下関「三枡」 わざわざ行く価値あり!街を代表する老舗の名酒場でふくに酔う


下関は対岸の門司と並び、海峡の街として栄えた港湾都市です。現在は鉄道、道路ともに結ばれ、小倉を中心とした北九州都市圏と一体化しています。鉄道こそ下関を経由していますが、道路交通は街の中心部を通らず門司につながっていて、下関はかつての栄光のまま時間が止まったような雰囲気があります。

交通の要衝として、多くの人と物、そしてお金が集まった下関。駅前には戦後の闇市を起源とした商業集積地があり、そこには独特な雰囲気の飲み屋が連なり、毎夜多くのノンベエが集まります。

 

関門ノスタルジーを感じる建物のひとつに下関駅がありましたが、2006年の火災で焼失。現在は立派な商業施設一体型の新駅舎が街の玄関です。

 

駅前のホテルから見下ろす駅前の商業地。入り組んだ路地と中小の建物が無秩序に並ぶ景色は、ある意味で復興の街ならでは。山陽新幹線、関門橋の開通でメインルートからはずれた現在は街に寂しさを感じますが、観光としてはノスタルジックで良いかもしれません。

 

この下関駅前で大衆酒場といえば、「三枡」は外せません。1952年(昭和27年)創業の酒場で、駅前の一等地にありながらのんびりとした時間が流れる、昔懐かしい佇まい。

 

お店へは、この細い隙間へ入っていきます。近代的な駅から直行したならば、気分はタイムトンネルです。

 

酒場の入り口といえば木製の扉をイメージしますが、ちょっと不思議なガラス扉。どこかの民宿みたい。

 

広い店内にはゆったりとした配置で、L字カウンターと小上がり。二階もあるそうですが、現在はあまり使用しないそうです。昔は港湾、倉庫、鉄道などの関門ならではの労働者で賑わったそうで、店の随所からも当時の賑わいを感じます。もちろん、いまはいまで落ち着きがあって居心地がいいのは言うまでもありません。

 

品書き。魚はすべて天然だそう。養殖を使わないのは初代のご主人からのこだわり。現在は女将さんと息子さんがご主人の意思を守ります。鮮魚は山口は萩から、ふぐは下関のとらふぐです。下関はかつては鯨漁で潤ったくじらの街。現在も鯨類科学調査船団入出港の街として鯨は身近な存在です。品書きにもくじらの文字。

刺身のふかゆびきの「ふか」はサメのこと。かさごにこのしろに、魚貝の充実が港町の酒場らしさを一層引き立てています。

 

ビールはずっとサッポロビール。これは、対岸の門司にサクラビール工場(のちにサッポロビール九州工場)があったことから。

 

60年続く名店のカウンターに、変わらぬ星が輝きます。乾杯!

 

食べたいおつまみは色々。カウンターでしっぽり飲むもよし、数人でシェアしていろいろ食べ比べるのも楽しそうです。鯨煮(600円)は分厚く噛むほどに旨味が滲む美味な一品。乾いているようで、実はジューシー。

 

天然とらふぐのふくちりが1,000円という手軽な値段にも惹かれますが、ここはやはり三枡の名物「ふくせごし」を頂かなくては。ふぐさしは1人には多く、ひとり酒ならばなおさら「せごし」がおすすめです。福が来ますようにと、「ふく」と書きますが、読み方はふぐ。

その名の通り、ふぐを背を越してぶつ切りにしたもの。もちもち、噛むごとに甘さと上品な旨味が広がり、風味付けにしたポン酢が味を〆る。ふぐ刺しよりもいいんじゃないかと思うほど美味。

 

山口市嘉川の金光酒造がつくる詩情の酒「山頭火」。緑の一合瓶が可愛い。普通酒ながらふくよかな味で、ふぐの旨味と調和するお酒です。

 

笑顔がチャーミングな女将さんがお店のこと、街のことを教えてくれました。萩の近く、山陰本線の沿線で生まれ育った女将さんは、地元の魚を下関に配達する流通の業者さんから、「下関にいい男がいる。」と教えられ、いざ嫁いでみたら飲食店だったそう。最初は水商売なんて…と思っていたそうですが、代わりゆく時代の中でがむしゃらに働き続けていたら、次第に仕事が好きになり、いまでは飲み屋の女将でよかったとつくづく思っているのだそう。「下関は、人も物も結ばれる素敵な街よ」という言葉が心に響きました。

酒場もまた、交通の要衝だった下関という街が生んだ縁で続いています。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

三枡
083-223-8608
山口県下関市竹崎町2-13-11 三枡ビル
15:00~23:00(お盆・正月休み)
予算2,500円



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


こちらの記事もどうぞ



«