タイの首都、バンコク。およそ800万人が暮らす大都市です。土地の料理は魚介類が多いですが、バンコクはチャオプラヤー川沿いにあり、海に面した港町ではありません。そんなバンコクの巨大な魚介類市場を支えているのが、タイランド湾に面した漁港町です。
今回は、バンコクから港町マハチャイまでローカル列車の旅を楽しみ、タイ最大の伝統的な海鮮市場「マハチャイ市場」で、漁港酒を楽しみたいと思います。漁港で飲む楽しさは、国内外を問わず格別です。
目的のマハチャイは、バンコクから南西に30キロメートル。正式な名称は「サムットサーコーン
Samut Sakhon」ですが、タイの人はマハチャイと呼んでいます。
バンコクのウォンウェンヤイ駅からタイ国鉄メークロン線で約1時間の汽車旅。運賃はたったの10バーツ、日本円で約36円です。
メークロン線は、タイ国鉄のターミナル・バンコク(クルンテープ)駅からではなく、この1本だけ独立して走っています。始発駅となるウォンウェンヤイ駅は、プラットホームがひとつだけ。首都の起点駅とは思えないほど質素で、商店街に飲み込まれているような雰囲気です。ホームにも露天が多数。
クン・チュッペン・トート(エビフライ)をつまみにチャーンビールを飲めばきっと最高なのですが、タイは公共施設や寺院などでの飲酒は法律で禁止されています。
列車は1時間に1本程度。発車時刻になるころにやっとやってきました。すぐに折り返すわけでもなく、のんびりタイ時間。こういうのもいいですよね。
ホームがない反対側のドアまで開けて、さらにドアが開いたまま発車。しばらくして一旦停車しドアが閉まりました。
エアコンはなく窓は全開です。これはビールを美味しく飲むための修行…。湿地帯の中を走るからか、とにかくよく揺れるメークロン線。さらに座席がプラスチック製。ですが、異国旅の情緒たっぷりで1時間の旅はあっという間でした。
終点のマハチャイ駅に到着。
走ってきた線路のほうをみると、本当にここをさっき乗った列車が通過したのか、目をこすりたくなるような光景が広がっていました。駅構内も線路も、市場と一体化しています。
メークロン線はこの先にも伸びているそうですが、間に川があるので線路はここで一旦途切れています。車庫なのか市場なのかわからない暗闇にレールが吸い込まれています。
駅舎を抜ければ、そこはもう巨大な市場の中。マハチャイはバンコクへ運ばれる魚介類の集積港にもなっていて、時間を問わず、次々と魚やエビが運び込まれます。また、市場の周辺には水産加工工場が林立しています。
エビ・カニ好きにはたまない光景。
1尾190バーツ(約690円)のこの巨大魚はなんでしょう。巨大サワラでしょうか。
そんな市場を抜けると、連絡船のターミナル、マハチャイ埠頭にでます。対岸に渡るフェリーの発着所で、漁港食堂「タールア レストラン」を併設しています。さてさて、修行はここまで。あとは美味しい料理と冷えたビールを楽しみたいです。
料理は200バーツ(約650円)前後。数人でシェアしてちょうどいいくらいのボリュームのようです。半分サイズなど、ウエイターさんに相談しながら注文も可能です。
エビ、カニ、さっきの巨大サワラや青鯛のような魚、鯵に似た鯖・プラートゥーなどがメニューに並びます。
あれだけ市場でエビをみたのですから、ここはやっぱり定番のエビの塩焼き(メニューによると炭火焼き・320バーツ)で。かなり大きい車海老でしょうか。
あわせるビールはタイを代表する銘柄のひとつ「ビアシン」こと、シンハー。ビールの値段は日本感覚でみれば大変にリーズナブルなので、いつもより一本多めに頼んでしまいそうです。※お酒は適量で。
氷いりで飲む熱帯スタイルで乾杯!
ナンプラーベースでピリ辛唐辛子が効いたタレをつけていただきます。汽車で感じ、市場で感じ、食で楽しむ異国情緒。ビールがおいしい!
ぶつ切りにしたプラートゥーの素揚げをパクチーなどの青物といっしょにして、焦がし油のようなソースをかけたもの。さらにエビと同様にナンプラーの風味があるソースにつけていただきます。
ぷりぷりながらあっさりしていて、ソースをつけて食べると丁度いいバランスになります。いかにも熱帯地方の魚料理といった味です。
カオパットのスモールサイズ。マナオ(タイのライム)を搾り、甘辛いナムチムガイソースをかけていただきます。
非常に軽い味のさわやか系ビール、LEO。
風が抜ける開け広げた空間で、のんびり汐の音を聞きながら、タイ料理と地元のビールを傾けるひととき。帰りの列車まで、まだ時間がありますし、もう少しのんびりします。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
タールア レストラン
+66 34 411 084
859 ถนน เศรษฐกิจ ตำบล มหาชัย Mueang Samut Sakhon District, Samut Sakhon 74000 タイ
10:00~21:30
予算500バーツ