キリンビールをはじめ、東北のブルワリーや飲食店が手を取り合い、とれたての国産ホップでつくる今だけのビールが発売されています。目的は国産ホップの魅力を伝え、生産者を応援すること。生産地、メーカー、そして飲酒シーンまでを密着取材しました。東北でしか飲めない特別な生ビールもご紹介します。
(タイアップ/キリンビール株式会社)
國酒といえば、日本酒、本格焼酎、泡盛、みりんですが、酒類製造量では2,631,088kl(令和4年製成数量 国税庁 統計情報より)を誇るビール(発泡酒を含む)が最大であり、私たちにとって最も身近なお酒です。
日本のビールづくりは明治以降、欧米の技術を取り入れてスタートしました。ビールの原料は主に大麦とホップで、大麦は北海道から沖縄まで広く生産されています。もうひとつの原料『ホップ』は寒冷地での栽培が適しており、ビールづくりの拡大に伴い、東北や北海道を中心に栽培面積が拡大しました。ですが、現在私たちが日常的に飲んでいるビールに含まれている国産ホップの割合は、残念ながら非常に少なくなっています。
ホップはビール特有の苦みと香りを生み出す味のビールの魂です。なぜこれだけ親しまれているビールの原料の国産比率が減少してしまったのでしょうか。
ホップの産地として知られる岩手県遠野市では、ピーク時と比べ栽培面積は約1/6まで減少しています。日本全体では、この30年で約1/9まで減ってしまいました。農家の高齢化、生産地の過疎化、設備の老朽化、欧米と比べ小規模で生産性が低い…。現代の日本の農業が抱える様々な問題であり、ホップも例外ではありません。
日本産ホップのビールが飲めなくなる。そんな未来を回避するために、いま、ブルワリーや飲食店がより一層力を入れて国産ホップの魅力を発信しています。ビール好きの筆者も、日本の料理と日本産ホップでつくるビールのペアリングをいつまでも楽しみたいので、業界の取り組みを取材し続けます。
目次
ホップは収穫後すぐに出荷できるわけではない
まず初めに、ホップがどのように収穫され、ビールの原料になるかをご紹介します。名前は聴いたことがあるけど、植わっているホップは見たことがないという方が多いのではないでしょうか。
ホップはツル性の植物 小学生の頃育てたアサガオを思い出す
ホップを植える体験をさせてもらったことがありますので、その様子をご紹介します。こちらが畑に植える前のホップの幼樹。
ショベルで15cmほど穴を掘り、根が隠れるまで入れて土を被せます。このままでは倒れてしまうため、ツルを誘引紐に巻き付ける必要があります。
植えた姿がこちら。春先に植えました。ホップの収穫時期は8月下旬ですが、植えた年のホップは収穫できないそうです。翌年、もしくは翌々年になってはじめて収穫できるようになります。
収穫は生産者さんたちが総出で高所作業
さて、こちらは場所が変わって岩手県遠野市。8月下旬、ホップの収穫が最盛期を迎えています。荷台部に作業台を設置した専用機材を使い、5~7mほどはあるワイヤー(誘引紐の先端)まで伸びたホップを切り離していきます。
こうして収穫されたホップは、加工場へ運ばれ、ツルと葉から毬花だけを取り出す機器に取り込まれていきます。
機械を通った先、たくさんの毬花が流れるベルトコンベア。
毬花の中には茶色く変色したものや、機械で分別できなかったツルや葉っぱが僅かに残っているため、ここで生産者の皆さんの手で選別を行います。
長い月日と、たくさんの生産者の皆さんの苦労の末に完成したホップがこちら。ビール工場見学やパッケージで見たことがあるカタチですね!
通常は、ここからさらに乾燥させてペレット状に加工し、容積圧縮とともに長期保存ができるようにします。ビールは年間を通して製造されていますので、生のホップを使うことは通常ありません。
ただし、11月に出荷が開始された『一番搾り とれたてホップ』だけ(※キリンビール製品として)は違います。
このホップをそのままトラックに積み込み、ホップ加工場へと発送されます。文字通り「とれたて」なんです。だからこそ、農家の皆さん、キリンの皆さん、そして生産地である東北の飲食店の皆さんの想いはより強いのです。
ホップを受け取ったビール工場では
こうして、生産者さんからバトンを受け取ったキリンビール仙台工場。通常のビールでは機械でペレットの投入が行われていますが、『一番搾りとれたてホップ』は違います。収穫後、24時間以内に凍結。これを細かく砕いた粉末状態です。そのため、点検・確認用の蓋より袋から直接投入しています。
こうして、一番搾り麦汁のなかに入ったホップは、毬花の芯の部分にある黄色い樹脂「ルプリン」が溶け出し、みずみずしく華やかな香りのビールを生み出します。
酵母を加え、麦汁の糖分がアルコールと二酸化炭素に変わり、熟成すること数週間——。
※『一番搾りとれたてホップ』は仙台工場のほか、北海道千歳工場、横浜工場、神戸工場、福岡工場でも製造されています。
同じホップでもこんなに味が違うの!?
