郷土料理を看板に掲げている人気店は大箱のお店が多いもの。グループの宴会には最適なのですが、逆に一人、二人だと置いてけぼりな気分になることも。どこか丁度いい大きさのお店はないものでしょうか。いつもそうして旅先の夜の町をうろうろしています。
熊本花畑町の「料理天國」はそんな思いにぴしっゃとはまりました。
中心街で長年暖簾を掲げる老舗。現在の店舗は近年に移転したものでキレイな雰囲気ですが、以前は赤い大提灯に「居酒屋・雑魚・馬肉」の看板が光る昭和レトロな店舗でした。
熊本の繁華街の規模は、その一画だけをみれば福岡天神に負けず劣らずの密集度と賑わいがあります。まさにネオン街といった場所で、角打ちから老舗酒場にラーメン、スナックまでが無秩序にわちゃっと集まっています。
料理天国は富士通り沿いの飲食ビルの奥まった場所にあります。一見入りにくい雰囲気があるかもしれませんが、敷居が高いお店ではありませんので、ぜひ進んでみてください。
何十年も通っているという年配のスーツ姿のお父さんたちがじっくりと日本酒・焼酎を傾けているようなお店。厨房に向いたカウンターも広く、ひとり客は常連さんから一見さんまで多いといいます。
一杯目はアサヒビール博多工場でつくられた、キリっとした味とのどごし、安定のアサヒスーパードライ。では乾杯!
樽生ビール(中550円)、瓶ビール(600円)ともにアサヒスーパードライ。チューハイはアサヒの樽ハイ倶楽部(430円)。ここは熊本。地元のお酒を楽しむならば、焼酎は「芋焼酎 龍門滝」。アサヒビール社の九州エリア限定焼酎ですが、熊本国税局の酒類鑑評会受賞の銘柄。あとはおなじみの白岳・しろをつくる高橋酒造も熊本人吉の焼酎メーカーです。川辺も同じく人吉にある繊月酒造の銘柄です。
日本酒は霊山と瑞鷹、ともに熊本を代表するお酒。
さてさて、ここは肩肘張らずにカウンターでじっくり土地の味を楽しめるお店。郷土料理を前面にだしたお店と違い、酒場らしい素朴さがあるのがむしろよい、なんていう方もたくさんいらっしゃるはず。
土地の料理が豊富な献立は見ているだけでお酒が進みます。がらかぶ(熊本でとれるカサゴ)刺しや、県内でのみ飼育されている巨大な鶏「天草大王」をつかった料理、そしてダゴ汁に人文字(一文字)ぐるぐると地元の料理を手頃な価格で食べさせてくれます。
親しみやすい雰囲気の板前さんが、「まずはどうしましょう。」と話しかけてくれたので、ここはあまえて、今日のおすすめの刺身を訪ねてみました。そうして頼んだ料理がこちら、ご存知南九州を代表する魚のひとつ、きびなごの刺身(540円)です。
水揚げからそれほど時間が経っていないそうで、弾力ある食感とさわやかな風味がたまりません。きびなご刺しって、鮮度がもちろん重要ですが、小骨の処理など技術も必要。老舗の居酒屋を選べば間違いはないと思っています。
熊本名物、揚げ豚足(350円)。熊本の豚足は近年では揚げて食べることが多いのだと聞きます。
ボイルや煮もので食べる豚足のイメージを覆す、その独特な”サク&とろふわ”食感はクセになります。酢醤油で味を引き締めていただきます。
ここで焼酎が登場するわけです。濃い味のおつまみには焼酎が相性抜群。球磨川水系の水で仕込んだ「川辺」をちびりちびりと。
板前さんのおすすめ、和風カニシューマイ(540円)。
カニの身を練り込んだ餡に千切りにした皮を包んだもの。見た目もキレイな一品です。
一軒目は付き合いの宴会に顔を出したけれど、二軒目は落ち着いた居酒屋で静かに飲みたい…なんてときにもぴったり。夜11時まで営業、のんびりくつろげるカウンターがある料理天國で、熊本の味に舌鼓を打つ楽しいひとときでした。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)
料理天國
096-356-9311
熊本県熊本市中央区花畑町12-15
17:00~23:00(ランチあり・基本無休)
予算2,800円