浅草は鰻の名店が多く、中には江戸時代から続く店もありますが、街の人が普段遣いする店もレベル高い。そのひとつが『さんしょ』です。ここも世間一般で見れば老舗ですが、なにぶん浅草では新しい方。家族経営でベテランのご夫婦が切り盛りされています。今回は、下町の日常を感じながら手頃な価格で極上の鰻を味わえる、浅草の地域密着店をご紹介します。
うなぎ問屋で培った目利きと家族経営の温かさ

つくばエクスプレス浅草駅・浅草六区からかっぱ橋方向へ少し歩いた路地に構える小さな鰻屋さん『さんしょ』。
店構えからわかる通り店舗は最近建てられたものですが、これは近くの旧店舗から移転してきたから。以前はお蕎麦屋さんのような親しみやすい佇まいでしたが、移転後も手軽さ・気軽さは変わりません。地元浅草っ子が贔屓にしている一軒。

鰻業界で50年のご主人が、千住のうなぎ問屋での修行を経て1985年にここ西浅草に開業しました。毎朝自ら問屋へ足を運び、その日使う分だけの生きた鰻を仕入れるという昔ながらの下町の職人魂が美味しさの理由でしょう。

店内は2名掛けのテーブルが並ぶシンプルな造り。新店舗の真新しさのなかに、長年夫婦で切り盛りしてきた下町らしい人情味が漂います。ご夫婦は秋田県十文字地域の出身で、横手応援拠店にも登録済み。故郷の食材を取り入れるなど、独自の工夫もお店の魅力にあふれています。
店名は、鰻に寄り添う香辛料から「覚えてもらいやすいから」と名付けたとご主人。地元の方々が普段使いで訪れる気取らない雰囲気の中、ゆったりとお猪口を傾ける大人たちの姿が印象的です。
絶品うな重と定番の地酒で満たされるひととき

まずは定番の地酒「越乃景虎 龍」のヒヤ(常温)をもらって、きゅっと一口。

お通しは「かぶとの佃煮」。なんとサービス(無料)とのこと。フカフカに柔らかく煮込まれており、骨までホロホロの仕上がり。しっかりとした鰻の旨味が日本酒の肴にぴったりです。

うな重は鰻のサイズや量によって「もみじ(3,300円)」「いちょう(4,300円)」「うめ(5,300円)」の3種類から選べる仕組みを採用しています。今回は手頃な価格ながら1尾まるまる楽しめる「いちょう」にしました。

注文から20分ほどで、待望のうな重が目の前に運ばれてきました。

鮮やかなお重をあけると、ふわっといい香り。

しっかりとした焼きの工程の途中で蒸しを入れているため、身はトロトロでふわふわの仕上がりです。

小骨がほとんどわからない程度まで磨かれていることがわかります。こういう手間をかけた鰻、嬉しいですよね。

箸を入れるだけで、ご飯までさっと届くほどの柔らかさに驚かされます。肉厚な身は余分な脂が落ちてすっきりとしており、繊細な余韻が心地よく口の中に広がる極上の品。そこへすかさず「越乃景虎」を合わせると、至福の時間に包まれること間違いなし。

あっさりとした醤油系にやや甘味を加えたコクのあるタレは、絶妙なバランスです。少し硬めに炊かれたお米に、タレと鰻から滲み出た旨味が混ざり合って格別の味わいに仕上がっています。ご飯だけでも日本酒が進むほどの美味しさを堪能できました。

セットの肝吸いは上品なかつお出汁がベースで、肝の鮮度の良さをしっかりと感じる一杯にホッと一息。

お新香にはウリが入り、ビール漬けの大根や白菜もよく漬かっていて、良い箸休めになります。

店名にもなっている自慢の「山椒」は、京都産のものを厳選し、浅煎りの実を石臼で挽いた自家製山椒とのこと。ピリッとした刺激と豊かな香りが、鰻の風味をさらに引き立ててくれます。鮮やかな色で、久しぶりに本来の挽きたて山椒を味わったように思います。
東京の食文化の奥深さを肌で感じる

女将さんとご主人の温かいお人柄も心地よく、浅草の日常を肌で感じられる一軒です。毎日仕入れる新鮮な鰻とこだわりの山椒、そして丁寧な仕事ぶりが揃って、この価格帯で味わえるのは嬉しいポイント。観光地の喧騒から離れ、地元で愛される確かな味を守り続ける姿勢に惹かれます。
ふらりと立ち寄って地酒を傾け、絶品の鰻で締める。東京の食文化はまだまだ奥が広いと実感させてくれる一軒です。




| 店名 | 浅草 うなぎ さんしょ |
| 住所 | 東京都台東区西浅草2丁目25−6 |
| 営業時間 | 11時30分~14時00分 16時00分~20時00 水木定休 |
| 創業 | 1985年 |
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