南に瀬戸内海、北に日本海。さらに下関海峡などの複雑な地形に囲まれた山口県は、水産業が盛んな地域です。
今日は、県内各地の漁場で水揚げされた多種多様な魚介類が集まる山口市から、活魚でもてなしてくれる手頃な価格の大衆割烹「若新 小郡店」をご紹介いたします。
新山口駅前すぐ、お昼はランチメニューを中心とした営業ですが、すぐに作れるものならば夜の献立も提供してくれるお昼酒にも利用可能。もちろん、夜の利用でじっくりと生簀を泳ぐフグや鮃を吟味して、お造りを楽しむのが一番です。
新山口は、新大阪から山陽新幹線の「のぞみ」や「さくら」でおよそ2時間。2003年までは小郡駅と呼ばれており、県庁最寄りの山口駅までは、新山口駅からJR山口線で20分ほどです。
事実上、山口市の交通の玄関口である新山口駅周辺。大手企業の支店もあり、オフィス街が広がっています。
飲食店の数はそれほど多くなく、商店はやはり山口市中心商店街のほうが存在感があります。
そんな新山口で、貴重な地域密着の老舗海鮮料理店が「若新小郡店」です。本店は小野田にあり、創業は1986年(昭和61年)。小郡店は今年で29年目になるそうです。
特長はなんといっても、活魚、活イカ。副店長がご自身の運転でトラックに乗って買い付けに行く山陰は萩・須佐のイカや、瀬戸内など県内で水揚げされるふぐ、鯵、鮃、サザエなどが生簀をにぎやかに泳いでいます。
冷蔵ショーケースの一部も生簀になっています。目の前を泳ぐ魚介類が食べたくなれば、板場の職人さんに「これはどうやって食べるの?」と聞いて、そのまま注文することができます。
今回の取材はお昼。東京を朝に出発し、お昼どきに新山口へ着きました。喉はもうカラカラです。美味しい樽生ビール(キリン一番搾り550円)で乾杯です。
樽生はキリン、瓶ビールはアサヒ、キリン、ヱビスと3種類から選べます。チューハイは樽詰(400円)。
山口といえば、言わずとしれた人気銘柄揃いの地。獺祭や東洋美人、五橋などがずらり。地元向けということもあってお手頃価格が嬉しいです。定番酒は貴をつくる宇部の永山本家酒造場がつくる県内消費向け銘柄「男山」。これは首都圏では飲めないだけに、こちらのほうを飲んでみたいというお客さんもいるそうです。
刺身、煮魚、焼き魚、そしてお寿司まで、海鮮料理を一通り揃えている「若新」。
瀬戸内の穴子や、活かわはぎ煮付けなど、地域の特色が楽しい献立です。
仕入れによって活魚の顔ぶれはかわりますが、取材時(冬)は鯵、かわはぎ、ひらめ、石鯛、車海老、さざえ、地だこ、イカ活き造りなどが並んでいました。もちろんトラフグもあります。
お店の看板食材のひとつ、イカ(2,000円程度)。最近はあまり水揚げ量は多くないそうですが、少量でも漁師さんのもとまで通い、しっかりと仕入れてきています、と副店長。萩や須佐のイカは真鯛にも負けず劣らずの人気食材。活きのいい剣先イカの透明な身が大変にキレイです。
新鮮なので、刺身のエッジがピンととんがった状態になっています。
コリコリとした歯ごたえと、噛むほどに甘さがにじみ出てくるような味は、まさに格別の美味しさ。
サイズはまちまちなので、一人で食べるときは小ぶりなイカ(写真のイカ)を用意してもらうことも可能。ぜひ、一人旅で独占して食べてもらいたい最高の肴です。
お酒は「男山」(宇部)。ふくよかなお米の旨味とすっきりとした余韻。普通酒の飽きのこない味は、のんびり過ごす酒場時間にちょうどいいです。
軽くおつまみで切ってもらったお刺身。はまちもこの通り、ピンとしています。
活き造りで食べた残りのゲソは、天ぷらか塩焼きに調理してもらえます。軽くさくっと揚げたゲソは、軽く塩をふるだけ。これもまた旨味がお酒を誘う一品です。
品書きにない一杯売りのお酒も用意があるとのことで、副店長おすすめの銘柄「五橋本醸造生酒」の冷酒をだしてもらいました。軽いくちあたりで、魚介類との相性が抜群にいいお酒です。
うちの鯵ずしは評判なので、ぜひ!と、今度は、活アジを板前さんが手際よくさばいていき、あっという間に完成、鯵ずし。お酒の肴にもなるようにと、酢飯は控えめにと板前さんの配慮。
ぴしっとした歯ごたえの身を楽しむ普通の握りと、甘い醤油をあわせて軽く叩いたなめろうの軍艦の2種類。どちらも大きくうなずくような美味しさです。
ベテラン店長さんの優しさと、副店長の持ち前のサービス熱心で人懐こい性格がまざり、お店全体が飲み屋さんの雰囲気です。旅の途中に、活イカ、活鯵で一献、美味しさ保証します。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
割烹若新 小郡店
083-973-3737
山口県山口市小郡黄金町3-2
[月~金]
11:30~13:30
17:00~21:00
[土]
17:00~21:00
(日定休祝日不定休)
予算3,500円
定休日更新しました 2020-09-16