人口約270万人を誇る台湾の主要都市、台北。小籠包やタピオカスイーツがこの街のグルメの代表格ですが、ノンベエは夜市が旅のハイライトでしょう。
台湾では寺院や市場の周辺に年中無休で開かれるナイトマーケットがあります。その中でも最大級と言われているのが「士林夜市(シーリンイエシー」)です。台北の中心街から台北捷運(MRT・台北メトロ)でダイレクトにアクセスでき、最寄りの剣潭駅から市場の中心まで500m以上に渡り飲食店や雑貨店のテナントや屋台が連なっています。さらにそれを囲むように入り組んだ路地にも露店があるので、一通り見て回ろうとすると、数時間コースという大きさです。
そんな士林夜市から、今回は薬膳スペアリブを肴にして台湾ビールを楽しみたいと思います。
アーケードの中にびっしりと雑貨店が並ぶ、公有市場。
地階は飲食店が立ち並ぶ、屋台風のフードコートになっています。近代的なスペースで空調も効いているのて、落ち着いて食事するにはここも良さそうです。巨大なチキンの唐揚げ「豪大大鶏排(ハオダダージーパイ)」や牡蠣オムレツの「蚵仔煎(オーアーチェン)」など、台湾の屋台グルメが勢揃いしています。
日本人の観光客の姿もありますが、8割は地元の人々です。とにかく人が多く、家族連れははぐれないようにご注意を。
そこかしこに美味しそうな屋台があり、「肉」や「飯」のカラフルな文字が踊っています。アジアの多くの国に言えますが、お酒を置いている露店は少なめ。ただし、持ち込みOKなお店もあります。
士林慈諴宮が夜市の中心に鎮座します。道教の女神(航海・漁業の守護神)、天上聖母を主神に祭っているそうです。遅い時間まで開かれています。
日本ではあまり見かけなくなってきた風景がここには残っています。そして、たくさんの人が行き交い買い物を楽しんでいます。レトロな町並みを見て歩くのが好きな私は常時テンション高めです。
さて、目的のお店につきました。ここは夜市沿いのバス通りにある町の食堂「士林十全排骨店」。お客さんに日本人はゼロで、中国語オンリーの会話が飛び交っています。ただ、お店の人もフレンドリーなので、勢いでなんとかなります。
店先の巨大な寸胴でグツグツ煮込む「十全排骨」の強烈な香りが辺り一帯を包んでいます。アジアの独特な甘いようなで苦いようなあの香り、好きな人にはたまりません。
店先が厨房なので、スタッフのおじさんに挨拶をして店内へ。注文は手書きのオーダーシート方式です。高くても100NT$(約360円)とリーズナブルです。期待通りのものが出てくるように祈りながらチェックを入れます。
ビールは伝票になくとも、店内の冷蔵庫に入っていることが多い台湾。口頭で注文して、プラコップと一緒に登場の「台湾ビール」。トトトと注いで、では乾杯!
看板メニューで、店先に強烈な香りを漂わせている薬膳スペアリブこと十全排骨(70NT$)。甘いタレとピリカラの魚醤風タレ、二種類の味が楽しめます。
聞けば13種類の漢方をたっぷり使っているそうです。味は予想される漢方のストレートな印象はなく、後を引くコクがあります。このスープとタレの相性が抜群で、スペアリブを頬張りながらビールがグングンと進みます。(※お酒は適量で)
クタクタに煮込まれていますがパサツキはなく、骨の隙間までしゃぶりたいジューシーさがあります。
滋養強壮、スタミナ回復に期待。日々の飲み歩きもこれでまっさらリセットかも?
マレーシアのバクテーという料理に似ていますが、こちらのほうがダイナミックな酒の肴と言えそうです。
もう一品いただきましょう。台湾最強のニオイがある料理「臭豆腐」です。名前のごとく、とにかく強い香りです。伝統的な軽食で、台湾の夜市で一度は食べておきたい土地の味です。
豆腐を発酵液といっしょに浸けたもので、日本の料理では嗅ぐことのないニオイを漂わせます。台湾では白菜の漬物とチリソース風のピリカラソースをつけるのが定番の食べ方です。この油揚げのように揚げた臭豆腐は、台湾ビールと相性バッチリ。
発酵食品に慣れている日本人ならば、好きな人も多いのでは?台北を訪れる際はぜひ台湾ビールと一緒に楽しんでみてください。
創業20年、屋台から始まった食堂のご紹介でした。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
士林十全排骨店
+886 2 2888 1057
111 台湾台北士林區基河路119號
予算300NT$