東北最大の都市・仙台は、飲み屋街の規模も広大。今でも古いアーケード飲み屋街や横丁が大小様々残っていて、梯子酒の合間でそんな路地を覗くのも楽しい。昭和の映画でみかけるような世界がここにはあり、現在でも活きた街として店内から笑い声が溢れています。
しばらく、私も仙台に暮らして酒場を巡りたいものです。
今宵はそんな飲み屋街の中から、大定番の店「居酒屋おかん」をご紹介します。
国分町でも、文化横丁とも違う場所、ここは仙台朝市商店街。オフィスやドラッグストア、おしゃれなカフェなどが並ぶ静かな街並みです。明るいうちは姿を隠しているビルの地階や空中階に飲み屋が、夜になると至る所から「いいあんばい」のオーラを漂わせてきます。
創業は2007年で、今年で10年目となります。仙台の飲食店で働いていた店主ら男性3人で独立した酒場。おかんは居ないけど、サラリーマンが週に一回飲みに行くような暖かい店を目指して「おかん」とつけたそうです。
“老舗”とまではいかなくとも、すでに街にはなくてはならない名酒場のポジションになっています。
店は地階ながら広く、調理風景を眺める特等席のカウンターが10席、テーブル席は30ほどあり、コンセプト通り、いつも満席ごめんの賑わいでサラリーマングループで賑わいます。
お酒はビールが珍しくキリンラガーの大樽(RL・生中530円)を置いています。瓶はクラシックラガー。富士山麓もしくは角のハイボール400円、宮城でもホッピーを扱っています。
メインには日本酒で東北の地酒・陸奥八仙やあたごのまつ、伯楽星、阿部勘などがもっきりサイズで450円から置いています。
生ビールに大・中・小とあるならば、悩むことなく大生(690円)で。ぐいぐい飲もうよ、宮城のラガーで乾杯。
日替わりのお通し地のものの海産物が使われています。ひょいとでてくるお通しが美味しいと、これからが期待できますね。
定番はおかんのどて煮(480円)、鶏の唐揚げはボリューム満点と食べ盛りの友人談ですが、ううむ。定番は鶏料理や炒め物が一通りですが、本番はこれから。
日替わりメニューがとにかくパワフルなんです。刺身はよっぽどのことがなければ10種類近く選べます。宮城の海産物の見本市のような顔ぶれは、季節によって異なり、集う人たちを飽きさせません。
冬から春にかけてが旬のセリをもらって、ビールや日本酒をきゅっと合わせていきます。派手さはなくていいの、これが一番ほっとするのだから。
ホウボウは今が旬。脂がのった上質な白身がたまらない。甘さを感じた後、ぐっとくる旨味がいい。とろっとした柔らかさが心地いいです。宮城の郷土の味・ミンククジラもお刺身で。濃厚な味わいながら、余韻はとてもすっきり。すっきりした味の日本酒が間違いのない組み合わせでしょう。
手作りハムカツ(480円)はミルフィーユ状で中にはチーズが入っています。自家製さつまあげや、笹かまぼこの天ぷらなど、揚げ物も日替わりになっていて、どんなものが出てくるのかはその日のお楽しみ。
かなり大きく食べごたえのあるハムカツなどの揚げ物は、やはりサラリーマンの胃袋を引きつけるようで。カキフライやアジフライも、鮮度の良いものをリーズナブルに食べさせてれます。
のど黒、金華サバ、サワラ、サクラマスからホヤまで。近隣の旬のものが次々と入ってくる郷土居酒屋なのに、気どらず庶民的なのが素敵です。地元に愛される定番で一献、いかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)