横須賀中央『中央酒場』街の誰もが愛する”丘”の名酒場

京急の沿線には酒場が実に豊富です。とくに横須賀中央の周辺の密集度は酒場のテーマパークといってもいいほど。これほど素敵な飲み屋が林立する街は珍しい。歴史や産業のある街にはやはり名酒場が多いなと感じさせてくれる地域です。

そんな横須賀中央で毎夜飲み歩く強者達の多くがナンバーワンと太鼓判を押すお店が今回ご紹介します「中央酒場」です。地元ではチューサカの愛称で呼ばれています。

京急の中央駅からすぐの場所。なんと朝の10時からオープンしている昼酒バンザイなお店。赤い提灯と橙色の暖簾が美しい。酒場という文字がこれほどかっこよく見える看板もそうはないです。

お店はテーブルとカウンターが長手方向にずっと伸びる比較的大きなお店。オープンキッチンの厨房にはいつもたくさんの店員さんが無駄のない動きで着々と料理やお酒を作っていきます。早い時間からやっているかといって薄暗さや使い古した雰囲気はなく、隅々まで店主の神経が行き届いていることを感じます。

早い時間でもお客さんでいっぱいの店内。タイミングよくカウンターに滑りこんでお隣さんにご挨拶。それでは、一杯始めましょうか♪

ビールはキリンラガーですが、ここの一杯目に酎ハイ（400円）はいがでしょう。東京下町で見かける香りと仄かな甘みがついた琥珀色の酎ハイがでてきます。これは珍しいでしょう？美味しいんだから！

ではでは、お先に失礼して乾杯。

お通しはありません。おつまみは50種類程もあり、壁一面にずらりと黒い短冊に白文字で書かた品書き並んでいます。お刺身、焼き魚、レバニラやニラ玉などの炒めもの、鍋もありとくに柳川が人気のようです。

私は中央酒場に来たらかならずこれ”まぐろブツ”（550円）。ぶつというにはもったいないくらいの中トロがごろごろと入っています。スジはほとんどなく、赤身もトロも口の中で柔らかく溶けていくよう。

三浦半島の三崎港はマグロで有名ですが、横須賀でマグロならばここで決まり！

中央酒場は揚げ物が美味しい。常連さんが口々にそう話します。油がいいんだよ、とか、ネタも新鮮だからね！皆さんお店の人のようにオススメされています。

アジフライを頼むと塩焼きで使うような手のひらサイズの鯵を二匹もつけて550円。肉厚でぷりっぷりで美味しいのですが、今日はやはり揚げ物ナンバーワンの”げそ天”で。

天つゆはホカホカに暖かく、ここに天ぷらをすっとくぐらせて食べれば、口の中で幸せいっぱい。ここにくーっとビールや酎ハイを合わせれば、もう言うことなし。カウンターに座り、厨房の様子を眺めながら心地いい時間が流れていきます。

さて、チューサカといえばホッピー。ホッピー専用の冷蔵庫があり、そこにはあらかじめ焼酎を入れておいたジョッキとホッピーが氷点下ギリギリで冷やされています。これが美味しさのポイント。

25度の焼酎は140mlほど入り、通常の割合の倍の比率。ホッピーセットで450円ですが、十分なお得感を感じます。ジョッキの目安の★の位置より上にある焼酎のラインにうっとり（笑）

氷なしでキンキンに冷えたホッピーは格別です。ソトを半分残して追加で焼酎をもらう人もいますが、この感じで登場すると、やはりジョッキの上までホッピーで満たしたいところ。

丁寧にアク取りをした塩味の牛すじ煮込みにこのホッピーを合わせれば、満足すること間違いなし。

ホッピー、あまりに美味しすぎてあっという間に飲み干してしまいました。
うん！ビールが好きだけどやはり中央酒場に来たらコレだね～。

二杯目は黒ホッピーに。深みのある味の黒ホッピーはぬるくなると味が濃いなーと感じますが、3冷ホッピーでは最高に美味。思わずプハーって心の中で言ってしまいます。

ジョッキに焼酎を入れた状態で冷やすという独特なスタイルの中央酒場。その冷蔵庫はドリンク専用なので他の食品などから匂いがつくこともありません。洗い場もジョッキ類は専用のシンクになっていて、飲み物に対してもお店のこだわりが感じられます。

お隣の常連さんは横須賀歴30年の自衛官。一度海に出ると大好きなお酒が飲めない、だから丘に上がったときは中央酒場にまっしぐらなんだよと教えてくれました。中央酒場が明るい時間からやっているのもそういう職場の人が多いからなのでしょうね。

全国の寄港地の飲み屋街を回ったけれど、やっぱり横須賀が一番いいねーと話すその方の言葉に、この街がなぜ名店揃いなのかわかったような気がします。代々の常連さんたちが店を愛し続けたからこそ今がある、なんだかいいなぁ。

中央酒場は品川から京急電鉄の快特で1時間。それでも飲みに行く価値が十分にあるお店です。

ごちそうさま。

（取材・文・撮影／塩見 なゆ）