東京からJR総武本線の特急しおさいで約2時間の旅。今日は銚子にやってきました。
関東平野の最東端。太平洋に突き出した犬吠埼は、古くから景勝地として人気です。鹿島灘、九十九里浜、そして利根川が合流する場所でもあり、そうした地形から漁業で栄えています。
利根川を経由することで、江戸まで物資が運びやすかったこともあり、長きに渡り江戸の魚食文化を支えてきた銚子。それは今でも変わりません。
銚子で飲むならば、地元の魚を豊富に揃えた大衆割烹「新橋」はいかがでしょう。JR銚子駅前のロータリーを越えた先すぐの場所で、半世紀に渡り暖簾を掲げるお店です。
磯の香りと、そして醤油の香りが微かに感じる銚子駅前。列車を降りたところから、気分は魚料理です。
まぐろ、かつお、ぶり、あじ、たい、ひらめ、きんめ、すずき、いわし。今日の魚が書かれた黒板が誘ってきます。親切な女将さんに迎えられてお店のある二階へ。
昔ながらの飲み屋の雰囲気。小上がりが素敵でしょ。ここはまだ昭和のまま。奥では大将が忙しそうに魚を捌いています。お昼時は駅周辺で働く人々の昼食処として、また漁業関係者の昼飲み場として賑わい、満卓になるほど。
「この一杯のために銚子へ来た」と言っても過言ではありません。美味しい魚を期待して飲む、一杯目の生ビールは格別です。サッポロ黒ラベル(大・650円)で乾杯!
長くサッポロを扱われているそうで、数世代前のクラシックなジョッキが現役です。シンボルマークの北極星が消えています。
刺身の盛り合わせは2,500円から。アジやメヒカリなどはフライではなく、魚のからあげ(500円~)となっています。
刺身盛り合わせは結構ボリュームがあるので、お昼に1人ならば定食をおつまみとするのも良さそうです。
まぐろ煮と卵焼きの小鉢。気の利いたお通しは大歓迎です。
さて、銚子の魚といえばいわしでしょう。黒潮と親潮がぶつかる銚子は年間を通じていわしがとれます。刺身はもちろん、銚子の郷土料理であるつみれ団子やさんが焼きもお酒の肴に最高です。新橋もいわし料理は別枠です。
駅前の定食屋としての役割も兼ねていて、フライ定食や丼もの、ラーメンまで勢揃いです。気取っていないお店で地元の人に混ざって楽しむお昼酒、これがやめられません。
いわし天ぷら(850円)。ふんわりいい香り、サクッと軽く上がった肉厚のいわしと、野菜天がいくつもついてボリュームたっぷり。
地元銚子産の醤油でつくる天つゆは甘さ控えめで、出汁のコクをしっかり感じます。
しっとりした身からいわしの旨味が滴りでてきます。
美味しい魚には、美味しいお酒を。盛田のお酒「ねのひ」の冷酒(300ml 750円)を一本。1合350円の清酒もありますが、ここは腰を据えて飲みたい気分です。
女将さんからのサービスで銚子名物ぬれ煎餅を食べながら、のんびり漁師町でほろ酔いの時間。
店名の「新橋」は、東京に居たご主人が戦時中、銚子に疎開してきたことが由来だと女将さん。そのまま東京には戻らず、ここで食堂を始めて今に至るそうです。
駅前で長く愛されるお店で一献、皆さんもいかがですか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
新橋
0479-22-2136
千葉県銚子市西芝町3-3
11:30〜14:30・17:00〜22:30(日定休)
予算2,000円