北陸新幹線がもうすぐ開業一周年、北陸が改めて見直されてますますの盛り上がりを見せていますが、その影でひっそりと姿を消した東京・北陸連絡列車があります。特急はくたかという名で、現在は新幹線の列車愛称になっていますが、この列車は越後湯沢から第三セクターのほくほく線を経由することで六日町、十日町、直江津を経て日本海側に抜け、北陸線で糸魚川、富山、金沢へと走っていました。そんな「特急はくたか」が廃止され、いまは普通列車しか走らなくなった街を訪れて、今一度その土地の魅力を味わおうと思いやってきました。
六日町はJR上越線とほくほく線が分岐する街で、鉄道交通の要所です。その昔は三国街道と清水街道が分岐する宿場町であり、長きに渡り交通の要所であり続けました。三国街道といえば、関東と越後を結ぶ重要なルートであり、上杉謙信他、参勤交代でここを通った武将・大名は数知れず。そんな歴史のある街で要所であるわけですから、当然「酒」と「肴」もよいものが揃っているわけです。
八海山の裾の、魚沼丘陵で育つ牛や豚、そして何より米と酒は大変魅力があります。人気の八海山や鶴齢に髙千代がここで作られています。
そんな土地の酒と肴を味わうならば「魚沼釜蔵」に行くのがよい、と地元の鉄道マンに教えられ飲みにやってきました。
駅前は決して賑やかとはいえないのですが、飲食店は元気なお店が多い。飲酒人口率が高いのかな、居酒屋は盛り上がっています。駅からお店までアーケードが続いているので冬でも長靴なしで飲みにいけるのが嬉しい。例年10mを超えて積もる豪雪地帯ですから、居酒屋への足も大切です。
店内はずらりご当地のお酒が飾られていて、飲兵衛の心をぐりぐりとくすぐってきます。
乾杯のお酒は新潟も東京も一緒。やっぱりビールでしょう。サッポロの樽生ですが、黒ラベルではなく新潟県内限定のビイル「風味爽快ニシテ」を置いています。これこれ、新潟に来たらやっぱり生樽の風味爽快を飲まなくちゃ。では、乾杯!
コクとキレがある繊細な味。黒ラベルよりも甘みが強く感じます。とても素直な味で食中ビールとして素晴らしい味になっています。
それに合わせるのは、まずは新潟名物の南蛮海老などのお刺身。お店の方の接客はとても丁寧で、どれがどんな食材なのかをしっかり教えてくれます。それではいただきます。
魚沼牛のステーキや土地の鶏をつかった焼き鳥など、里とやまの料理が多い。今回はコースで頼みましたが、山菜やきのこの料理もあるので、八海山の裾のならではの食材をぜひ試してみたい。
日本酒は鶴齢をひたすらに。土地の人は鶴齢を愛している方が多く、このとき同席された地元の皆さんはものすごいペースで空けていく。私がたじたじになるくらいなのですから、それはもう早い。おもしろいのが、人数分大きい徳利を頼むという文化。え、そんなに取るの?みたいな感じで驚いていると、まだ並々と入った私の猪口をめがけて全員が徳利を向けてきます。飲ませ続ける”もてなし”を受けてへろへろに(笑)
空になった徳利は倒しておくのがここでは当たり前だそう。倒した徳利の数が増えると誰かが自然と次の徳利を頼む。量ではなく時間で飲む人、みなさんとてもお強い。
そうこうしているうちに鍋ができてきました。魚沼釜蔵の名物、魚沼牛のモツ鍋。街の歴史から見れば、まだ海は遠いから、よい水、よい米、よい酒、そしてやはり里の食材を使った料理が中心のようです。もつ鍋にはごぼうやニラ、白菜が山盛りで入り、他の地域のそれとは違った個性があります。牛もつの脂をすった野菜が美味。
魚沼にきてお米を食べないなんてこと、〆ごはんは滅多にやらない私でも流石にできません。炊きたてのあさりごはん。パエリア風に見えますが、味付けはいたって和風。最後の最後までみな美味しい。
日本酒を飲んでいるとさらに注がれそうなので、一旦レモンサワーに避難。ふぅ、八海山も鶴齢も髙千代もどれも素晴らしく美味しい。八海山も1合450円からと東京では考えられない値付けになっているので、いくらでも飲みつづけたくなる地元の人の気持ちもよくわかります。
雪国だけあって、地元の人は一軒で長丁場というのが多いみたいですが、拝み倒してお店を変えることに。一体何合飲んだのでしょう。ビールも日本酒も食材も、どれも素晴らしい。接客も明るくてとても親切で心地よい時間を過ごしました。
新潟市街と越後湯沢にもお店があるとのことですが、本店が六日町とのことでした。酒場が元気な街はいい街です。ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
魚沼釜蔵総本店
025-781-5660
新潟県南魚沼市六日町105-1 サンプラザビル 2F
17:00~22:00(水定休)
予算4,000円