もんじゃで有名な月島に2016年2月にオープンした立ち飲み酒場「つねまつ久蔵商店」。島根で明治時代から続く酒屋「地酒家 つねまつ」の息子が始めた角打ちテイストのお店です。
ここのお店はとにかく酒類・料飲店関係者の常連が多い。というのも、店名にもなっている店長の常松治郎さんは、業界では知らない人が居ないほどの敏腕日本酒営業マンだったからです。黒松白鹿を代表する辰馬本家酒造で18年間営業をしていた常松さんは、白鹿治郎という愛称がつくほどの有名人。常松さんが提案したお店には必ず白鹿が入った(大手酒販店談)、ビールメーカーのトップセールスでも常松さんから学んだ(大手ビールメーカー談)、など、様々な逸話があります。
そんな日本酒販売の白鹿治郎が、実家の名を冠したつねまつ久蔵商店を通じて始めた新たな挑戦は、「日本酒を気軽に楽しく誰にでも」というもの。その道のプロだからこそ、もっと気軽に楽しく飲もうよという提案に巡りついたというのはおもしろい。
実家、島根の酒販店から仕入れる地酒が豊富に揃い、定番から個性豊かな限定品までさらっと揃える品揃えは、まさにマイスターの称号の通り。
壁にずらりと並ぶ冷蔵ケースにはあらゆるタイプの日本酒が並んでいます。
これを立ち飲みで380円から580円と日常使いの価格で楽しめます。
常時70種類近くのお酒が用意されています。産地や吟醸や本醸造といったタイプだけでなく、わかりやすいイメージ文が書いてあるので、リーズナブルな価格と合わせてあれこれ意識しすぎず、インスピレーションで選んで楽しく飲める工夫がされています。
最新のトレンドのきらっとした日本酒だけでなく、普通酒、本醸造、純米など広く、そしてちゃんと深い品揃えは、酒販店や同業者も思わず頷くレベルです。
定番酒は、辰馬本家酒造への感謝の気持ちを忘れずに同社の「福男」です。
土日祝日は15時から営業しているので、早い時間にふらっと立ち寄り好きなお酒をくいっと飲んでいくという粋な角打ち的な飲み方もおすすめ。ビールは一番搾りで380円と、日本酒だけでなく軽く飲んでいきたいお酒も抜かりはない。
常松さんのほろ酔いで愉快なトークが楽しく、お酒選びで悩んだら気軽に相談できる人柄なので、日本酒選びに困ったら気軽に相談してみるのもあり。
私の一杯目は毎度おなじみ、伏見の愛酒・松本酒造の「澤屋まつもと」です。若き杜氏 松本日出彦氏がつくるナチュラルな味とマスカットのような風味、やはり松本酒造は日出盛からこのクラスまでどれも私の好みです。
おつまみも日本酒好きの好みを熟知している顔ぶれ揃い。500円前後が多く、ボリュームはそんなでもなく日本酒を引き立てる気の利いたものばかりです。
毎回食べるのが緑の浅漬(450円)で、ピーマンやかぼちゃ、枝豆など、ちょっと変わった浅漬です。絶妙な塩気と爽快な味が日本酒のパートナーとして最高です。
名物は常松さんの島根の実家の味、「鳥皮煮」(1本190円)は絶品です。深い味の日本酒とあわせて、濃厚でこくのある味を楽しみましょう。とろっとした鶏のうまみは日本酒を引き立てること間違いない。
島根・鳥取の地酒は、東京ではまずお目にかかれないものも多い。それでいて、こうしてしっかりと地元に根付いた一般的なお酒「日置桜」なども用意しているあたり、さすがという印象です。
純米吟醸酒のお燗や、濁り酒の楽しみ方提案など、日本酒畑で長く続けていた常松さんならではの技を知ることができるのも楽しい。楽しく気軽に飲んで欲しいというコンセプトながらも、「おっ、これは」と思わせる小ネタも多い。
ビールはキリン。日本酒のチェイサーにはビールがいいね!もちろん和らぎ水はたくさん用意してくれますので、日本酒とお水は同じくらいの割合で飲んで、今日も快飲、明日もすっきりで。
月島の新名所として、日本酒好きの交流の場所としても、いま注目の立ち飲みです。中央の一枚のおおきなテーブルを囲んで飲むというスタイルで、見ず知らずの人とも日本酒談義に花開く。日本酒をもっと楽しく広めていきたいという常松さんの挑戦は、これからもお店の人気とともに続いていきそうです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ Special Thanks/常松治郎さん ps:お互い飲み過ぎない程度で)
つねまつ久蔵商店
03-6204-9740
東京都中央区月島1-6-12
15:00~24:00(平日は17:00~・無休)
予算1,600円