【閉業】恵比寿「さいき」 半世紀を越え、ずっとこの街で親しまれてきた名酒場

【閉業】恵比寿「さいき」 半世紀を越え、ずっとこの街で親しまれてきた名酒場

2015年6月24日
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創業は昭和23年、翌年に建てられた店舗は今も現役で、老舗の居酒屋たる風格が漂う老舗「さいき」。恵比寿の街で67年間かわらず営業を続けた銘店です。

下町の鉢植文化がそのまま恵比寿にやってきたような緑に包まれた店構え。藍色の暖簾に「さいき」の文字が映えています。駅からやや離れている路地裏ですが、まだまだ飲食店街の続くエリアにあり、人通りは結構多い。ですが店の中に入るとまるで別世界。昭和の古きよき酒場がそのまま保存されているような空間に浸れます。

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L字カウンターとテーブル席、二階にはお座敷があり、予約をすれば宴会も可能。ですが、やはりさいきの魅力はこのカウンターに詰まっているのだと思うのですが、ご存じの方はどう思いますか。

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建物は60年以上使われているだけあってかなり燻されていますが、しっかりとメンテナンスが行き届き、年季そのものがさいきの一つの「肴」になっているように感じます。

席についてまずは瓶ビール。恵比寿で飲むのですから、ビールはやはりサッポロを選ばねば。

それでは乾杯です。

キンキンに冷えた瓶からグラスに移すことで冷えがちょうど良くなり、口に入った時には絶妙な温度になっています。

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先附(1,300円)でお刺身などの小皿が3種でてきます。ひとつひとつが実に素晴らしく、非常に繊細な味付けで心がほぐれるような気分になります。脂が虹色に輝いている鯛のお刺身が今日の華。

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主張の強いおつまみでぐいぐいと飲む生ビールもいいですが、小鉢を少しずつ頂きながら瓶ビールを傾けるのいいもので。

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恵比寿のさいきのカウンターに黒ラベル。恵比寿の酒場の風景を一枚の写真で表わせというお題を頂いたなら、私はこの写真を使います。

さて、その黒ラベルの横にあるグラスに入った白いお酒がここの夏の名物、凍結酒。

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一ノ蔵を一升瓶ごと凍らせたもので、それを店の方が突付き振り回しシャーベット状にしていったもの。ドボトボと入れて山のように盛って出来上がり。一杯目は水飲み鳥になった気分でお口からお出迎え。パクっと食べたら、あとはかき氷感覚で飲み進めていきます。湿度の高い今どきや夏場にはこれがとてつもなく美味しい。

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この凍結酒、キンキンに冷えていることで酔いを感じないのですがあとから突然やってくると話す人も多いです。そんなときのために、黒ラベルをチェイサーにするといいですよ。

天ぷらや干物・焼き物の種類が多いですが全体的に種類はさほど多くはありません。絞っているからこそのどれもハズレは一切ない至高の逸品揃いです。6月も後半に入り、ハモが品書きに仲間入りしていました。

サヨリの天ぷら(700円)はサヨリ2尾で、魚介の天ぷらはひと通りの野菜がついてきます。割烹というほど硬くなく、大衆酒場よりは1ランク高い背筋を伸ばす感じのある「さいき」。天ぷらが似合います。

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海老しんじょう(900円)は昔から変わらず愛されているさいきの名物の一つ。すりつぶした白身と海老で中はふわっと外はほどよくパリっと揚がっており、食感が楽しめる一つ。塩気ではなく旨味で飲むのはこういうことだと改めて感じる逸品です。

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できたてを供するだし巻き卵(600円)はさすが老舗と誰もが頷く焦げ目のない黄金色の仕上がり。甘みよりも深い出汁の味のほうが優っていて、寿司屋のそれとは違いお酒のつまみとして存在感のある味付けです。

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むぎ焼酎に切り替えて、あとはのんびりとこの空間を味わいましょう。

お店は常連の方も多く、カウンターの内側の女性と近すぎず絶妙なバランスで酒場のお話を楽しまれています。ご主人の優しいオーラが店全体を包んでいて、ここで飲んでいると酒場が改めて癒やしの空間なのだと気づかせてくれます。

恵比寿の老舗で大人なひととき、いかがでしょう。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

さいき
03-3461-3367
東京都渋谷区恵比寿西1-7-12
17:00~24:00(土日祝定休)
予算3,500円