京都が大好きです。神社仏閣、名所史跡を巡るのはすべては夜の「梯子酒」に向けての準備運動。
日が暮れてきたら、愛する店を純に巡って行きましょう。
新幹線で飲み、新京極の食堂「京極スタンド」で月桂冠を飲み、四条河原町の「たつみ」でキリンビールを飲み、ぼちぼち日もくれていい時間。四条河原町からなら三条京阪はちょどいいお散歩の距離かな。
鴨川を歩いて三条大橋を越えてちょっと。見えてきました、「伏見」の大赤ちょうちん。景観条例の強化で大看板は外されてしまいましたが、それでも漂う老舗の堂々たる風格。さぁ、冷えきったからだをお燗酒で温めましょう。
「おいでやす」。京都言葉出迎えてくれる名物女将の声が京都に来たことを改めて感じさせます。店内はすでに満席状態。それでも女将は「詰めて、詰めて、座れるから」と、飲んでいる人たちをかき分けるようにして席を作ってくれます。とにかくパワフルな女将さんで、飲んでいる方はどんなに常連でも言われたら素直に従い小さくなって飲んでいます。
ビール?
はい、まずは瓶ビールから。
サッポロの赤星で乾杯!
飲み始めたらすぐに、「今日はコレとコレ、グジもあるし、鯛もすきやろ、あとはずいきもいい」と、押し売りのごとく料理を持って女将さんが売り歩きに来ます。
すぐに出る料理をまずは摘んでね、ということなのですが、売り込みが勢いありすぎて初めての頃は私もビクビクしていました。(笑)
この売り歩きこそ伏見の名物であり、女将さんとの会話も楽しい。
せっかくだからと奮発してアワビのお刺身を選びました。肉厚、巨大、食べごたえ十分すぎる。ここは漁師町?いえいえ、京都市街です。
お酒をキクマサのお燗酒に切り替えて、つぎはウニといきましょう。
海苔の上にお行儀よくのったウニ。整列しているからわかりにくいですが、かなり大ぶりのもの。上燗くらいの温度のキクマサをきゅっと飲みながらウニをちびちびと摘んでいく。たまりません。
今日は海老がいいよ。
と突然近づいてきた女将に提案され、そのまま「ハイ!お願いします」と返事。ちなみに、一度いらないというとあとから注文しようとしても「いらんゆうてはったやろ」と言われてオーダーを受け付けてくれません。クセがつよいのですが、そんなのも含めてこの酒場は女将のトークを聞きに来ているようなもの。
初めての人に「ネットみてきてくれはったの?」、「よーく宣伝しといてや!」とがんがん売り込み。「野菜天、包もうか?奥さん好きやろ?」と常連さんには名物をテイクアウトで提案。まぁ、すごいすごい、いろんな酒場で飲んでいますが、ここの女将さんが一番迫力あります。
ぷりぷりの海老はまだ微妙に動いています。おぉ…
「海老の頭はあとで揚げてあげるからそのままにしといてね」
かりっかり、菊正宗がもう4合目。だいぶピッチが早くなってきました。
ぐじの酒蒸しをシメの一皿に。このボリュームはすごい。塩加減、旨味、バランスは完璧です。
甘鯛のことをぐじと呼ぶ京都ですが、この街らしい呼び方ですね。
海老芋、ずいき、うるか、よこわ…東京の大衆酒場では聞かない名前がずらりと書かれた短冊メニューを見ているだけでも楽しくなってきます。
飛び交う京都の言葉、女将さんのがんがん攻め込んでくる接客、そしてなにより京都らしいおつまみたち。
本当に伏見はすばらしい酒場です。これからもずっと続いてほしいという想いを込めて、ごちそうさま。
でも、店名が伏見なのに、お酒は伏見ではなく灘なのはなんで?といつも店を出たときに考えてしまいます(笑)
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(取材・文・撮影/塩見なゆ)
伏見
075-751-7458
京都府京都市東山区三条大橋東入ル二町目76
17:00~22:00(日祝定休) 予約原則不可
予算2,300円