人形町『来福亭』座敷で味わう百年洋食。ビール片手に名物オムライスに舌鼓を打つ

人形町『来福亭』座敷で味わう百年洋食。ビール片手に名物オムライスに舌鼓を打つ

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花街・人形町の歴史を今に伝える大衆洋食

親子丼の元祖『玉ひで』の並び、甘酒横丁からもほど近い場所に『来福亭』はあります。かつて中村座や市村座といった芝居小屋が賑わい、明治以降は都内有数の花街として栄えた人形町。粋な旦那衆や文化人が集うこの街で、ハイカラな洋食は特別なごちそうでした。

『小春軒』や『芳味亭』といった洋食の名店が徒歩2・3分の場所で世紀を超えて独自の味を競う中、『来福亭』は創業120年と最古参。

現在の建物は終戦後の1948年(昭和23年)に建てられたもの。戦後まもなくで資材が十分に揃わなかった時代の建物ですが、手入れが行き届きぴしっとした印象を受けます。西洋式の間取りになる前につくられた一回り小さな造り。文化財級の情緒がありますが、決して気取った店ではありません。

引き戸を開けると、1階はテーブルが数卓のこぢんまりとした空間。多くの人が目指すのは、店の奥にある急な階段です。一歩ごとに「トン」と心地よく軋む音は、この店が重ねてきた歴史そのもの。磨り減った踏み板の艶に、老舗好きの私はそれだけでうっとり。

階段を上った先の2階は、畳敷きの座敷が広がります。都会の喧騒を忘れさせる静かな空間で、四代目の女将さんが温かく迎えてくれました。ランチタイムで相席ありの満員状態ですが、それでもこの落ち着き。改めて、旧日本橋区の老舗飲食店の素晴らしさを実感します。

看板に頼らない実力派の味

キリン一番搾り瓶ビール

キリン一番搾り 中瓶 650円

まずは瓶ビールをお願いしました。座敷に似合うキリン一番搾りの瓶ビール。グラスに注ぎ、それでは乾杯!

配膳してくれた女将さんに「お昼から飲むビールは格別ですよね!」と言われ、お隣のスーツ姿のお客さんからも「ビールが羨ましい!」とのお言葉。普段は堂々と昼飲みを楽しんでいる私ですが、さすがに照れ笑い。

オムライス・メンチカツ

オムライス・メンチカツ小 1,200円

品書きの筆頭に記された、ほとんどのお客さんが注文するという一皿。

運ばれてきたオムライスは、昨今流行りの半熟とろとろ系とは一線を画す、見事な薄焼き卵のクラシックスタイルです。

スプーンを入れると、現れるのは王道のケチャップライス。具は細かく刻まれた豚肉と玉ねぎ。しっとりとしつつも、お米一粒一粒の輪郭を感じます。

そして特筆すべきは、卵の上にかかるソース。ケチャップの酸味だけでなく、ウスターソースや、醤油に似た香ばしいコクも感じられました。家庭の味でも、町中華の味でもない。しみじみと美味しい、これぞ「来福亭の味」です。

そして、付け合わせのメンチカツがまた素晴らしい。衣は驚くほど薄く、サクッと軽やか。中には玉ねぎの甘みが溶け込んだジューシーな肉がみっちりと詰まっています。このメンチカツにかけるウスターソースが、なんとも下町らしくて良いではありませんか。

優しい味わいのオムライスと、小気味よい食感のメンチカツ。昔の人も、きっとこの座敷の上で笑顔になっていたんだろうなぁ。一世紀続く理由がわかる美味しさです。

ごちそうさま

奇をてらわず、誰もが知る定番料理を、ただひたすらに実直に磨き続ける。その「丁寧な美しさ」こそが『来福亭』を訪ねる理由です。

これだけの歴史と風格がありながら、千円台で最高の洋食が味わえるのは本当に貴重です。

ランチのピークタイムとなる正午頃は混み合います。13時以降か夜の利用をおすすめします。

店舗詳細

品書き

  • キリン一番搾り 瓶ビール中 650円
  • 日本酒 600円
  • オムレツ 700円
  • ハンバーグ 700円
  • ロースカツ・ヒレカツ・ビフカツ 各1,000円
  • オムライス・メンチ小 1,200円
  • カツ丼 みそ汁 1,200円
  • カツライス みそ汁 1,300円
  • カキライス(10月~3月)みそ汁 1,300円
  • カニヤキメシ 850円
店名来福亭
住所東京都中央区日本橋人形町1-17-10
営業時間11:30 – 14:00 17:00 – 20:00
土曜日は昼のみ
日祝定休
創業1904年