仙台「おでんこうぞう」 一番町の隠れ家は、大人のいいねがいっぱい

仙台「おでんこうぞう」 一番町の隠れ家は、大人のいいねがいっぱい

2016年12月30日

風が吹く街・仙台。冬に向けて杜の都もその姿を変え、大通りは銀杏の黄色い絨毯がひかれます。あぁ、こんな寒い日はおでん屋でしっぽり飲みたい。

今宵の梯子酒は仙台・一番町。国分町や文化横丁とさほど離れていないのに、街並みはとても静かで、それでもぽつぽつと良さそうな飲み屋が点在しています。目的のお店は「おでん こうぞう」です。

ウェスティンホテルと東北大学の間にあり、地元の記者や大学教授、会社員たちの立ち寄り処になっている店です。初めての訪問だと、例え地図アプリに位置情報を付加していようとも迷うような場所にあり、正真正銘の隠れ家です。

建物と建物の間、やっとみつけた白い暖簾をくぐり、その先の階段を2階へ登りたどり着く。

店は入ってすぐに靴置きがあり、店内へは靴を脱いではいっていきます。掘りごたつになったカウンターへ。目の前にはおでん鍋と大将の河田幸三氏。分厚い一枚板のカウンターに手を軽く載せてまずは一息つきます。ゆらゆらと立ち上るおでんの湯気と、暖かな雰囲気のおもてなしに、寒さで張り詰めていた心が「ほっ」と癒やされるような気がします。

飲み物は、寒くても店は暖か、やっぱりビールが美味しい。冬の乾燥した空気を吸っていた喉には、日本の定番ビールがしっくりくる。明治21年に誕生した麒麟印のビールで乾杯。

ビールは生樽がサントリープレミアムモルツ(550円)、瓶ビールはキリンラガー(RL・550円)。酎ハイ(キンミヤ焼酎ベース)は380円、日本酒は寫楽(写楽)や大七、陣屋といった福島の銘柄が並びます。

日替わりのお通し。あっさりとしていながら、出汁が効いていて癒やされます。

8席のカウンターと、奥の小上がりで4人テーブルが2つの合計16席のほどよいサイズ。大将とスタッフの二人で、静かにも丁度いいタイミングで料理やお酒を用意してくれます。

おでん屋ですが、刺身や一品もなかなかの顔ぶれ。クエ刺し(780円)、なめたがれい(780円)、カワハギ(880円)、帆立刺し(680円)など。石巻・桃浦漁港で水揚げされる海産物が中心で、仙台で飲むことの喜びを感じます。

ぷりっと肉厚、もちもちの帆立は絶品です。ねっとり甘く深味のある旨味が、日本酒を欲します。

きくらげ、しらたき、大根に豆腐。おでんはどれも180円。盛り合わせは6品で780円。

大根、玉子、つみれなどの定番のほかに、はんぺん、ちくわぶ、もつといった種が日替わりで加わります。毎日作り変えるおでん汁は、種の組み合わせで味が変わり、毎日ちょっとずつ違う幸せの味ができるのだそう。

透き通った汁の奥から、非常に繊細な出汁を感じ、満たされていきます。

心地よい食の余韻に、会津娘 純米無濾過 つるし をきゅっと充てていく。東北の酒場はいいものです。

椎茸の肉詰めが美味しいよとアピールしているかのように、おでん鍋の上でぷかぷか浮いていましたので、それをひとつ。肉厚で立派な椎茸です。

瓶ビールをチェイサーに、お酒を飲みながら宮城の素敵な夜が過ぎていきます。華やかな名所もいいけれど、街の味で沁みるひとときも大切ですね。

生搾りの酎ハイレモン。キンミヤベースに強炭酸、生搾りのレモンを入れた氷少なめのこれが、思いの外美味しい。

おでん鍋に浮かぶ大根のように、心の底まで癒やしで満たされた時間を過ごせました。

仕事帰りにしっぽり飲むお父さんたちが羨ましい。地元の人たちが大切にする飲み屋さんには、大人の静かな「いいね」がいっぱいです。

仙台の飲食店で修行を積んだ大将が1年前に始めたおでん飲み屋。きっと、年輪の厚い酒場になっていくものと思います。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビールマーケティング株式会社)

おでん こうぞう
022-263-7719
宮城県仙台市青葉区一番町1-11-14 2階
18:00~26:00(日定休)
予算2,800円