巨大な飲み屋街で有名な赤羽から1駅となり、荒川の対岸「川口」にブルーイングパブ「ぬとり」が新登場。ビール好きのご夫婦が切り盛りする、街の小さな麦酒処です。
1925年に日本麦酒(現在のサッポロビール)東京工場が竣工した川口は、鋳物の街、宿場町に加えてビールの街という側面もありました。サッポロビール埼玉工場として操業していましたが、2003年に生産機能を千葉などに移し、工場は閉鎖。跡地は、かつて同工場で製造された日本初のオレンジジュース「リボンジュース」(現在のポッカサッポロ「リボンオレンジ」)から名前をとった「リボンシティ」として再開発されています。
サッポロビール工場の閉鎖後も、川口はマイクロブルワリーが次々とオープンし、3軒のブルーイングパブがありました。「ぬとり」は、川口で4軒目となり、この街の「ビール熱」の高さを感じさせます。
住宅街に誕生したブルワリーパブ
川口駅から徒歩10分。商店街から住宅地に入ったあたりに見えてくるブラックフェイスのレトロな建物が「ぬとり」です。
改装された店内は、自前で製造するクラフトビールに加え、地ビールやナショナルビールを提供する多数のタップが目立ちます。
ご主人の山田さんは、ビアレストランなどでお会いしたことがある方。ビールが好きすぎてビール醸造まで研究している山田さんのことを、皆さん「ビールおじさん」と呼んでいます。
サッポロ黒ラベルこだわりのつぎ方
なにはともあれ、喉の乾きにぐっとビールをあわせたい。一杯目は川口の歴史に名を刻む、サッポロ生ビール黒ラベルをいただきます。
ビヤホールライオン流の一度注ぎや、スイングカランで注ぐ方式など、最近話題の注ぎ方の違いが楽しめます。後乗せ泡の「パーフォクト黒ラベル」、流速の速さから適度にガスを抜く一度注ぎ、同じ黒ラベルなのに印象は全く異なるのはいつも驚きます。
400タンブラー(400円)、500型サッポロジョッキ(700円)、筋トレもできちゃう1000型ジョッキ(1,400円)の3サイズから選べます。
みんな大好き、一番大きなジョッキにたっぷりの黒ラベル。それでは乾杯!
ご一緒した皆さんと、大生乾杯。温度管理、洗浄などが行き届いた専門店で飲む1Lジョッキの生ビールは、誕生日ケーキ並みに「スペシャル」なものに思います。
自社製造とゲストビールが常時4種類以上
高円寺の人気クラフトビアバー「アンドビール」や、西川口の「グロウブリューハウス」とのコラボなど、マイクロブルワリー同士の横のつながりを感じるクラフトビールの数々。
昨今は大手もクラフトビール市場に参入し、既存の地ビールとタイアップしたことで各地の味を容易に楽しめるようになりましたが、こうしてマイクロブルワリーも相互で連携しているのは消費者としてとても嬉しいです。どんなビールが出てくるか、楽しみでなりません。
こだわりのサワー類もあり。ベースはキンミヤ焼酎です。
料理はどれも相性バツグン
栄養を意味する英語の”nutrition”が店名の由来。ビールって適量で飲む分には体に良い成分がたっぷり詰まっていますよね。奥様が主に担当されている料理も、栄養バランスを考慮したものです。
こちらは「ぬとりの野菜キーマカレー」(600円)。ポークソテーや煮豚、いわしのオリーブオイル煮など、ビール専門店ならではの相性抜群の料理(500円前後)が日々献立をかえて提供中です。
のりチーズトースト(300円)。麦由来のビールだから、麦由来の料理とよくあうものです。チーズトーストにのりの風味、素朴な味ですが、これがなかなかどうして、ビールを誘う味です。
秩父駅から車で15分ほど吉田地区にある醸造所「秩父麦酒」がつくるストロベリーサワーエール「くまさんのいちご」(680円)。埼玉県のいちごでつくるローカル色を楽しむビールです。
ビールの奥行きは無限大。そう感じさせてくれる「麦酒処ぬとり」です。川口飲み歩きの一軒に立ち寄られてみては。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材立ち会い・Special Thanks/Syupo酒場部のみなさん)
店名 | 麦酒処ぬとり |
住所 | 埼玉県川口市川口6-9-5 |
営業時間 | 営業時間 [月・水〜金] 17:30〜22:00 [土] 15:00〜21:00 [日] 15:00〜22:00 日曜営業 定休日 火曜日 |
開業年 | 2020年10月1日 |