小樽でお昼から飲むといえば多くの人は「お寿司」と答えるに違いない。でも、ときどき「若鶏半身揚げ」と答える人がでてくる。その人はきっと北海道出身者だろう。
全国的には小樽はお寿司の街として有名で、寿司屋通りなんていう名前の道まであります。私ももちろん小樽に行ったら必ず寿司店をいくつか梯子して飲み歩くのですが、郷土の味といえば別にもう一つあるのです。それが若鶏半身揚げ。
若鶏を半身ごとまるっと揚げる食べ物の発祥のお店と言われる「若鶏時代なると」は1952年の創業です。小樽市街の観光客があまり歩かないエリアにどんと構える大箱のお店です。お昼から通しで営業し、ラーメンや丼ぶり、定食も扱う食堂の雰囲気なのですが、小樽でお昼から飲むといえばここだと答える人は多いです。
休日ともなれば、界隈で人気の半身揚げのほか、普通に海鮮をつまみに飲もうとする道民たちで大賑わいとなるお店なのですが、さすがに平日の午後は静か。それでも、地元の観光業に携わっている人や、建設関係、港湾関係者が気持ちよさそうに昼酒を楽しんでいます。いいなー、のどかな食堂好きにはたまらないゆるい時間が流れています。
昔から変わらない注文の仕組みで、ここは先払い制。入ってすぐのカウンターで帳場担当の女性に注文をしその場で明朗会計。するとオーダーの声が飛んで調理が始まるという仕組み。
ビールは昔からアサヒとサッポロです。創業60余年ということは、まだ日本麦酒(現:サッポロビール)とアサヒビールが分社化される以前の大日本麦酒時代からのお付き合いがあるのではないでしょうか。
樽生はアサヒで瓶はサッポロ。やはりここはサッポロクラシックでいきたいところ。アサヒさん、ごめんね、大阪でいっぱい飲むから、北海道はサッポロで。それでは乾杯!
やっぱりクラシックは美味しいねー。缶入りは東京でも物産展などで流通しますが、瓶は本当に北海道の味。おつまみにでてくる枝豆はサービスです。
メニューはとにかく種類豊富。名物は店名に冠した「若鶏時代」の名の通り半身揚げを中心としたザンギなどの鶏料理ですが、イカフライや春巻き、うなぎの蒲焼にお刺身まであります。
ドリンクメニュー、冷酒とは別に書かれている「北の誉」は日本酒です。小樽でつい最近まで醸造していましたが、オエノングループの製造事業所の整理によって、現在は道内の別の箇所で製造されています。それでも、小樽の人にとっては故郷の酒。
焼酎と書いているのはもちろん甲類のこと。九州の乙類文化と正反対に、北海道は甲類文化です。サッポロソフトに合同酒精焼酎、サッポロトライアングルなど。
お寿司もいろいろ揃うので、寿司の街らしさを一緒に楽しむこともできます。観光客向けで置いているのではなく、地元の人も結構こちらでお寿司を食べています。
300円のオニオンサラダをつまみながら、本日の目玉が揚がるまでゆったり飲む。この時間はジャンパー姿の地元のお父さんがゆったり昼酒している姿や、周辺の家庭の主婦がテイクアウトでザンギを買っていく姿などがあり、ぼーっと眺めていて飽きません。地元に根付く食堂は強い。
おまたせしました、若鶏半身揚げです。持ってきたのは白衣姿が似合うまだ二十歳そこそこの青年。アルバイト?いやいや、気合の入り方をみると修行中という感じかな。
写真だとボリュームが伝わりにくいのですが、これを一人で食べるのはなかなか大変。でも、周りをみると、会話からニセコあたりから遊びに来ているようなカップルも一人1個若鶏にかぶりついている。負けていられません(笑)
クラシックをもう一本もらい、さぁ頬張りましょう。道内産の半身は、一日に何百と売れていくそうですが、それだけ取引があるといいものが仕入れられるようで、サイズだけでなく、締りのある実にいい鶏だと感じます。
手羽をちぎり、むねを食べ、ももは皮から食べていく。ふぅ、満腹になってきた。でも手が止まらなくなる美味しさ。ビールがぐんぐんと進みます。定食で半身揚げ定食なるものがありますが、これらご飯をあわせるとか、お腹に入りきれないのではないかと。あ、でも私ももうビールは中瓶3本目です。
ふぅ、満腹、幸せ。小樽に来たらやはりこれですね!お昼酒の楽しさは全国共通ですが、ご当地に愛される郷土料理があるのは更に良い。
満腹のお腹をさすりながら、腹ごなしに観光地の赤レンガ倉庫群のほうへ向かいましょう。途中に地元の市場があるので、ここを抜けるのも楽しい。美味しそうだけど、もう食べられません(笑)
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
なると 本店
0134-32-3280
北海道小樽市稲穂3-16-13
11:00~21:00(月定休・日は20:00まで)
予算1,900円