2024年11月。キリンビール仙台工場、そして2013年11月よりスタートした東北魂ビールプロジェクトに参画する11の醸造所の皆さんがつくった、遠野産とれたてホップを使用したビール(一部、酒税法上の分類は発泡酒)が発売となりました。
※東北魂ビールプロジェクトは、普段ライバル同士のブルワーが切磋琢磨し品質を高めることを目的として活動。2017年11月よりキリンビールも協力。
『一番搾りとれたてホップ』の発売日には、各醸造所の皆さんも集まり、JR仙台駅のコンコースにて大々的に発表会が開催されました。
『一番搾りとれたてホップ』は、言わばビールの新酒です。今年とれたホップを使用しているため、その味は毎年のホップの出来に影響されます。ボージョレ・ヌーヴォーのように、毎年の味の違いを楽しむビールなんです。
そんな毎年の味の違いに加えて、同じ「とれたてホップ」を東北魂ビールプロジェクトのメンバーが様々な製法で使用したクラフトビール(一部、酒税法上の分類は、発泡酒)も登場。遠野ホップの楽しみの幅がより広がりました。
飲み比べてみましょう!ということで、まずはキリンビール仙台工場長の北村さんから、『一番搾りとれたてホップ』のご紹介を。
調和のとれた飲みやすい味わい、遠野のホップ畑で見た元気なホップの姿が思い出される味です。夏の遠野の香りがしました。
キリンビールは毎年ピルスナー製法ですが、東北魂ビールプロジェクトメンバーの皆さんは、副原料の違いも含めて千差万別。試飲会(関係者限定)まで、飲み比べていなかったというブルワーの皆さん。意見交換しながら、とれたてホップの美味しさを満喫されていました。
普段、ペレット状のホップのみで製造されている醸造所がほとんどですから、粉末状のとれたてホップは製造上、工夫が必要だったと皆さん話されていました。
各醸造所の製法と原料の違いはこちら
- いわて蔵ビール:IPA(麦芽・とれたてホップ)
- NOYMOND BREWING:Session IPA(大麦麦芽・とれたてホップ・カラギナン)
- 遠野醸造:ペールエール(麦芽・とれたてホップ・コリアンダー)
- BrewBeast Brewery:Single Hop IPA(モルト・とれたてホップ・イースト・アイリッシュモス)
- Ishinomaki Hop Works:ペールエール(麦芽・とれたてホップ・水あめ)
- Black Tide Brewing:Session IPA(麦芽・とれたてホップ)
- 秋田あぐらビール:IPA(大麦麦芽・とれたてホップ)
- HOPDOG BREWING:アメリカンウィートエール:麦芽・小麦・とれたてホップ・アイリッシュモス
- 田沢湖ビール:IPA(麦芽・米・とれたてホップ)
- 米沢ジャックスブルワリー:レッドエール(麦芽・とれたてホップ・ハーブ)
- 福島路ビール:フルーツビール(果汁[もも・ビタミンC]・大麦・麦芽・とれたてホップ)
- キリンビール:ピルスナー(麦芽・ホップ)
農家から醸造所、そして居酒屋へ
8月の収穫から始まったホップのバトンリレー。農家さん、加工場の皆さん、キリンビール仙台工場をはじめとした醸造所の皆さん、その先にいる酒類卸や酒販店の皆さん、物流を支えるトラックドライバーや鉄道マンの皆さん。大勢の人々の仕事の結果が、いま、居酒屋に届いています。
『一番搾り とれたてホップ』の缶と瓶は日本全国で発売されています。いま、多くの居酒屋で見かけるビールですが、ここはあえて、産地でもある東北で飲んでみてはいかがでしょう。
東北で飲むべき理由(塩見なゆの考え)
- 東北のホップでつくったビールだから、東北の料理と合わせたい
- お店の人の『一番搾りとれたてホップ』愛が強い
- 大樽に詰めた『一番搾りとれたてホップ』の樽生ビールが飲めるのは東北だけ(期間限定)
仙台の東一市場で1993年から営業する『菊水』
仙台をはじめ、東北の各地には『一番搾りとれたてホップ』に強い想いを持つ酒場がいくつもあります。今回は、そのひとつである仙台・東一市場の名店『菊水』を訪ねました。
