九龍・尖沙咀「京笹」 駐在員も贔屓に通う。街一番の老舗大衆酒場。

九龍・尖沙咀「京笹」 駐在員も贔屓に通う。街一番の老舗大衆酒場。

日本を離れると、数日も経たずして日本食が食べたくなる筆者。海外の酒場事情を取材に行っているのに、気づけば日本食のお店を探しています。日本のチェーン飲食店の進出はこれまで訪れたどの国でも著しく、看板さえ選ばなければ中心街であればすぐに食べられます。

それでもやっぱり「せっかくだから…」という気持ちが生まれ、その地で長く親しまれている個店を探してしまいます。

香港の「京笹」は、そんな思いにぴったりの大衆酒場でした。創業は25年以上。香港九龍の日本食店で最も老舗だと言われています。

 

チムサーチョイ(尖沙咀)駅近くの歓楽街にあります。この一画は多彩な地元の雑貨屋や飲食店が集まる九龍最大の繁華街。向かいに香港島を眺めるビクトリア港に近く、ハイクラスなホテルも集中しています。ネオンがギラギラの目抜き通り「ネイザンロード」は九龍を代表する観光地です。

 

それでいて、大きな都市公園「カオルーンパーク」が尖沙咀エリアの3割ほどを占めていて、緑豊かな景観も楽しめます。新宿の街と新宿御苑のような関係によく似ています。

 

怪しさ満てんの路地。庶民的なヌードルレストランや、若者を集めるクラブ、ビール好きが集うクラフトビールスタンドなどが密集しています。

 

その中の一軒が、「京笹」です。蛍光カラーの派手なネオンの中で、落ち着きのある赤ちょうとんがホッとさせてくれます。

 

スタッフには日本人だけでなく日本以外のアジア系の方もいらっしゃいますが、ここは日本語が通じる世界。頭をフル回転して英語や中国語で飲み歩きをしてきたあとだから、安堵感からか、もう最初からいい気分。店長の横山さんは日本人。

 

「えっと、まずは生ビールから。」

おしぼりで手を拭きながら、いつもの感覚でいつものオーダー。そしてやってくる、いつものジョッキ。ビールは樽生、瓶ともにサッポロビール(HK$50台)です。といっても、日本産の黒ラベルではなく、海外展開のサッポロプレミアム。味はちょっと違うけど、やっぱり日本食には、日本の大手ビールが似合います。

 

乾杯!

他のテーブルからも聞こえてくるのは日本語。ここを教えてくれた方もそうでしたが、駐在員が贔屓に利用している「京笹」。あとからやってきた家族連れも香港在住の日本人のよう。典型的な日本の居酒屋ムードのお店ですもん。好きな人にはたまりませんね。

香港人と日本人の割合は7:3くらい。

 

今日のオススメ。お刺身は赤貝と鯵ですか。世界的な貿易都市であると同時に、漁業も盛んな香港。地元の食材も使われています。

 

みんな大好き、やきとりを筆頭に、うなぎ、手羽先、鮭やししゃも、いか焼き、揚げ物はさつまいもやコロッケがオススメのようです。だし巻き卵が人気。

金額はHK$70(約1,000円)前後と、日本の居酒屋感覚からするとやや割高。香港は物価がだいぶ高いので、これくらいが相場なのですが…

 

黒霧島などの焼酎はボトルで。サワー類は甘いものばかりで巨峰やライチ、カシスオレンジなどHK$48。

 

醤油さしや楊枝入れがまたなんとも。本格的といいましょうか(笑)

 

特製、神戸コロッケ(2個でHK$48)。神戸スタイルとのことで、神戸牛とは関係なさそう。ゴルフボールほどの大きさで、みっちりずっしり。

 

牛肉がたっぷり入っています。ソース味の揚げ物というだけで、もう十分に嬉しくなっちゃいます。

 

湯豆腐はなんとお鍋で登場。まるで酒蒸しのようにたっぷり蛤が入っています。ポン酢に浸し、おろし生姜や鰹節をふりかけて頬張れば、あぁいつもの味。

 

グランドメニューには書かれていませんが、お茶ハイもあります。濁りがあるあまり見かけないタイプですが、ちゃんと美味しい!

 

数人で訪ねてあれこれシェアして食べるもよし、久しぶりの和食を求めてひとり駆け込むもよし。日本国内の居酒屋にいるのと同じ感覚で、店員さんとちょっとした飲み屋トークができるのも、京笹の魅力でしょう。

九龍で飲んでいることをすっかり忘れて店の扉に手をかけます。どこでも移動できる未来のドアを手に入れたような気持ちになります。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

Kyozasa Restaurant(京笹)
+852 2376 1888
香港 Tsim Sha Tsui, Haiphong Rd, 32-34號, Po Fung Building
18:00~23:00(ランチあり・日祝は22:00まで・ほぼ無休)
予算HK$250