豊島区役所と一体化したタワーマンションがそびえ立ち、景色が激変しつつある南池袋エリア。その足元、東通り(あづま通り)から一本路地へ入ると、開発の波から取り残されたような静かな時間が流れています。b今回は、1959年(昭和34年)創業、家族経営で暖簾を守り続ける『そば処 まつや』をご紹介します。通し営業なので昼飲み難民の方も必見です。
変わらない「町蕎麦」の風景がここにある

時刻は15時過ぎ。ランチのピークを過ぎた店内は、テレビのニュースと厨房から聞こえる天ぷらを揚げる音だけが響いています。最近は中休みをとる飲食店が増えましたが、こちらは通し営業。遅い昼食をとる会社員や、私のように明るいうちから蕎麦屋酒を楽しみたい人間にとって、実にありがたい存在です。

店内は4人掛けのテーブルが4卓のみというコンパクトな造り。混雑時は相席が基本となりますが、この時間は先客が一人、静かに杯を傾けていました。

特筆すべきは、客席のテーブルです。移転前から使い続けているという屋久杉の一枚板。長い年月を経て磨かれた光沢と重厚感が、店内の空気を引き締めています。

壁を見上げれば、額装された黒札の品書きが整然と並びます。達筆な文字で書かれた「かつ丼」「天ぷら」の文字。この黒札と屋久杉のテーブルがある蕎麦屋は、経験上、期待を裏切りません。
壁には相撲の番付表や、かつてサッカー日本代表監督を務めたフィリップ・トルシエ氏のサインも。近所の常連さんに愛され、出前の電話が鳴り止まない、活気ある「町の蕎麦屋」の姿がここにあります。
取材を進めていると、ご主人から「うちはNHKのサラメシでも取り上げられたんだよ」と。気さくにお話いただき、楽しい時間になりました。
濃い目のつゆとヱビスビール、至福の蕎麦前

席につき、まずはビールをお願いします。アサヒスーパードライもありますが、ちょっぴり贅沢にヱビスビールの中瓶(600円)を選びました。

トクトクと手酌でグラスを満たし、まずは喉を潤す。ビールについてくる新香をつまみながら、品書きを眺める時間は最高です。

それにしてもメニューが多い。町蕎麦はメニューが多ければ多いほど良いというのが私の考えです。

まずは、蕎麦屋酒の定番、「板わさ」(450円)を注文。飾り気のない盛り付けですが、それで良いのです。弾力がしっかりとした上質な蒲鉾。わさびを少しつけていただけば、鼻に抜ける爽やかな辛味と魚の旨味が、ビールの苦味と調和します。

もう少し飲みたくなり、お酒を切り替えます。灘の銘酒「剣菱」の燗酒(500円)を一本。

合わせるのは「海老天ぷら盛り」(700円)。大根おろしをたっぷりつけてくれるのも嬉しい!

立派な大海老が一本、どんと真ん中(まん真ん中)に鎮座し、ナスなどの野菜天が脇を固めます。

揚げたての衣はサクッと軽く、温かいお酒が進みます。

さて、いよいよ本日のメインディッシュ、常連客の多くが注文するという「カツ丼」(1,000円)の登場です。

お膳には、カツ丼、お新香、そしてなぜかそば猪口。醤油と出汁の香ばしい湯気が立ち上ります。

特徴的なのは、その色味の濃さ。蕎麦の「返し」をしっかりと効かせた、東京の蕎麦屋らしいカツ丼です。具材はカツと卵、そして玉ねぎのみという潔さ。

箸を入れると、衣が簡単にお肉から剥がれてしまいますが、これが『まつや』の流儀。煮汁をたっぷりと吸い込んだ衣は、それ自体が極上の酒の肴になります。水っぽさはなく、米の一粒ひと粒まで旨味が染み渡り、箸が止まらなくなります。

セットのそば猪口に口をつけて驚きました。お吸いものではなく、温かい蕎麦のつゆです。町中華の炒飯に中華スープがつくことはありますが、蕎麦屋でカツ丼に蕎麦つゆが添えられるのは珍しい。出汁の効いた温かい汁が、酒と脂で満たされた胃袋に優しく染み渡ります。

こちらは、ざるそば。白く細い麺は喉越しが良く、甘めの黒いつゆを少しだけつけて手繰れば、口の中がさっぱりと整います。
都会の隙間で、心安らぐひとときを
食事を終える頃には、夕方です。仕事を終えたお客さんが少しずつ増えてきました。家族連れやグループが来れば賑やかに。出前の電話もひっきりなしにかかってきます。地域密着で評判の店ですね!
巨大ターミナルのすぐそばにありながら、ここだけ昭和から時計が止まっているかのような錯覚を覚えます。
通し営業なので、少し遅めの昼食や、早めの夕食を兼ねた一杯にも最適です。
店舗詳細




| 店名 | そば処 まつや |
| 住所 | 東京都豊島区南池袋2丁目10−5 |
| 営業時間 | 11時00分~20時00分 祝は17時00分まで 日定休 |
| 創業 | 1959年 |
![Syupo [シュポ]](https://syupo.com/wp-content/uploads/2022/01/syupo-logo.png)
