甲府「どてやき下條」 創業1937年。甲府中央最古の酒場でどてやき&ぶどう割り

甲府「どてやき下條」 創業1937年。甲府中央最古の酒場でどてやき&ぶどう割り

2018年5月30日

甲府の「どてやき」で知られるどてやき下條は、1937年(昭和12年)の創業。山梨の県庁所在地で飲むならば、必ず立ち寄りたい名酒場です。

現在は三代目とお姉さんたちが暖簾を守ります。初代が大阪出身ということから「どてやき」が看板です。甲府の酒場といえば焼鳥が定番で、街全体ではどてやき文化はありませんが、80余年続く「どてやき下條」の存在が、もはやどてやきを甲府の郷土料理とさせています。

名古屋のどて煮、大阪のどて焼きもよいけれど、甲府のそれもまた独特で、脳裏に残る美味しさがあります。どてやきが食べたい。突然思い立って新宿駅へ。中央線の特急スーパーあずさで80分ほど。行こうと思えば、酒場街に繰り出すのと時間的には大して変わりませんね。

名将・武田信玄が街のシンボル、甲府駅に到着です。信玄ゆかりの史跡やパワースポットへはまた今度。今日はどてやき目当てなので、駅前の武田信玄公銅像に軽くご挨拶だけ。

盆地という地形を甲府ほど視覚で理解できるところも珍しいです。平地にびっしりと家々がたち、遠く斜面には甲府ワインのぶどう畑が広がります。

駅前の歓楽街は、一時期かなり寂しくなっていました。それが、最近は若い人が続々と店を開き、息を吹き返した印象。甲府の飲み歩きは意外と「あり」ですよ。その前に、まずは15時から開いている「どてやき下條」でウォーミングアップ。

建物は道路拡張のためセットバックして新しくなりましたが、昔の店舗の部材が随所にあしらわれ、老舗の重厚感にかわりはありません。

入ると煮込み鍋を囲むコの字カウンターが視界に飛び込み、それだけでうっとり。4人用テーブルのほか、小上がりもあります。営業は15時から20時と早く、「遅いと酔っ払いが来るからね(笑)」とご主人。

甲府の酒場といえば「どてやき下條」と言われるほど知られた存在で、地元新聞で紹介された様々な記事が掲示されています。

生ビールは夏季限定。かつて、生ビールは年中商品ではなく、夏になるころにビール会社が居酒屋にサーバーを貸し出していた名残がいまも続いています。生はサッポロ黒ラベルです。

瓶ビールは常時取扱で、キリンラガーの大びん(700円)が冷えています。お酒は等級表記のままで、二級が450円。チューハイは450円です。ナゾの「ボルス」は、玉子酒。度数が低く、味は甘さのないプリンのよう。体調回復の栄養ドリンクみたいなものですが、そもそも風邪ならば飲みに来ない、ですよね。

お酒を頼むと、そのまま最初の一品がでてきます。どてやき3本(390円)とお通しの小皿。それでは乾杯。

大鍋に垂直方向で浸かりグツグツと煮られている「どてやき」。本場、大阪のそれと比べさらっとしています。味噌ベースで整えられた牛モツは、濃厚な旨味をタプンタプンに蓄え、頬張れは思わず笑顔になる味です。

香りは若干の獣感があるものの、食べてみるとクサミはなく、すいすいと食べきってしまいます。

天井からぶら下がる新聞紙をお手拭き代わりに、串を掴んだ指先を拭ければ一人前です(笑)

どてやき鍋で一緒に煮込まれている琥珀色の「どて玉子」も絶品。そして言うまでもなくビール・日本酒を進ませます。

どてやきを楽しんだら、箸休め感覚で「キャベツ炒め」はいかが。一皿400円ですが、半分で250円も用意されていて、独り飲みには嬉しい選択肢です。あわせるお酒は、1合ほどはいるグラス酒。

これが「ぶどう割り」です。角瓶に移し替えられた割材は二種類あり、赤は梅割り、白は白ワインです。ベースは甲類で、東京のもつ焼き屋にもみられる、度数高の”飲み過ぎ厳禁”系ドリンクです。

ただ、東京の「ぶどう」は、梅割り同様にシロップ(メーカーはエキスと呼ぶところも)ですが、こちらはさすがワインの産地だけあって、ぶどうは本物のワインが使われています。

たっぷりオイルにソースと黒胡椒でしっかり刺激を加えたキャベツ炒めは、ぶどう割りと相性抜群です。

最後はあっさりとモロキュウ(300円)でおしまい。ぶどう割りのおかわりはそこそこで。

平日は地元のお父さんたちで静かに飲む雰囲気があり、土日も営業していることから休みを利用して飲みに来るご夫婦や飲み屋好きのグループの姿も増えています。

コの字カウンターでみんな鍋を囲って楽しいひととき。ご主人の素敵なお人柄がお店の雰囲気をつくっています。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

どてやき
055-232-3044
山梨県甲府市中央4-2-15
15:00~20:00(月火原則定休)
予算2,500円