今日は中井の「うなぎ串焼き くりから」に来ています。西武新宿線沿線のノンベエさんにはおなじみの鰻串で飲めるお店です。
さて、鰻串の酒場というカテゴリーは杉並生まれの筆者には馴染み深いものなのですが、調べてみると地方ではあまり聞かない。東京は豚もつ焼きや焼鳥など串焼きが酒場の顔であり、鰻串もそのひとつなのですが、これは東京固有の酒場文化と言えそうです。
自由が丘、渋谷道玄坂、新宿思い出横丁など、主要な飲み屋街に一軒は鰻串の飲み屋があるのが東京です。中野にも川二郎という鰻串屋がありまして、そちらも大変素晴らしく、今回ご紹介する「くりから」のご主人が8年間修行をしていたお店です。
くりからのオープンは2013年秋。西武新宿線で高田馬場駅から2駅目の中井に誕生。
東京周辺の鉄道が続々と立体交差化され高架駅へと生まれ変わる中、西武新宿線は住宅街の中を縫うように走り、商店街に据え付けた駅は電車を降りればそこはもう商店街であり飲み屋街。
中井はいまでこそ大江戸線との乗換駅になりましたが、各駅停車しか停車しない典型的な西武線の小型駅。駅前は歴史を感じる細い路地がうねうねと広がり、小箱の味わいある大衆酒場が点在する素晴らしき飲みロケーションです。
駅前商店街の「くりから」。店名の由来は鰻を螺旋状に串打ちする「くりから焼き」から。もちろんくりから焼きが看板料理であることは間違いありません。
鰻屋という構えではなく、もつ焼屋のような庶民的な佇まい。2013年オープンといっても雰囲気は大衆酒場のぬくもりたっぷり。L字カウンターの席に着きまずは瓶ビールから。
ラガーの中びんが並ぶ光景は、日本中どこにいっても安心感がかるから素敵です。乾杯。
瓶がキリンラガー、生でハートランド。西武新宿線沿線、ハートランド率が最近いくぶん上がった気がします。ナショナルビール各社、がんばれ!
焼酎・割り材は安心と信頼の酒場甲類キンミヤ焼酎とホッピーとハイサワーの組み合わせ。ホイスにガラナにバイスとなかなか渋いチョイスです。
ここまで鰻で揃ったメニューも珍しい。看板料理のくりからが280円。短冊(正肉)が330円、まむし焼きが880円、鰻のもつ串が250円。鰻串だけで10種類、メニューから店主の想いが伝わってきます。肝刺し、バラポンズも珍しい。野菜串や箸休め、鰻のレバーパテなど酒場好きならばきっとこのメニューだけでビアタン一杯、ハイサワーのナカイチは進むでしょう。
バラポンズは鰻の骨の周りの部位。コリコリとした食感と爽やかな後味、そしてもちろんちゃんと鰻の旨味が口に残ります。ここに苦いラガーをきゅっと。
焼き物はなにはともあれくりから焼き。手間ひまかけた仕事を感じる鰻はどれも美味。タレはお酒と合わせてちょうどいい塩梅に整えているように思えます。
うなぎ料理屋といえば日本酒でしょう。くりからも日本酒は高清水が2合750円で米のふくよかな味と鰻はよく合いそうですが、こういう大衆鰻串ではやはり甲類で飲み進めたくなります。
わるならハイサワー、武蔵小山生まれのレモンサワーでキンミヤ濃いめで割っていい気分。
串は1本から注文可能。鰻串入門ならば「一通り」と頼むのが良さそう。写真は皮。店主の鈴木さんの経歴は鰻業界一筋、串の一本一本がとても丁寧なのは言うまでもなく、近所にあれば週2で通いたいくらい。
鰻とごぼうの相性がいいと最初に発見した人は偉い。ヒレゴボウは鰻の濃厚な脂をゴボウが吸って、相思相愛な関係。部位によって味付けが異なり、全部が甘タレでないというのも食べ飽きず楽しめます。
「一般的に高級なイメージの鰻がここではリーズナブルに楽しめる」
ただそれだけでなく、鰻のもつを巧みに使った職人技が最大の魅力です。カウンターに座れば目の前が焼き台になり、次々と焼き上げていく姿がお酒のおつまみです。
シメのうな丼を食べるもよし、ほどほどで階子するもよし。良い酒場です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
くりから
050-5592-5872
東京都新宿区中落合1-13-5
17:00~23:00(水定休)
予算2,800円