根室「炉ばた俺ん家」 最東端の街で最高の海の幸。老舗カウンターで酔う。

根室「炉ばた俺ん家」 最東端の街で最高の海の幸。老舗カウンターで酔う。

2019年7月2日

日本の最東端(離島を除く)に位置する根室。北海道の大地から突き出した根室半島の突端にある人口約2万5千人の街です。古くから漁業で栄え、現在でも北海道内における水揚げ高で上位にあります。

そんな魚の街にある老舗飲み屋は、きっと美味しい肴で溢れているはず。鮭、鱈、秋刀魚、牡蠣、カレイ…、次々思いつく根室の幸を求めて、1965年(昭和40年)頃創業の老舗「炉ばた俺ん家」を訪ねます。

根室へは、空路ならばANAの直行便が東京羽田から根室の空の玄関・中標津空港を結んでいます。陸路では、JR根室本線が日本最東端の終着駅である根室駅まで伸びています。といっても札幌からの直通列車はなく、釧路から1両編成のかわいいローカル列車に乗って2時間30分の旅となります。

美しい湿原や海岸線、そして原野の中をひた走る車窓はダイナミックです。まさに地球を旅しているという気分。

はるばる来ました、根室駅。列車は1日6往復。ちなみにJR駅の最西端は佐世保だそう。

根室の繁華街は駅から徒歩で10分ほどの距離。路線バスが列車に接続しているので便利です。さらに路線バスに乗り続けると、一般の人が立ち入れる日本の最東端、納沙布岬です。

晴天の今日は肉眼で歯舞群島を見ることができました。

さて、そんな根室に夜の帳が下りてきました。根室湾に向けてなだらかに傾斜してた場所に街が広がっており、飲食店街はそんな坂の下。飲食店の数は多く、立派な歓楽街です。道に人通りがなくともお店は案外賑わっているのは、この街もいっしょ。

さて、おまたせしました。「炉ばた俺ん家」と海(漁港)は50mほどしか離れていません。ほのかな磯の香りを感じつつ、暖簾の内側へ。

中央に囲炉裏があり、それを囲むように重厚感ある巨大板のL字カウンターが配されています。小上がりでは地元のお父さんたちがすでに宴会を始めている様子。

「今日もいい一日だった」、そう感じる瞬間がまさにいま。老舗のカウンターで背筋を伸ばし、さぁ乾杯!

瓶ビール(中びん500円)、生ビール(中500円・大950円)ともにサッポロ。小瓶でヱビスプレミアムブラック(450円)。日本酒は根室の酒蔵・碓氷勝三郎商店 北の勝酒造場の「北の勝」のみ。

サワー類(350円)に、北海道生まれのしそ焼酎「鍛高譚」やサッポロが手がける和ら麦なども置いてあります。

根室は太平洋とオホーツク海、2つの海に面した街。ましてここは漁港から100mほどの場所ということで海産物が豊富です。ホヤ、オヒョウにたち(鱈白子)などが並ぶ品書き。

炉端で焼くひものは自家製。めんめ(キンキ)やこまい、ししゃもなど。売り切れや季節的に品切れもありますので、ここはベテランのお姉さんや二代目に相談するのが良さそうです。

郷土料理ばかりでなく、地元の常連さん向けに定番酒場料理も並んでいます。

お通しはありませんので、すぐに出るメニューから白菜昆布(250円)を。根室は日本有数の昆布の産地。昆布野菜は定番の酒の肴と聞きます。

続いて牡蠣のみそ焼き(800円)。厚岸産の大ぶり牡蠣がごろごろと贅沢に盛られています。

甘辛の味噌が次第に広がり、牡蠣からあふれる汁と混ざり、ふんわりと薫りたってきました。ぷりっとした身は一口では食べられないほど。頬張れば口いっぱいに旨味が広がります。

土地の味には土地の酒。北の勝の搾りたてを1杯。やや濁りがあり、濃い口の米の旨味がいつまでも余韻で続きます。コクのある牡蠣みそ焼きとの相性は言うまでもありません。

炉端で焼いてもらう魚は「宗八カレイ」。かなり立派に育っていますが、時間をかけじんわりと火を通していきます。秋刀魚の季節になれば、ここに串刺しが並ぶのでしょうね。

その合間にお酒を。北の勝の定番酒。お燗酒をちびちび飲みつつ、静かにゆっくり流れる酒場のときに浸ります。

きゅっと引き締まった身に、照りがでるほど染み出してきた脂。少しの苦味と濃縮された独特な旨味がたまらなく美味しいです。

夏季は花咲ガニなども加わり、より一層華やかな海産物でもてなしてくれるはず。その土地の酒と肴を楽しむ、まさに旅の醍醐味がここにありました。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

郷土料理 炉ばた 俺ん家
0153-23-3317
北海道根室市梅ヶ枝町3-6
17:00~23:00(日定休)
予算3,500円