彦根城下で昭和3年から続く、家族経営の店『はやの食堂』は、昼飲み処としてもオススメ。店の歴史の分だけ改築を繰り返してきたパッチワークのような建物が素晴らしい。彦根城への観光ルート上にありますが、お客さんは100%地元の皆さんです。さぁ、ケースから気になる惣菜を取り出して、乾杯しましょう。
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歴史ある街の歴史ある店は、間違いない
多賀大社信仰や、中山道の宿場町、そして彦根城を藩庁にした彦根藩のお膝元として、古くから栄えてきた滋賀県東部の街、彦根。彦根城を中心とした観光都市ですが、京都までJR東海道線の新快速で50分という利便性から、近畿圏のベッドタウンとしての表情も併せ持ちます。
そんな彦根のグルメといえば、老舗の料亭や懐石料理店などで食べる近江牛が有名ですが、なにも高級な食事だけが街の味ではありません。街の人が親の世代から通い続けている大衆的な店も魅力満点。
今回ご紹介する店は、昭和の彦根をぎゅっと詰め込んだタイムカプセルのような食堂です。
店の名は『はやの食堂』。彦根城とJR彦根駅を一直線で結ぶ駅前お城通り沿いで、滋賀県湖東合同庁舎や彦根市役所といった官庁を斜向いにみる場所にあります。
外観
創業は1928年(昭和3年)と古く、代々家族で暖簾を引き継ぎ営業してきた店です。全国的にこうした食堂は次々と姿を消している中で、『はやの食堂』は、店を営む夫婦も、訪ねてくるお客さんも元気一杯で、”街に根付く活きた店”としてここにあります。
店構えはかなり年季が入っています。それでも、この曇ガラスの向こう側は昼食時になると満卓近い賑わいになります。出前もおこなっているのか、店先にはピカピカに輝くスーパーカブが臨戦態勢で待機していました。
内観
店の歴史がつまった店内。土間の床にずらりと並ぶテーブル。壁には昔の蒸気機関車や琵琶湖、鈴鹿の山々などの写真が飾られています。装飾が多く、まるでタイムカプセルの中にいる気分。見ていて飽きません。
それにしても、夫婦で切り盛りするにはかなりの大きさです。店の奥は大きなテーブル席となっており、ランチタイムを過ぎたころには酒場利用するお父さんたちの姿がありました。
品書き
お酒
瓶ビール(アサヒスーパードライ・キリンラガー)大瓶:550円、日本酒:350円。
食事
おつまみになる料理は、フライ盛り合わせ:300円、肉鍋:700円、オムレツ:650円、とんかつ:650円、湯豆腐:300円、ハムエッグ:300円、玉吸い:130円など。
ご飯・麺類は関西でみかける木の葉丼(蒲鉾、青ネギ、椎茸卵綴じ丼):580円や、おつまみにもなるオムライス:550円、カツカレー:650円、滋賀・長浜発祥ののっぺうどん:480円もあります。
人々の日常の暮らしを感じる食堂で
キリンラガー大瓶(550円)
昼食時は官庁や企業に勤めているようなスーツ・作業着姿のお客さんで賑わいます。皆さん、先輩からお店を教わり引き継いできたような、通い慣れた方ばかり。家庭的で、まさにお母さんという感じの女将さんが、常連さんたちと和やかに会話しています。
そんなあったかい空間で飲むビールは美味しい!キリンラガーで乾杯です。
品書きにない料理も!ショーケース
さて、手元のメニューからオムライスなどを頼んでも良いのですが、せっかくならば”食堂飲み”の醍醐味である、ショーケースの惣菜をつまみましょうか。
煮物、鯖煮、おひたしにハンバーグなどが並んでいます。「ご自由にどうぞ」と女将さんがおっしゃるので、ガラガラとガラス戸を動かして、魚フライの甘酢あんかけを。
白身の魚フライ(300円ほど)
こういうのが良いのです。小皿でちびちびとビールが飲める、味わい深い食堂飲みの楽しさ、ここにあり。なお、同店はお昼から夜まで通しで営業されておりますので、飲酒メインの利用は混雑する昼食時を外して伺うのがよいと思います。
天井が高いことで、一層開放感があります。各テーブルに置かれたお茶が入るやかんも素敵です。
豚汁大(150円)
瓶ビールの追加と、もう一品。丼サイズのお椀いっぱいに注がれた豚汁です。
木の葉丼や親子丼、カツカレーなどは、アタマ(具)だけを別盛りで用意してくれます。カツ丼(600円)のアタマなら、かつ煮に変身します。
ほとんどの料理が500円前後と大変リーズナブルですから、彦根のお昼飲みはお手頃価格で大満足になること間違いなし!女将さんの気配り、心配りが素晴らしく、彦根の街がもっと好きになりました。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | はやの食堂 |
住所 | 滋賀県彦根市佐和町7-11 |
営業時間 | 12:00〜19:30(日定休) |
開業年 | 1928年 |