東京の酒場ファンにはお馴染みの晩杯屋。山の手の下町、武蔵小山から始まった立ち飲み、せんべろ特化型の立ち飲み店は、仕入れとオペレーションコストを徹底的におさえ、いわゆる「コスパ」のいいお店として一気に広がりました。
同社の金子社長と飲んだことがありますが、とても穏やかな方で、破竹の勢いで広がるとは思いもしませんでした。
武蔵小山からはじまり、大井町、大山、中目黒、大塚、祐天寺、大森、最近では高円寺にできたばかりですが、さらに新店が巣鴨にオープン。まさにとどまることない勢いです。
さて、巣鴨は駅の北側の歓楽街にオープン。両隣がピンクなお店というなかなかすごい物件です。この界隈、古くからの酒場も少しありますが、あまり飲み歩きでくるという場所ではなかったので、晩杯屋ができることで街の雰囲気が酒場寄りに変わってくれるかと期待をしています。
店構えはいつものスタイル。中が見通せるガラス戸、そしてちょうちん。
長いカウンターの内側がドリバ(お酒をつくるところ)で、冷蔵ケースにお刺身やマカロニサラダなどの冷蔵品が入っています。奥に揚げ台・焼台があるという構造。最近の晩杯屋の小規模店の基本配置といったところ。
ドリンクも他店と大きく変わりはありませんが、ビールはアサヒビール。他はほとんど一緒で、酎ハイが290円、割り材入の酎ハイ類が290円と相変わらず素晴らしく安い。
ホッピーのナカが220円ですが、ここのジョッキは500mlタイプなので、入っていないようにみえて相当濃いものが作れます。
それでは乾杯。ビールではなく今宵は酎ハイな気分。宝のゴールデンで乾杯!
宝ゴールデンとは、甲類焼酎に風味と色をつけた独特の焼酎。イメージは下町で愛され続けている色付きのチューハイ。「元祖ハイ」や「下町ハイボール」なんて名前で愛されているあれを手軽に飲めるように作られた画期的な飲み物です。
飲み物メニューは同時期にオープンの高円寺純情店とほぼ一緒。ラフランスのお酒や、マスカットカルピスチューハイなど、ビールメーカーのアサヒの関連商品がいろいろと目立ちます。稲妻コークってなんだろう。
割り材系で注目するところといえば、ハイスキーでしょうか。割るならハイサワーでお馴染みの博水社がつくるウィスキー風味のエキスをつかったハイスキー。ホイスのライバル登場か。
フード類のメニューはこちら。晩杯屋はセントラルキッチンを導入していますので基本メニューは一緒。ですが、武蔵小山本店でしか食べられない手間のかかったものや、大山店だけの浜焼きなど、実はちょっとずつ個性が出ています。
うーん、それにしても相変わらずのやすさ。ほとんどが100円台、晩杯屋各店を取材してきた私としては、もう慣れている品書きですが、初めて見る人はみんな「安!!」と驚いています。慣れって不思議ですね。
おつまみ薩摩(130円)はまるで田舎のキヨスクで買って電車でつまんだあの味。
晩杯屋のフライパン料理のなかで一番好きなのがこの納豆オムレツ(150円)。卵のとろみと納豆の粘りが混ざった独特の触感。外観はなんということのない、焼き方上手なオムレツなのですが、納豆で飲むのが好きな方はぜひ試してみて欲しいです。
店の数も増えて店作り、コンセプトもだいぶ取捨選択されてきて、いい意味で使いやすい、別の意味でどこに行ってもだいたい同じになってきた晩杯屋ですが、こういう割り材立ちをみると、いまもここがコテコテの大衆立ち飲みの延長にあるんだなとわかります。
ハイッピー、コダマのバイス、ハイサワーに丸眞正宗。お店の数が増えて、ビールメーカー系のアルコールが増えても、こういうところにはしっかりと、原点となった赤羽のいこいの血筋と、一軒目として店を構えた品川区・武蔵小山の香りが残っています。
※丸眞正宗は東京23区唯一の酒蔵で赤羽にあります。ハイサワーは武蔵小山、バイスは大田区の割り材でともに城南側酒場の定番です。
数が増えても店の作りはほとんど一緒。晩杯屋ができると街の飲食店の勢力図が変わるなんて言われていますが、選ばれるということはそれだけ魅力もあるということ。これまで、大規模チェーンで懇親会や忘年会などの行事関連の飲みしかしなかった人に、まずは晩杯屋にきて立ち飲みの魅力や、酒場のサードプレイス的な使いみちに気づいてくれるといいのかなと思います。
そして、その地域の既存店の皆さんも、そして晩杯屋も、両者がともに飲み屋街を盛り上げていって欲しいです。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
晩杯屋巣鴨北口店
03-6903-6289
東京都豊島区巣鴨2-4-6
予算1,800円