中央線沿線には名酒場と呼ばれている、風格ありで味よくて価格もやさしいお店が豊富にあるのは皆さまご存知の通り。
このサイト(乾杯のポータルサイトSyupo)においても多数紹介していますので、ご興味をもっていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
そもそも、私自身が荻窪の生まれということもあり、中央線愛のようなものを自然と持っているため、やや偏っているのではと言われてしまいそうですが、そんなことはありません。
下町の酒場も大好きだけれども、武蔵野・杉並・中野は無視できる場所ではないのです。
今回は阿佐ヶ谷です。
とはいっても駅前の飲み屋街ではなく、パール街を杉並区役所の方へ10分ほど南下した場所。さらにそこから鍵の字型の路地へ入り込んだ場所にある隠れた名店「つきのや」。
地元のご年配の方を中心にファンの方も多く、もしかしたらご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「あー、ついに見つけられたか…」なんて言わないでね。私の父もここは利用するようで、もしかしたら”なゆパパ”と乾杯できるかも?(笑)
いらっしゃいませ。ご予約は?
そう、このお店はなかなかの人気店。カウンター数席にテーブル5卓ほど。初めての方は要予約でどうぞ。
ビールは瓶が赤星、生は黒ラベル。日本酒が豊富で、料理はその日の市場にあわせた魚が豊富。一品料理は居酒屋の定番がずらりと並びます。
まずは、ここの名物、お刺身の盛り合わせ(三種1,000円程度)をいただいて、赤星で乾杯しましょう。
新鮮でよく選ばれた魚だというのは一口でわかります。最初のお刺身が正解だと思わず笑みがこぼれますね。
静岡産の生しらす(350円)はここではよく見かけます。みてください、この輝き、そして大きさ。
こんなものがこの価格で食べられるのだから、このお店の仕入れパワーには恐れ入ります。
軽く生姜醤油につけてぱくっと食べればもう幸せ♪
こうなるとお酒は必然的に注文しますよね。
まずは広島竹原のお酒「竹鶴」を。
竹原は昔塩田で栄えた豊かな街で、日本酒づくりも盛んな土地です。
そんな竹原の酒といえば、やはり竹鶴酒造のことを話さないわけには行きません。
竹鶴と聞いて、あれ?と思われた方、正解です。
ここはニッカウヰスキーの創業者でジャパニーズウィスキーの父、竹鶴政孝氏が生まれた酒蔵なのです。
美酒は必ず売れる、そんな世界で育った竹鶴氏は、その後のウィスキーづくりにも高品質を追求しつづけたというわけです。
そんな竹鶴酒造さんですが、東京では飲めるお店が限られていてかなりレアといえるもの。それも大衆酒場となるとまずないのでは。
竹鶴を定番酒にしているなんて、素敵でしょ。
店員さんのお一人利酒師の資格をお持ちとのことで、料理と合わせたお酒の提案もしてくださいます。竹鶴以外にも梅の宿、豊盃、酔鯨など嬉しい銘柄勢揃い。今夜は何を飲もうかな。
(一杯500円前後)
ここの唐揚げはおいしい。
400円台でこのボリューム、そして独特な味付けにされた竜田揚げ風のあじわいは癖になります。お魚だけでなく、こういう大衆酒場メニューも種類豊富なのがすごいです。
お店の方はオープンカウンターの厨房にお二人、配膳がお二人の4人体制。ご家族経営のようでとっても温かみがあります。
ホシガレイを塩焼きにしてもらいましょう。
脂がよくのっていたようで、干された旨味がぎゅっと凝縮しています。これは燗酒との相性抜群です。
次は梅の宿を温燗にしてもらおうかな。おつまみがおいしいので自然とお酒が進みます。
そういえば、鳥取で飲んだ日置桜ってお酒、あれは美味しかったねーと話をしていたら、なんとそこに書かれているではありませんか。
結構マイナーなお酒なのにさすがです。しかも特別純米の生酒ですか、素敵です。
お酒はお燗の場合はちろりにいれて湯煎して提供され、冷たいものはそのまま一升瓶から注がれます。
水飲み鳥のように、こぼさないようお口から。
うんうん、これはよろしいですねー。
これに合うおつまみとして、こいわしのマリネを。
やっぱりしっかりした辛口のお酒には酸味と甘味の詰まったマリネなんかが合いますもんね。
続々と地元の方が集まってきて、開店30分で満席になりました。予約でいらっしゃる方も多いようです。この料理とお酒ならば、そりゃー流行りますって。
場所柄、目立たない場所にあるのでこれくらいの人気ですが、これが駅前だったらたいへんなことになっていそう。
大衆酒場のあるべき姿をしっかりと表現しているお店ですが、実はまだ新しく2010年の開店。それでも、働いている方はみなさん熟練さんで、とーってもいい風格を感じます。壁じゅうにはられた短冊メニューもいい味出しています。
杉並区の大衆酒場といえば有名どころはいくつもありますが、そんな酒場にあきてしまったそこのあなたへ、このお店をおすすめします。
魚よし、おつまみよし、なにより日本酒よし。お財布に優しく、楽しい酒場時間をここで過ごしましょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/なゆ)
つきのや
03-5378-8007
東京都杉並区阿佐ヶ谷南1-14-12 パティオエルスール 1F
17:00~24:00(月定休)
予算2,300円