1890年2月25日誕生、東京発の世界的なビールブランド「ヱビス」が、誕生以来、130年守り続けてきた麦芽とホップ100%のお約束を破り、副原料「オレンジピール」を入れた新商品を発売します。商品名は『ヱビスオランジェ』。缶だけでなく、主に飲食店向けの瓶、ヱビスバーでは樽詰も発売されます。
(取材協力:サッポロビール株式会社)
ヱビスは挑戦するブランド
サッポロビールは設立の経緯もあって、サッポロブランド(黒ラベル・サッポロラガーなど)とヱビスブランドの2つの看板ブランドを扱ってきました。
ヱビスといえば「ちょっと、贅沢なビール」のキャッチコピーとともに、元祖プレミアムビールとして圧倒的な地位を維持してきました。ですが、ビールの飲み方の多様化によって、ヱビスのポジションも変化。近年は、「ひとりひとりの、彩りある時間を創り続けていく。」をテーマに、バリエーション豊かなビール造りにチャレンジしています。
「最近のヱビスはいろんな味を出しすぎている」
筆者もそう感じることがありましたが、実はヱビスビールの液種バリエーション拡大は今に始まったことではありません。
ヱビスビールはビールの本場・ドイツのビールづくりを参考に、ヨーロッパに負けないビールの味に挑んできたビールです。また、ヱビスビール発売から数年後には、黒ビール(現在のヱビス プレミアムブラック)も発売するなど、当初から複数の液種が製造・販売されてきました。近年は、ヱビスマイスター、琥珀ヱビス、ヱビスプレミアムエールなどのラインナップがあり、ヱビスといっても味は様々。
ヱビス酵母を使い、麦芽100%のピルスナー。それがヱビスビール。ですが、それはスタンダードなヱビスビール(ゴールドヱビス・金ヱビス)の話です。
ヱビスブランドを広くみた中でのアイデンティティは、「厳選した材料でこだわり抜いて作るワンランク上の味」であることだそう。
2023年10月11日に全国発売する『ヱビスオランジェ』も、そうしたヱビスの軸に則って開発されたものと言います。
ヱビスオランジェの味は?
ヱビスオランジェは、ヱビスビール内の新ライン「CREATIVE BREW」の第二弾として登場するビールです。定番のヱビスビールや、ヱビスプレミアムブラックとは違い、期間限定で個性派のビールを作ろうというカテゴリーで、サッポロビール社の若手醸造家:有友 亮太氏が中味開発を担当しています。
2021年からヱビスの開発を担当している有友さんは、2024年に開設予定の恵比寿ガーデンプレイス内醸造所「YEBISU BREWERY TOKYO」の責任者にも就任予定。いま、サッポロビールで注目されている人物のひとりです。
さて、こうして挑戦するヱビス、有友さんが醸造技術責任者として送り出す第二弾が、まさかのオレンジピール(副原料)入りヱビスです。従来のヱビスがこだわってきた麦芽100%ではなくなることで、サッポロビール社内からも「ついに!?」などの意見があったといいます。
オレンジ香る濃厚な味の『ヱビスオランジェ』。数多くのオレンジピールを試して、フルーティーなカリフォルニア産にたどり着いたそう。また、麦芽の一部に小麦麦芽を使うことで飲み飽きない味を狙ったそうです。
ベルギーのホワイトビールではオレンジピールとコリアンダーシードの組み合わせがポピュラーですが、オランジェではあえてコリアンダーは使用しなかったとのこと。柑橘系の香りを持つカスケードホップをもちいるなど、随所に有友さんの思う「ヱビスで挑戦するビールとは?」という考えの答えが詰め込まれているように感じました。
上面発酵でコクのある味わい。華やかな香り、そして液の色合い的にも秋から年末にかけてのイベントと相性が良さそう。大手ビールメーカーらしく、食事との相性のよさもこだわりポイントのようで、ローストビーフやタレ味の焼鳥と合うとのこと。フルーツソースをつかった甘味系の味付けと合わせたい!
家庭向けの缶、飲食店向けの中瓶と、ヱビスバー全店及び恵比寿駅改札内「TAPS BY YEBISU (タップス バイ エビス)」では、期間限定で樽詰の生ビールも提供予定とのこと。
香り、コク、余韻の豊かさは確かにヱビスブランドにふさわしいビールです。今後、酒場や酒販店、量販店などに並ぶと思いますので、気になる方は一杯試してみてはいかがでしょう。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)