大塚で70年近く営業する、夫婦で守る老舗のお店「太平食堂」。絵に描いたような大衆食堂の佇まいは、食堂で飲むことが好きな人を惹きつけています。
東京はスクラップ・アンド・ビルドで街の景色を常に変化させて成長していますが、歩いてみればまだまだ昭和の風景に出会うものです。都電荒川線のゴトゴトという音と聞きながら、大塚駅から歩くこと徒歩5分。
蛍光灯の光に照らされて、くもりガラスごしにお客さんたちが見えています。今日も変わらずご盛業の様子。
木目調のテーブルに、蕎麦屋にあるような背もたれが腰のあたりまでしかない小さな椅子、そんな4人テーブルセットが数卓と、奥には小上がりというつくり。夜はほとんどの方がビールを片手に、晩酌を楽しまれています。「いらっしゃいませ。」と丁寧に迎えてくれる接客担当の女将さんと、調理を担当されているご主人。ホッとする雰囲気です。
まずはビールでしょう。樽生ビールはキリン一番搾り(中550円)。ビン(大ビン550円)はアサヒスーパードライとキリンラガーのふたつを置いています。
それでは、トトトと注いで、では乾杯!
ビールのほかに、西郷の日本酒「沢の鶴」と、宝焼酎ベースのウーロンハイが用意されています。
店先の看板の通り、鰻料理からラーメンまで、幅広く揃っています。ソース焼きそば(530円)でウーロンハイを飲みすすめるもよし、うなぎ肝焼きと沢の鶴瓶詰め生酒をちびりとなめるもよし。
カキフライ(500円)やなすしょうがいため(300円)など日替わり料理がホワイトボードで書き足されています。10月から4月まではたらちりなど(850円)の鍋料理の提供もあり、夜はお酒を飲んでと語りかけてくるような品揃えです。
炒めものや餃子など300円均一で、昨今の低価格居酒屋に負けず劣らず、お財布に優しい値段を維持されています。
ビールについてくる枝豆をつまみつつ、テレビをぼんやり眺めて癒やしのひととき。小上がりの畳の上で、心がとろけていく感覚です。
がんも煮(200円)。しっかり甘いのが嬉しいな。
湯豆腐(450円)。たらちりではないですが、ちょっぴり豆腐にまざってタラが入っているのがステキ。薬味いりのポン酢も鍋の中でいっしょに温まっています。
レバーにら炒め(500円)。ボリューム満点、具だくさん。レバーにはとろみのある餡がわずかに絡んでいて、これが味のポイント。日の通り方も絶妙でパサパサ感はありません。
湯豆腐とレバニラのコンビネーション。『好きなものを食べればいいじゃない』、という食堂飲みの醍醐味を満喫です。
麦茶割りのような色になるまで焼酎が入っている、ウーロンハイ。甲類の風味はレバーにらの濃いめの味と好相性です。
あなご天ぷら(550円)。肉厚で立派なあなごなのにこの価格。衣の揚がり具合と身のしっとり感のコントラストが心地よいです。
昭和20年代から続く食堂が、いまの時代もここにある。いろんなコンセプトをもった新しい居酒屋やレストランが次々登場していますが、やはり王道中の王道はよいものです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
天平食堂
03-3917-5391
東京都豊島区北大塚1-34-13
11:30~14:30・17:40~21:40(日祝定休)
予算1,800円