2022年7月1日、有楽町にある東京交通会館の一画が「大阪駅前ビル」を彷彿とさせる雰囲気になりました。なんと『徳田酒店』が進出してきたのです。明治23年創業の徳田商店を母体とした「角打ち」の延長にある店ですが、店内調理のおつまみも充実しています。
目次
徳田酒店とは
(大阪駅前ビル内の徳田酒店)
徳田酒店は大阪では有名な立ち飲みグループです。その原点は、1890年(明治23年)に「徳田商店」の名で酒の量り売りを始めた酒販店にあります。昭和初期の頃より酒屋の店頭でお酒が飲める「角打ち」を始めるも、1992年(平成4年)に角打ちは一旦閉店。再び角打ち(業態としては居酒屋)を再開したのは2010年です。
2010年、大阪の京橋に誕生した新・『徳田酒店』は、酒販店系列ならではのお酒の品揃えと良心的な価格設定、特長的な料理の数々で、近隣のお客さんに少しずつ評判になります。それから梅田、片町などへ店を増やしていき、大阪に12店舗を構えるまでに成長しました。
(大阪の徳田酒店の様子)
角打ちというと乾き物や缶詰をつまみにするイメージがありますが、徳田酒店は酒販店系列の「飲食店」という扱いで、巷の酒場と同様、料理が充実しています。また、店数は増えましたが、店の接客方法や調理は店それぞれの店長、料理人にある程度任されているようで、品書きこそ同じでもそれぞれ個性が異なります。
それでも、「酒屋の系列なのでお酒が主役」と言わんばかりに、低価格で品数豊富なお酒は、各店で共通する特長です。
そんな徳田酒店、まさかの東京進出
外観
大阪では何度も立ち寄ってきた徳田酒店が、2022年7月1日、なんと東京に進出しました。場所は千代田区有楽町の東京交通会館です。
徳田酒店といえば、大阪駅前第一~第四ビルに5店舗も構えているため、大阪のレトロな地下飲食店街のイメージが強いです。そんな徳田酒店が1965年竣工の歴史ある東京交通会館ビル内にオープンしたことで、ここだけは「大阪駅前ビル」と瓜二つといえる雰囲気になりました。
大きく屋号が書かれた藍色の暖簾も、大阪の店舗とかわりません。
内観
店は幅20メートルはある細長いつくりで、入って正面にカウンター席、右方向にはテーブルがずらりと並びます。カウンターの正面には一升瓶が詰まった冷蔵ケースが鎮座し、お酒の品数の多さアピールしています。
「大阪では会社帰りの皆さんがリラックスできる場所として使ってくれています。有楽町店でも、仕事帰りにホッとできる場所を提供したいと思いました。広めの荷物棚を用意するなど工夫しています」、と話すのは徳田グループの代表、徳田さん。
ビルの地階にあることを感じさせない、古材を活用したぬくもりのある内装です。カウンターやテーブルには、令和の新店では珍しい分厚い一枚板が使用されていて驚かされました。
品書き
お酒
樽生ビールはアサヒスーパードライ:430円、瓶ビール(大瓶)はアサヒスーパードライ、サッポロラガー、キリンクラシックラガー、サントリー ザ・モルツ:各540円。
チューハイ(プーン、レモン、ライム、カルピス)は樽詰で、390円、490円、590円の3サイズが用意されています。ハイボールはブラックニッカ、角、ジャックダニエルなど:390円~。
日本酒
日本酒は正1合430円からで種類も豊富です。定番は菊正宗 生酛:430円、月桂冠 恒の月:430円、白鹿超辛:430円。さらに差し込みで、金陵超辛口:430円、呉春:540円、酔鯨特別本醸造:540円、龍力:650円など。
本日のおばんざい
さば煮と豆腐、小松菜とエノキのおかかあえ、空芯菜と豚炒め、南瓜とししとう煮:各320円。お酒も日替わりがあります。
料理
刺身は徳田盛り(生まぐろ、しまあじ、エビ、ホタテ、たい、しめさば、生しらす):1,990円、おまかせ3種盛り:650円など。
牛すじ煮込み:430円、鶏レバー:650円、いちぼレアステーキ:980円、京橋玉子焼:430円、ミックスホルモン:460円、アジフライタルタル:390円、紅生姜と桜えびのかき揚げ:430円、チーズの西京焼:480円、バッテラ:540円、ヘルメスソースの焼きそば:480円など。
新幹線に乗らずに大阪出張気分!?値段も品揃えも大阪とほとんど一緒
樽生アサヒスーパードライ(430円)
どーんと500mlジョッキで提供される、一昔前の景気のいい生中をもらってテンションアップ。樽生のアサヒスーパードライで乾杯!
