新前橋に、それはそれはしびれる外観の酒場があります。NHK BSで「世界入りにくい居酒屋」という番組がありますが、群馬県ならば間違いなくここでしょうというディープでコアで酒場ファンの心を夢中にさせるお店です。
飲食店めぐりの上級者であっても躊躇する外観ながら、その向こう側には温かく親切で、そしてサービス満点なご主人がまっているのです。
まず立地がすごい。新前橋駅から徒歩1分という距離ながら、このお店一軒しかない私道のような細い建物と建物の間の隙間を抜けていった先にあるのです。路地というレベルではなく、本当に建物同士の隙間の向こう側なのです。
そしてたどり着いて外観を見るとこれなのです。暖簾は今にも朽ちてしまいそうなほど年季が入っています。さぁ、あなたはこの暖簾をくぐれるか!(笑)
扉に手をかけた瞬間、この酒場は”いける”と感じるものがあります。店内はカウンターとテーブル数卓、小上がりで10人ちょっとで満席になるこじんまりとした酒場です。カウンターは昔はお客さん用だったようですが、ボトルキープの一升瓶が飽和状態でカウンターを埋め尽くしています。
あんまり清潔じゃないなーって感じる人はいるかもしれませんが、食品を扱うところはとても掃除が行き届いています。その証拠がこの生ビール。サッポロ黒ラベルのつながったディスペンサーの回路は半透明で美しい。そう、この外観から想像できないほどビールの質がいいんです。キリっとした生ビールに思わずにんまり。では乾杯。
カウンターの上には申し訳程度にかかれた品書き。ですがこれを最初から頼む必要はありません。なんとここ、基本お通しだけで飲めるお店なのです。あと、メニューに載っていない料理も多いので、ここはなんとなく雰囲気で感じ取ってくださればという品書きです。
どんなお通しかと思うでしょ。これなんです、なんとお刺身がお通しです。しかもこんなに!いわし、まぐろ、とろなど日替わりでこれでもかと盛られてきます。二軒目、三軒目で来るとこれだけでも持て余してしまいそうなほど。そして、盛り付けは大雑把ですが、ネタはとてもよく、満腹でももりもりと食べたくなる魔法のお刺身です。
お通しは続きます。自分の畑でつくっているという白菜の漬物や北海道出身のご主人の故郷の味、北海道の珍味がでてくることも。これも含めてお通しなのです。足りなければもちろん追加できますが、そのときもご主人と話し合うと程よいボリュームで食べたいものが出て来るはずです。
ビールが進む、そして日本酒に移りたくなります。こちらの日本酒は吉乃川が定番酒。長い間ずっと扱っていたそうですが、最近偶然、営業さんが飲みに来たそうで、すっかり吉乃川びいきが強くなったご主人でした。
昔ながらのやかんが載ったストーブに暖められつつ、しっぽりと飲む黒ラベルや吉乃川は最高です。ご主人の雰囲気も優しく、そしてお話し好きで明るい方で居心地がいい。旅先の酒場の出会いは楽しいといつも思いますが、ここはまさしく旅先で出会いたい酒場のあるべき姿を持っているように思います。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
十力勝(とりしょう)
027-253-3853
群馬県前橋市新前橋町26-6
予算2,200円