさです。
住所 | 東京都新宿区新宿3-31-5 新宿ペガサス館 1F |
営業時間 | 営業時間 11:00~23:00 日曜営業 定休日 無休 |
開業時期 | 1980年代 |
4,『餃子の店 大陸』
新宿大ガードすぐ、靖国通り沿いのビルに入る『大陸』は、現店舗こそ比較的近代的ですが、創業は1953年と、70年の歴史を持つ老舗の中華料理店です。開業時は屋台で営業していました。
歌舞伎町にあるビルの空中階(階上店舗)というと心配になるかもしれませんが、ベテラン女将が切り盛りする『大陸』は、アットホームで良心価格の信頼できるお店なのでご安心を。筆者も子供の頃から家族と通っています。
テーブルがメインですが厨房に向いたカウンター席もあり、一人飲みの利用も歓迎してくれます。
名物は餃子。ニンニク不使用で、生姜で味付けしたすっきりタイプ。ぺろりと食べられます。この立地で一皿539円と十分リーズナブルなのですが、毎週月曜日は餃子半額デーで250円ほどになります。
麻辣醤を効かせた麻婆豆腐(968円)も店の名物です。ドロッとした旨辛の逸品で、紹興酒と合わせれば、無意識のうちに大きくうなずいてしまいます。
お酒好きの方にオススメは、北京ダックのように楽しむ、北京風春巻き(770円)。チャーシューを特性のソースを塗ったチャイナクレープで巻いていただきます。
“ちびりちびり”とつまめるので、飲みながらゆっくり食べたい人にぴったりです。
住所 | 東京都新宿区歌舞伎町1-6-3 石塚ビル 4F |
営業時間 | 営業時間 [月~金] 16:00~23:00 [土・日・祝] 15:00~23:00 日曜営業 定休日 無休 |
開業時期 | 1953年 |
5,『石の家』
かつては貨物駅だった新南口は、バブルの頃まで新宿の裏口的なポジションでした。木造モルタルの小さな飲食店がびっしり立ち並び昭和の風情たっぷりだった場所ですが、再開発が進みすっかり近代的なターミナル駅の表情になりました。
そうした時の流れの中で飲食店の顔ぶれは大きく変わりましたが、数軒ほど昔と変わらない場所で営業を続けています。
1954年(昭和29年)創業の『石の家』もそうした変わらぬ店の一つです。かつて二階建ての小さな店だった『石の家』ですが、1984年にビルへ建て替え、その半地下で変わらず営業しています。
名物は創業時から続く焼きそば(醤油味)で、うどんのような太麺を使っているのが特徴。ほかにも棒々鶏、木須肉、海老焼売などがオススメ。もちろん餃子もしっかりと美味しいです。
お昼から中休みなく営業していますので、新宿駅前で飲みたくなったときには、ぜひ候補に入れてほしいお店です。
二代目が中心となって営業中。初めての方は、「家庭的な雰囲気がこんな駅前で味わえるなんて!」と、きっとびっくりすると思います。
住所 | 東京都新宿区新宿3-35-4 ユーコービル中地下 |
営業時間 | 営業時間 [月-土]11:30~23:50(L.O23:00) [日祝]11:30~22:50(L.O22:00) 日曜営業 |
開業時期 | 1954年 |
駅から少し離れますが、下記のお店もぜひ候補に!
気になるお店は見つかりましたでしょうか。お昼から営業する店も多いので、早い時間から餃子で一杯!ぜひ楽しんでいただければと思います。
また、駅からやや離れるものの下記のお店も非常に魅力的ですので、少し歩けるという方はこちらも検討してみてください。
- 山珍居(東京都新宿区西新宿4丁目4−16 山珍居ビル)
- 宝来飯店(東京都新宿区新宿4-3-12 パシフィックワコー 1F)
- 昇龍(東京都新宿区新宿7丁目12−25 ステージファースト東新宿)
- 天宮(東京都新宿区新宿5丁目1−21)
- 竹葉軒(東京都新宿区北新宿2丁目3−8 竹内ビル)
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)