三軒茶屋『味とめ』昭和43年創業。最も”さんちゃ”らしい場所

三軒茶屋『味とめ』昭和43年創業。最も”さんちゃ”らしい場所

2021年6月8日

世田谷区・三軒茶屋のすずらん通りで一番古い居酒屋「味とめ」。1968年(昭和43年)の創業です。界隈のベテラン飲兵衛に知らない人は居ない名物女将の店。全国から取り寄せた美味しい肴をいただきます。

千葉から味とめのご主人のところへ嫁いできたという女将。ご主人と守ってきたお店は、正確には「割烹味とめ」。

いまはすっかり居酒屋然とした気取らない雰囲気ですが、昔は河豚料理や天ぷらが主役の店。手頃な料理が並ぶなかに、実はふぐ料理や鰻料理がしっかりあって、ご主人の想いが受け継がれています。

女将さんは80歳をこえても現役バリバリです。店の誰よりもお客さんに声をかけています。厨房は二代目になる息子さんが入り、お手伝いされている皆さんもとても朗らかな方ばかりです。

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すずらん通り商店街は酒場好きの”けものみち”

三軒茶屋で飲食店街といえば、三角地帯やなかみち街がよく話題になりますが、駅近く、キャロットタワーの脇で昭和の景色を色濃く残す「すずらん通り商店会」も実に魅力的。本記事をご覧の酒場好きの方は、”けものみち”感覚で、あえて茶沢通りから1本入ったこちら側を歩く人もいらっしゃるのでは。

50年続いてきた味とめは、建物老朽化のため2017年秋に一旦閉店。2019年に建て替え再オープン。現在は「味とめビル」の1階で営業しています。

昔の味とめは、「カオス」でした。

雑然と食材や新聞やなんやらが積まれ、壁には膨大なポスターやチラシが壁を埋め尽くしていました。女将さんは店内を自由に移動し、開いているテーブルに座ってはお客さんと雑談しながら作業をしていました。雑然としていて、最初はみんな驚くのですが、しかしそこに座ると居心地がいいことこの上ない…。

もうあの味とめはないのかと思っていたら、だんだん新築の店内もいろんなものが増えてきました。前の店でも、カウンターは酒瓶で埋め尽くされていましたが、新店舗でも、すでにカウンターはお客さんスペースではなくなりつつあります。

女将さんの自由闊達さは健在。常にお客さん全員のことを気にかけ、色々と話しかけてくれます。300種類をこえるメニューの数々と、膨大な掲示物は、すべて女将さんからの「楽しんでいってね!」のメッセージが感じられます。

味とめはビールがキリン、甲類はキンミヤというのが昔からの顔ぶれ。状態抜群のキリン一番搾り生ビール(550円)で乾杯!

膨大過ぎて写真でまとめきれない「味とめ」の品書き

のみもの

ビールは中瓶で、キリンラガーのほかにアサヒスーパードライサッポロラガー(赤星)も選べます。いろいろと赤文字で補足が入っているのは、息子さんによるものでしょうか。

酎ハイはすべてベースはキンミヤです。

目黒区の老舗割材メーカー博水社の「ハイサワー」推しで、ベースをキンミヤから泡盛に変えた「島ハイサワー」なども用意されています。

日本酒(680円~)には、四日市の日本酒「宮の雪」もあります。売り切りごめんということで、いろんなお酒が入っているので女将さんに相談するときっと次々でてきます。

あふれんばかりの献立 半世紀通わないと食べつくせません

いつも酒場ではすべての料理を確認してから注文を決めたいと思っていますが、味とめは、インスピレーションが大事。すべて見きれません。もう、最初から女将さんに頼って「1軒目なのですが、今日のおすすめ教えてください」と相談するほうが良いかもしれません。

創業時からの天ぷら、河豚、鰻はいまも変わらずおすすめ料理です。高い料理もあれば、安い料理もある。昔から通い今は出世されたベテランさんにも、駆け出しの演劇人にも優しいお店。

日本各地の料理が集まる、元祖「ふるさと酒場」ともいえる内容は、常連さんが故郷の美味しいものを女将さんに伝授し、女将さんが次々献立に加えていったといいます。

女将さんの故郷の味「房州はばのり」(650円)やいわしなめろう(650円)もあります。

冬は鍋料理も人気です。また、いわし料理やくじら料理が充実していて、さらに焼き鳥まであります。このカオス感は唯一無二、味とめの魅力です。

都内では珍しい料理もある

ママのおすすめ・秋田のおひたし(500円)

女将さんがなにかの下ごしらえをしている横の席に通してもらいました。トークが途切れず、ひたすらもてなしてくれます。会話の中で紹介された秋田のおひたし3品(500円)。首都圏では珍しい黄ニラなど、旅にでたくなる美味しさ。

牛すじ煮込み(580円)

味噌ベースでクタクタに煮込まれた牛すじ。根菜もほろっと溶けていくほど。

豆腐サラダ(600円)

味とめ特製ドレッシングが味の決め手。

くじら竜田揚げ(950円)

柔らかくジューシー。刺身でだすのとおなじくじら肉が使われているそうです。生姜がよく効いていてお酒が進みます。

瓶ビールで赤星1本(550円)

せっかくなので、赤星もひとつ。生ビールで落ち着いたあとは、瓶を少しずつ傾けていくのもいいものです。

うつぼたたき(1,000円)

くじら竜田も珍しくなってきていますが、うつぼのたたきはもっと珍しい!高知ではおなじみの料理です。産直で、女将さんがこだわるご当地料理のひとつ。

さくらチューハイ(430円)

ちょっぴり甘酸っぱい桜色のチューハイ。少し三茶らしくおしゃれ気分になってみました(?)。

ハイサワーでつくる、スタンダードなレモンサワーも美味しい。ここは瓶ではださずに、予め注がれた状態で提供されます。

ほかにも珍味いろいろ。気になる方は食べに行って、女将さんに相談してみてください。スタンダードな焼鳥も、長年鰻をだしてきた老舗らしい自家製の特別なタレをつかった逸品。

受け皿がハート型でかわいい日本酒を一杯。

酒場に人と人のコミュニケーションを求める方には、三軒茶屋で最高の一軒。新しくなっても、味とめは味とめです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名割烹 味とめ
住所東京都世田谷区太子堂4-23-7
営業時間営業時間
10:30~23:00(LO22:00)
日曜営業
定休日
月曜日定休日
開業年1968年開業、2019年改築