盛岡の名店として知られた「菊水」(現在は惜しまれつつも閉業)の親戚で、和食修行を積んだ加藤 勇さんが開いた酒場です。以前Syupoでもご紹介しておりますが、仙台の飲み屋事情を話す上で外すことの出来ない名店です。
一階は親方(いわゆる酒場の大将の仙台での呼び方)の話を聞きながらお酒が楽しめるカウンター席。二階は座敷があり、近隣の食通が宴会を開いています。
加藤さんは盛岡のうまれ。奥さんは遠野の出身。さらに趣味の渓流釣りで遠野を訪れることも多いということで、加藤さんの『一番搾りとれたてホップ』への想いは相当なもの。なんと、発売日前夜に店内の既存のビール(ハートランド)を飲み切るという集まりを催されているそうです。
発売日当日にお酒屋さんから届けられた『一番搾りとれたてホップ』をつなぎ、初日から提供する。ペアリングとしてご提案頂いた料理は、炭火の香ばしさがビールを進ませる「生ラム炭火焼」。
1993年のオープン当初から続く人気メニューで、遠野の精肉店「あんべ」から仕入れたラム肉を、あんべの特製タレと藻塩でいただきます。
『一番搾りとれたてホップ』は東北の食材と相性がいいと話す加藤さん。あれもこれも食べたいと悩む私に、宮城の穴子を提案してくれました。「こちらです」と見せてくれた穴子は想像以上の大きさ。
これを丁寧に炙ることで、脂がじんわりと滲み出し焼き目がぱりっとした仕上がりに。柚子胡椒をわずかにつけるだけで十分。甘みとコク、もうたまりません。
これからの季節、旬を迎える牡蠣との相性もぴったり!
ビール専門店でもとれたてホップ「仙台野菜とクラフトビールの店 amnt」
いわて蔵ビールなど東北の醸造所を中心としたクラフトビールを常時6種類ほど揃える、カフェ風のビアバー「amnt」。仙台フォーラス地下にあった「amnt・Fbase」が、2024年春に移転オープンしたお店です。
まだ新しいものの、近隣で働くビールファンや、旅行者、のんびりとビール片手に夕食を楽しみたいお一人様で賑わっています。
クラフトビールのブルワーの皆さんも飲みに来るお店。実は営業時間は午前11時からと早く、お昼休みなく通しで営業しています。仙台の町中でアットホームな雰囲気の昼飲み処をお探しならばぜひ!
仙台駅の駅ナカで郷土料理を楽しむならば『ミヤギノ純米酒センター シマウマ酒店』
JR仙台駅一階の「tekute dining」にある中華つまみ系と宮城の郷土料理を揃えた郷土居酒屋。仙台市内で「シマウマ酒店」や「シマウマ大飯店」などを展開する飲食企業の新店舗です。
四川麻婆豆腐や手羽先五香粉といった皿中華と、仙台せり鍋、石巻金華さばのミヤギノ酒粕漬焼きなどのご当地料理、全く異なる中華と宮城料理をぎゅっとまとめたおもしろいコンセプトのお店。駅ナカ(改札外)で1時間あったら、さくっと土地の味や中華でお腹が満たせるというのがポイント。
お酒は「純米酒センター」を冠している通り、伯楽星や阿部勘、萩の鶴に勝山、澤乃泉など常時県内25蔵のお酒が用意されており、コップ一杯750円均一で楽しめます。
ビールは、宮城県内唯一の大手ビール工場であるキリンビール仙台工場のビール提供にこだわり、シーズン中は『一番搾りとれたてホップ』が注がれます。
名物は「本日の塩たたき」。お客さんの前で焼き上げるというインパクトある一品。この日は宮城のカツオです。
たっぷりのネギに石巻産の塩をふりかけて出来上がり。大蒜をつけて頬張り、余韻にビールをぐっと。新幹線の発車15分前にお会計しても余裕の距離。日帰り出張の帰りでも便利に使えそうですね。
飲むこと、食べることでできる地域活性化
秋・冬の東北には、たくさんの季節限定の美酒・美食があります。日本酒の新酒、セリ、牡蠣、ハタハタ、鮭…。この時期だからこそ、東北へ飲みに行きませんか。そして、東北限定の一番搾りとれたてホップの生ビールをぜひ味わってみてほしいです。さわやかな風味が東北の冬のごちそうと大変よくマッチします。
ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転。お酒は楽しく適量で。妊娠中・授乳期の飲酒はやめましょう。のんだあとはリサイクル。