京王線沿線には隠れた名店が多いとつくづく感じています。特急が停車するような主要駅もよいですが、各駅停車しか止まらない小さな駅の周辺には、昔ながらの商店街が広がっていることも多く、ぶらり飲み歩くのがとっても楽しいです。
徳富蘆花の住居である蘆花恒春園が駅名の由来となった芦花公園駅。ここも次々通過していく優等列車の合間に各駅停車がやってきて、一瞬のローカルな雰囲気に包まれる素敵な町です。この街で長く続く「ちょうちん」をご紹介したいと思います。
駅を降りるとすぐに踏切があり、駅前広場はなくそのまま商店街が伸びる、まさに”私鉄沿線”な世界観があります。
その商店街を少し歩くと見えてくる白提灯が、今日目指す「ちょうちん」です。芦花公園の飲み屋さんの中で特に歴史のある一軒です。
入ってすぐのテーブル席と、その奥にご主人が立つ板場に向いたカウンター席が8席。座敷もあります。
富山湾の漁師町である氷見から直送の天然魚が店の看板。ホワイトボードには老舗ならではのベテランを感じる料理が並びます。丁寧な仕事の鮮魚料理やふぐも出していることから、イメージとしては大衆割烹という括りになるのではないでしょうか。
とらふぐは熊本県産。ふぐの白子焼き(2個800円)まで用意されています。普段遣いで来ている家族連れもとらふぐミニ刺身などを気軽に楽しまれていました。
定番料理も個性的で、二重丸のおすすめに納豆とおくらの餃子(460円)というオリジナリティある一品もあり、これが常連さんに人気です。
とにもかくにも、さぁ乾杯。
カウンターで常連さんやご主人にご挨拶して、まずは一杯の生。今日も明日も、毎日はじめのビールが最高です。
たっぷり入る昔ながらの中ジョッキで500円、大ジョッキもあります。瓶ではキリンのクラシックラガーも選べます。珍しい、クリアアサヒもあります。
酎ハイ類は350円からで、人気はメニューにないシークヮーサーサワーです。壁には貼られているシークヮーサーサワーですが、常連さんのオーダーが続きます。
富山湾の幸をいただくならば、日本酒はやはり立山でしょうか。定番酒は北海道の北の誉です。
今日のお通しはブリ納豆とフキ煮。寒ブリでも知られる氷見、お通しからいい感じです。
氷見直送の天然ブリ(3切450円)。やはりこれからつままなければ始まりませんね。きれいな包丁の入り方で、分厚い身はピンとエッジが立っています。
かなり大きく切られたブリ刺し。頬張ると脂の甘味と旨味が広がります。盛り付けもきれいで、カウンターの上は一気に華やかになりました。
となれば、やはり日本酒でしょう。立山(500円)を一杯。コクのあるブリの余韻に立山の米の旨味が合わさり、非常にいい気分。
こちらはたぬきサラダ(450円)。大皿にレタスやかいわれ大根がてんこ盛り。揚げワンタンがこんもり。和風のつゆとわさびで食べるのですが、これがなかなかどうして、お酒のおつまみにしっかりなります。
常連さんに習って、私もシークヮーサーサワー。酸っぱさ強めで甘さ控えめ。甘い酎ハイが苦手という方も、これはぜひ楽してほしいものです。大手メーカー系のエキスではないようで、オリジナリティ感じる酎ハイです。
あわせるおつまみは、納豆とおくらの餃子(460円)。老舗飲み屋の自家製餃子は良いものばかり。甘めのラー油入り特製タレに浸します。
あんが納豆とおくらということで、平たく広がり独特な形状をしています。ボリュームはそこそこありますが、体に良さそうなので気にせずいただきます。
味の表現が難しいのですが、バクダンというネバネバ系を集めたおつまみがありますが、それの味を想像していただいて間違いありません。焼き目や油の風味、甘いタレとも相まって、これが結構いいものです。
その他、カウンターに座るとカレイの唐揚げや旬の野菜のおひたしなどが大皿に盛られていて、それから選ぶのも楽しいです。
お客さんはベテランのご隠居さんが多く、長年通い続けている先輩方がにこにこと飲んでいるのが印象的。カウンター席だとお客さん同士の距離感も近く、一期一会のお話を楽しませていただきました。
近いうちに、また。ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
居酒屋ちょうちん
03-3305-0030
東京都世田谷区南烏山3-1-11
17:00~深夜(日定休)
予算2,500円