向島見番通りの入り口にある1934年(昭和9年)創業の「上総屋」は界隈きっての老舗の酒場です。
最寄り駅のとうきょうスカイツリーから徒歩8分ほどの立地ながら、いつも地元に暮らす常連さんたちで満卓になる人気店です。とくにお祭り関係の人々が集う店として知られています。
看板料理は豊洲から仕入れる魚介類。名物のまぐろブツ、東京の老舗らしくメゴチとハゼの両方を揃えた天ぷら、大ぶり肉厚のアジフライなどが人気です。戦前から使われている店舗そのものもお酒を進ませます。
言問橋東詰にある関所
とうきょうスカイツリー駅が最寄りですが、浅草から言問橋経由でも15分ほど。隅田川沿いの景色を眺めて歩けばあっという間です。
言問橋東詰、隅田公園のすぐとなりにあります。レトロな建物に大関の看板が目印です。
二階は宴会座敷になっていますが、通常の酒場コーナーはコンパクトで、提灯で照らされた小さな酒場の店構え。コロナ禍以前は、法被姿の旦那衆たちの笑い声が聞こえてきたものです。
飲まずに通過は難しい。だから「関所」とうたう酒場は東京には意外と多いです。
カウンター席はなく、飴色に輝くニス塗りのテーブルが並ぶ店内。一人客ももちろん歓迎してもらえます。
ビールは墨田区に本社があるアサヒのスーパードライ
浅草、墨田区界隈でビールといえば、やっぱりアサヒです。この地に本社を構えるアサヒビール、老舗には土地のビールが似合います。それでは樽生アサヒスーパードライ(中550円以下税別)で乾杯。
瓶ビールもアサヒスーパードライ(大びん600円)、ウーロンハイやレモンハイ(400円)、ほかには、お茶ハイ、梅酢サワー、ホッピー、ハイボールなど(各450円)、浅草うまれのリキュール「電気ブラン」(500円)も取り扱いあり。
なにより、飲み物は和酒の品揃えに注目です。約20種類を常備する日本酒は、一合600円から。
料理は壁に掲げられた短冊をよく見回します。”こんなところに隠れてた!”的な料理もあるので、張り紙は要チェックです。
手作りの小鉢がお通しです。毎回気の利いた煮物や衣かつぎなどが出てきて、これも嬉しいおつまみのひとつです。ときにはマグロ大根なども出てきます。
名物まぐろブツ刺し
ほぼ全員が頼む一品目、名物のまぐろブツ刺は、なんとこれで500円。スジのすくない赤身、脂ののった中トロなどがごろごろと盛られています。長年続く酒場は市場の卸との関係も長いわけで、マグロはそんな仕入れ力を感じさせてくれる逸品です。
せんきん(栃木県さくら市)がつくる仙禽[かぶとむし]無濾過生原酒中取り(800円)
美味しいマグロには、美味しい日本酒を。定番の地酒に加え、ひやおろしや新酒などの限定銘柄も登場します。
東京の魚といえば何でしょう。江戸前でもとれるコハダは光り物の代表格です。
浅く漬けられ、脂のコクと爽快感がお酒にあわないはずがありません。添えられたサービスのアサリも東京らしさです。
上総屋は魚の店。いつも魚を食べる口でやってきますが、つい頼んでしまうのがこのジャンボ焼鳥(2本400円)。
さらっとしたタレが肉汁といっしょに身の隙間にヒタヒタに詰まっていて、噛むとじゅわっと美味しさが口いっぱいに広がります。
焼鳥・串焼きは葱まぐろや鴨つくね(各2本400円)などもあります。
焼鳥には本格焼酎を。鹿児島県甑島でつくられる六代目百合のお湯割りで、夕暮れの川沿いを歩いた冷えを温めます。
鮮度がよいとくさみがなく、上品な美味しさが楽しめるハゼやキス。上総屋に来たら食べたくなる料理が多くて困ってしまいます。
ボトルワインも人気
混雑が一巡したあとならば、ボトルワインをもらってじっくりと飲むのもまた楽しいです。デ・ボルトリ・DB(オーストラリア ニューサウスウェールズ)のデイリーワインなど、ボトル売りもされています。
シラーにエイヒレ、これが結構合うのです。
などなど、上総屋の料理を紹介しているときりがありません。手頃な価格で居心地良くしっかり楽しい一軒、浅草・押上散策のあとに立ち寄られてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 上総屋 |
住所 | 東京都墨田区向島2-2-10 |
営業時間 | 営業時間 ランチタイム [火〜金]11:30~13:30(L.O.) ※当面の間、土日のランチタイムは休業。 ※土曜日・日曜日昼は御法事、ご宴会などの御予約のみ営業 夜の部 [火〜日]17:00~21:00 日曜営業 定休日 月曜日 |
開業年 | 1934年 |