魚好きが中野で飲むならば、選択肢に欠かすことの出来ない老舗がいくつかありますが、新進気鋭の『中ちゃん』もハマる人は多いと思います。10席ほどの店で、店主一人で切り盛りする酒場。刺身は品数豊富でボリューム満点。1,200円の刺身盛り合わせは、儲けがでるのか心配になるほどです。
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元寿司職人の大将が独立してはじめた、小さな酒場
居酒屋だけでも約250軒がひしめき合う中野駅周辺。中野ブロードウェイや中野サンモール商店街のイメージが強いかもしれませんが、アーケードから一歩入れば、そこには巨大な飲食街が広がっています。
お隣、新宿の混沌とした顔ぶれと違って、中野の歓楽街は「食」というベクトルで統一しているようなムードがあります。
1889年(明治22年)に甲武鉄道 中野駅(現在のJR中野駅)が開業した頃は原っぱだった駅前は、大正時代には商店街が形成され、隣接する日本軍施設とともに発展してきました。軍事施設は戦後、警察大学校に姿を変え、21世紀初頭まで巨大な警察施設とともに中野の街は歩んできました。現在の中野の歓楽街が持つ、比較的健全に「酒・食」にを楽しむ雰囲気は、そんな歴史背景も影響しているのではないでしょうか。
外観
老舗の底力を感じさせる美味しい居酒屋が多いのですが、近年誕生した店も負けていません。今回ご紹介する北口の裏路地にある『中ちゃん』も、「食」の中野のポテンシャルの高さを感じせる1軒です。
店主が中内さんだから、店の名前は『中ちゃん』。寿司職人の修行されていた方で、2016年9月に『中ちゃん』を開業されました。
カウンター10席、奥に4人テーブル1卓のコンパクトなつくりで、お客さんと店主の一体感が強いです。目の前でつぎつぎと盛られていく料理を眺める、料理番組をみるようなライブ感が醍醐味でしょう。
品書き
お酒
大樽生ビールはキリンハートランド:550円、瓶ビールはサッポロラガー:600円。チューハイ類は、プレーン:400円、ウーロンハイ:400円、レモンサワー:400円、クラマト割り:550円。本格焼酎(麦・意味):550円、ハイボール:550円。
地酒はホワイトボードに書かれており、取材時は東洋美人(純米吟醸):950円、佐久の花(純米吟醸):950円、豊盃(純米吟醸):950円、酔鯨(純米吟醸):950円、出羽桜(吟醸):950円、月の井(純米):950円、浦霞(純米):950円、船中八策(純米):950円、五橋(純米吟醸):950円、鍋島(純米吟醸):1,200円。
本日のおすすめ品
この日は、本日のサービス盛り:1,200円、千葉県産 真いわし刺身:500円、愛媛県産 真だい刺身:500円、富山県産 ボイルホタルイカ:500円、くじら刺身:700円、和歌山県産 天然生本鮪赤身刺身:650円、茨城県産 平目刺身:600円、三重県産 天然桜ぶり刺身:550円、長崎県産 真あじフライ2尾:500円、人気 うなぎ蒲焼き:880円。
最新の品書きは日々Twitterで発表されており、直近では黒そい刺身:600円、金目鯛刺身:600円、真穴子白焼き:650円、めひかり塩焼:600円などがあり、季節や水揚げで大きく変わります。それでも、全体的にとってもリーズナブル!
定番メニューなど
浅〆真あじ刺身:500円、銀鮭塩焼:500円、いか塩辛:400円、紅鮭すじこ:550円、いぶりがっこ:480円、オクラ漬け:500円など。
頼み過ぎにご用心!?あれも、これも、食べてみたくなる
キリンハートランド(550円)
冷蔵庫に目いっぱい詰め込まれた一升瓶に目が行きますが、酒場の一杯目はやはりビールから。中野に本社を構えるキリンビールの樽生が用意されています。ジョッキと異なり、銘柄はキリンハートランド。状態抜群の一杯が嬉しいです。それでは乾杯!
サッポロラガー中瓶(600円)
ジョッキをグッと飲み干して、続いて瓶ビールを。酒場に似合う現存する日本最古の銘柄、赤星こと「サッポロラガー」です。ビヤタンを満たして、チビチビといきましょうか。
お通し
日々変わるお通しですが煮魚系が多いようです。この日は鮪のあら煮。血合いの部分が含まれているのであら煮と呼んでいますが、上品な味で実に美味。脂がのっていて口の中でホロホロと溶け広がります。
豊盃 純米吟醸(950円)
美味しい魚を前にすると、欲しくなるが日本酒です。地酒はほとんどが950円均一なので、値段ではなく銘柄から気になるものをチョイス。家飲みでは購入する機会が少ないハイクラスな特定名称酒が揃っています。
今回は青森・弘前に思いを馳せて、三浦酒造の豊盃を選びました。繊細な甘さがふんわりと香りが広がります。
サービス刺身盛り(1,200円)
サービス刺身盛り。刺身三品が盛られた豪華な一品。盛り合わせがない日や、悪天候サービスのミニ盛り合わせなどもあるようです。内容は日々変わるので当日ホワイトボードをチェック。
この日は愛媛の真鯛、千葉の真いわし、そして旬のホタルイカという内容。普通の刺盛りの数倍はある量の多さに圧倒されますが、人気の理由はなによりモノの良さです。お客さんも、旬の魚を楽しみにしていて、「入梅イワシが美味しいね」など、”魚喰い”な会話に花が咲いています。
確かに、このイワシはめったに出会えないほど立派ですし、ものすごく脂がのっています。鮮度の良さは言うまでもありません。鯛もホタルイカもぷりっぷりです。
緑茶ハイ(400円)
常連さんが数名、緑茶ハイをリピートされていたので、こちらも気になっていただきました。濁った抹茶風で、甘さとほんのりとした苦味がクセになります。ここでご主人の経歴を思い出しました。
「あ、お寿司屋さの緑茶ハイだ、これ」
真あじフライ(500円)
カウンターメインで、店主一人で運営というと、どうしても「会話メイン」の店になりがちです。しかし『中ちゃん』を訪れる常連さんは、目的はなによりも魚料理という感じで、次々と注文されています。
そんな皆さんの間で、この日の人気は九州産真あじのフライ。大ぶりで美味しそう!こちらもお隣さんと注文のタイミングを合わせてオーダーします。
三枚におろした肉厚な鯵をサクっと揚げ、特製タルタルソースを添えて登場しました。熱々だから美味しいというのは当たり前ですが、鯵の身は驚くほどジューシーで、上品や甘さがじゅわっと広がります。
ソース、しょうゆ、そして付け合せのタルタルと味を変えながら、あっという間に食べきってしまいました。
魚好きならば一度は覗いてみてはいかがでしょう
決まったメニューがなく、品書きは日々変わっていきます。本記事で紹介したり料理や盛り合わせはないかもしれません。最新の情報はお店のTwitter(https://twitter.com/sake_nakachan)で毎日公開されるホワイトボードをご確認ください。
お客さんは若い方が中心です。美味しい魚が食べたい!という方は覗いてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 地酒屋 中ちゃん |
住所 | 東京都中野区中野5-53-8 |
営業時間 | 17:30~22:00(日祝は17:00~・不定休) |
開業年 | 2016年 |