いつからでしょう。渋い角打ちに一人で入れるようになったのは。
そんなことをぼんやり考えながら、弘明寺の越後屋田中酒店でちびちびと高清水を飲みながら考えていました。幼少の頃、家から100mも離れていない場所に町の酒屋さんがあって、よく家族とお買い物にいったものです。当時はまだコンビニがそれほど増えてはいませんでしたから、酒屋が日用品の窓口でした。
こういうところで一杯ひっかけている大人に将来なりたいな…なんて考えていたかどうかは別として、身近にそんな世界はありました。
角打ちと一括りにしても、それは食事も提供する飲み屋風の店もあれば、店の隅っこを区切っただけの場所で、冷タンいっぱいに満たしたお酒を舐めるようなお店もあります。
古くから続く角打ちの典型的なかたちといえば、入り口が別になっている構造です。表玄関とは別に、隅っこに秘密の扉があるパターンです。
この自販機の隙間の向こう側に一人で入れれば、少し大人になったような気がしたものです。いまや、大人になり過ぎてしまいましたが。
ここは弘明寺で120年続く酒販店の越前屋田中酒店。店内で飲めるのは昔からで、近隣のお酒好きのお父さんたちの社交場として愛され続けています。
小さな角打ち部屋には、平日の午後、まだ明るい時間でもお父さんたちでいっぱい。ご近所の井戸端会議が進行中。
酒販店なのでお酒の種類が多いのは当たり前ですが、RTD(栓を開けてすぐ飲める低アルコール飲料)ではなく、ちゃんとしたナカとソトがある酎ハイが飲めるのが特長です。とくにずらりと並ぶ羽田のコダマ飲料社がつくるサワーはほぼすべて揃っています。バイスで知られるコダマサワーですが、実はいろいろあるのです。
コダマだけでなく、赤坂のホッピービバレッジ社のホッピーじゃない割材もあって、これまた珍しい顔ぶれ。ベース焼酎はキンミヤです。
ビール大手4社関連はもちろんしっかり用意。樽生はアサヒスーパードライ(マルエフのときもあります。)とキリンハートランドから選べます。とっても濃い!と常連さんお墨付きの角ハイボールは、メガジョッキでも500円と懐に優しいです。オヤジの二杯目がキャッチフレーズ、「バリキング」も飲めます。
各社瓶ビールは大400円、中360円、小200円と安くて充実しています。
取手工場醸造。爽やかな香りとドライなのどごし、バランスのいいスマートなビール「ハートランド」(300円)で乾杯!
サーバーのメンテナンスは酒販店ですからばっちり。安心して生が飲めるお店です。
角打ちのおつまみと言えば、やっぱりプロセスチーズ。6Pチーズ1個でビール一杯。黄金比(笑)
20円からの駄菓子・乾き物、100円の冷奴、140円から缶詰もあります。
日本酒はコップで230円。種類はさまざま。今日は隣り合ったお父さんに習って、私も高清水。製造量の多い蔵なので人それぞれイメージは様々ですが、私は好きな蔵のひとつ。冬、雪積もる中を一人取材に伺ったのはいい思い出です。
ぱりぱりとお煎餅をつまみつつ、お酒好きの皆さんと楽しい酒話。ささっと一杯ひっかけていく人もいれば、じっくりと友たちが来るのを待っている方など、使い方は様々。ただひとつ共通しているのは、皆さんとっても楽しそうにされています。
素敵な空間で心もほろ酔いになっていい気分。さて、そろそろお暇いたします。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
越前屋田中酒店
045-712-4666
神奈川県横浜市南区中島町4-87
9:30~21:30(水定休)
予算1,000円