【閉店】亀戸「杉さく」 1977年創業。味と安さに定評あれど、一番は人情です

【閉店】亀戸「杉さく」 1977年創業。味と安さに定評あれど、一番は人情です

2017年1月15日

本日は亀戸の知られざる名酒場「杉さく」です。1977年開店、今年で創業40年を迎える老舗です。

いまでこそ、この街は安さをウリにする立ち飲み屋が増え、せんべろ酒場を飲み歩く人たちには、ちょっとした有名スポットとなりつつありますが、そもそもの亀戸の原点たる「杉さく」はあまり知られていないのではないでしょうか。

新しいお店を巡るだけでなく、街の文化たる老舗の暖簾を愛でて、通って、繋いでいくことも酒場好きならば心の隅に持っておいてほしいと思います。

 

大将は80代。代がわりはせず、現在も創業当初の雰囲気とコンセプトを大切に、亀戸の飲み屋街を赤ちょうちんで照らし続けています。店のコンセプトは「亀戸で二番目に安い」。大将の手料理と、トーク上手で現代っ子に負けない機敏な動きが素敵な女将さんが夫婦二人三脚で、変わらぬ空気を作り出します。

 

これぞ、大衆酒場といった内装。厨房側のカウンターは現在は使用していませんが、囲炉裏風の中央の大テーブルが素敵な「飲み場」です。雰囲気はどことなく、新宿の三丁目にありそうな感じ。ごちゃごちゃしているようでも清潔で、「あぁ、酒場が好き」と心の底から癒される感覚になります。

 

この異世界に紛れ込んだような雰囲気。2017年にして、ここは現在も昭和の空気がそのまま。

 

お客さんは最近は若い人も増えてきましたが、昭和の松竹映画にでてきそうな人が中心。店の雰囲気とあいまって、なぜかジーンとしてしまいます。

 

ビールはキリン。40年間ずっとキリン。キリンさん、ちゃんとよろしくね。大びんが一番搾り(IS)で450円。

こころなしか、一番搾りが1990年の登場当時の姿に見えてくる。(マニアなので・笑) 初代イメージキャラクターの緒形拳さんが「うまいが一番」って言っている感じ。あ、ビールがぬるくなりますね、乾杯!

お通しの板わさつまみに、昔ながらのビアタンからくいっと。

 

着席、フルサービスの酒場ながら、肴の安さが嬉しい。刺身が300円台、おつまみは多くが200円台。しかも、大将の手作りがほとんどです。

 

ビールは大びんが通常450円とそもそも安いですが、毎週木曜日はなんと350円になります。大びん350円なんて、利益の出ないご商売。女将さんが「みんなが喜ぶから。」と笑いながら答えてくれました。この気持ちをうけとめて、できるだけ利益がでそうな肴と合わせたいのですが、全部安い。

 

いまどき、こんな良心酒場は大変貴重です。焼鳥、名物の特大サバ、〆の焼きそばまで、どれもが懐かしく、食べたいものばかり。

 

一番高級な大えび3匹が480円。有頭で立派なエビ。味噌まで吸って、余韻が消えぬうちにビールや日本酒をくいっと飲んで、ふーっとひといき。

 

山芋千切りはお腹いっぱいでも箸が進み、なによりお酒がくいくい飲める一品。どこでも食べられるよーって思うかもしれませんが、この空間で食べるとまた違って感じられるというもの。

 

“春はあげもの”もいいけれど、冬でも揚げ物が食べたい。揚げ物にはハイボールで。女将さんも、ただハイボールねと言わずに、「富士山麓のハイボールだよ。」と言ってサーブ。富士山麓といえば、昨年売価が上がりましたが、杉さくは変わることなく350円を貫いています。氷少なくたっぷりの一杯。

 

ハイボールが一番合う肴について、一時間でも二時間でもしゃべり続けられますが、メンチは誰にとっても上位ではないでしょうか。フローラルな香りと肉汁の組み合わせ、炭酸と衣の口当たり。

メンチカツは日本発祥の食べ物。国産ウィスキーが一番合うのは間違いない。

 

最近、老舗の酒場で乾杯していますか。お店の人がお母さんに思える店はありますか。人情酒場に出会えていますか。

杉さくは、飲み屋は安さや味だけでなく、老舗酒場の「人」を魅力に感じる酒場です。

女将の漬ける手作り梅干し・赤かぶ、らっきょうをつまみにきゅっと一献いかがでしょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

杉さく
03-3684-9959
東京都江東区亀戸5-10-3
17:00~ (日定休・不定休)
予算1,500円