泡の比率やきめ細かさ、ガス圧、温度。どれも完璧です。
ビール各種(大瓶540円)
居酒屋のビールは一般的にメーカー1社の専売ということが多いのですが、徳田酒店はアサヒ、キリン、サッポロ、サントリーと、瓶ビールで大手4社を揃えています。ザ・プレミアム・モルツではなく、モルツ。一番搾りではなく、キリンクラシックラガー。黒ラベルではなく、赤星(サッポロラガー)。歴史ある徳田酒店らしい渋いチョイスです。
京橋玉子焼(430円)
それでは、料理を見ていきましょう。「京橋玉子焼」の“京橋”は、有楽町に隣接する「京橋」ではなく、大阪の京橋から。料理は京橋にある本店とあまり変わらず、京橋玉子焼は、本店の名物料理のひとつです。
濃厚な出汁の効いた玉子焼きで、ドレッシングと和えた千切りキャベツや人参を包み込んだ、徳田酒店のオリジナルメニュー。外食が多く野菜不足になりがちなお客さんを思ってつくった料理なのだだそう。
徳田盛り(1,990円)
(エビの下に昆布に巻かれたしめ鯖が隠れています)
京橋本店開業時に考案した目玉料理だったという、店名を冠した『徳田盛り』。合計7種類もの刺身ぶつ切りが盛られています。3~4人でシェアするボリュームです。
さば煮と豆腐(320円)
日替わりのおすすめメニューは、煮付けが大阪の各店でもみられ、美味しかった覚えがあります。有楽町でも関西風の煮付けが食べられるのは実に嬉しいです。
牛すじ煮込み(430円)
大阪といえば、牛すじも外せませんね!塩味で標準的な大阪の味です。
ポテトサラダ(430円)
マッシュ状のねっとりとしたポテトサラダ。きゅうり、たまねぎ、ハム、玉子がはいった素朴な味です。
ガリトマト(390円)
箸休めに、さわやかなガリトマト。
いかの肝和え(430円)
ビールにお得感がありますが、日本酒も正一合400円台からと良心的です。注文するおつまみも自然と日本酒向きなものになっていきます。
呉春(540円)
大阪発祥らしさを感じるものとして、お酒の銘柄があります。香川県仲多度郡琴平町にある西野金陵がつくる金陵や、大阪府池田市の地酒・呉春など、あまり東京で顔を並べない銘柄が用意されているのです。
品書きに正一合と記載の通り、1合入る蛇の目のきき猪口に表面張力で盛り上がるほどに注いでくれます。きゅっと一口、あぁ、いい味です。
日本酒はお燗を頼めば、チロリをつかって湯煎で燗をつけてくれます。
鯛の骨酒(480円)
こちらも、東京の低価格酒場ではあまり見かけることは少ない、鯛の骨酒。こんなところにも地域性が感じられて楽しいです。
ベースは、隠すことなく高清水。しっかりとびきり燗まで熱くしてから、炙った鯛の骨を落としているようでクサミは皆無。ただただ旨味が効いた、ハイブリッドな酔えるおつまみといったところです。
今後、東京で店舗展開を予定
徳田さんの話しでは、東京一号である有楽町店を足がかりに、都内に数軒、店舗を増やしていきたいとのこと。東京発の低価格(いわゆるセンベロ)酒場の世界に、商売熱心な大阪の酒場が参入しました。今後も都心の酒場から目が離せません。
お昼から通しでやっていますので、空いていそうな時間を狙って、ふらりと立ち寄られてみてはいかがでしょう。プチ大阪旅行気分に浸れるかも。
ごちそうさま。
関連記事
大阪「徳田酒店」 第一ビル地下の憩いの空間で乾杯、ホルモン焼きで(2015年)
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 徳田酒店 有楽町店 |
住所 | 東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館B1F |
営業時間 | 11:00~23:00(基本無休・12/31~1/3及び交通会館の休館日休み) |
開業年 | 2022年7月1日(母体は1890年創業) |