「祇園でハモやモロコをつまみに吟醸酒を飲む」と聞いたら、お財布事情が心配。ですがご安心を。今回ご紹介する『遊亀』(ゆうき)は安心して飲みに行ける大衆居酒屋。彦根にある金亀蔵元の「岡村本家」の直営店です。
目次
数ある京都の蔵元直営店の中で遊亀を選ぶ理由
居酒屋好きにとって、京都は特別な場所。京都の伝統的な食文化を取り込んだ居酒屋は、同じ近畿でも他府県と大違いです。
京都の居酒屋の特長は、「京都の食」の特長でもあるのですが、大阪湾・瀬戸内、若狭湾・日本海、琵琶湖・河川と、京都という”地の利”を活かした南北の海、及び川魚を集めた豊富な魚種が楽しめることだと思います。
加えて、日本酒製造量2位(1位は兵庫)であり、酒の一大消費地であることも大きいです。多くの蔵元が直営店を構えており、お酒好きにとって直営飲食店めぐりはひとつの観光コースになっています。
そんな京都の「魚」と「蔵元直営」を楽しむ上で外すことができない店。それが今回ご紹介する『遊龜(遊亀)』です。
170年前、彦根藩の時代から酒造りをしている「金亀」の蔵元「岡村本家」の直営店。当主が6代目になった2009年、祇園に『遊亀』も誕生しました。錚々たる老舗が集まる祇園ではまだ新しい部類に入る居酒屋ですが、多くの居酒屋ファンの心を掴んでいます。
入り口にいる追い回し風の若い方に挨拶して、店内へ。調理場と客席を隔てるものは、多数貼られた短冊程度で、調理風景がよく見える割烹スタイルの店です。
中央の島には無駄な動きが一切ない、腕の良い花板さんがいて、次々入る注文を黙々とこなしています。そんな様子を眺める変形コの字カウンターが伸びており、多少窮屈でも一人飲みならばここが特等席でしょう。
窓側にもカウンターがあり、こちらは祇園の富永町通切通しの往来が眺められ、都の歓楽街の賑わいが感じられます。
二階、三階は座敷になっており、4人以上のグループは上へ通されるようです。
大衆的で活気があります。酒は300円から、料理は高級食材だと値が張りますが、全体的には普段遣いもできるような設定。祇園でこれは素晴らしいです。
品書き
お酒
- 瓶ビール サントリー ザ・モルツ:660円
- 樽生ビール サントリー ザ・モルツ:440円~
- サントリーレモンサワー:440円~
金亀の日本酒いろいろ
精米歩合別 岡村本家のお酒:440円~
10%ずつのグラデーションは見事。精米歩合の差による味違いを試してみたくなります!
- 生酒しぼりたて:450円~
- 生酒にごり酒:420円~
- 本醸造黒松:300円~
- サケサワー:480円
料理
- お造り五種盛り:2,100円
- 寒ぶりお造り:1,100円
- 天然本鮪中トロお造り・天然真鯛お造り・はもおとし:各1,400円
- 寒サバの筋酢ジメ:900円
- 鴨ロース焼:780円
- 西京味噌漬焼:960円
- たち白子:580円~
- とらふぐ唐揚げ・ふぎ焼き:各500円
- 海老天入り天ぷら盛り合わせ:780円
- バイ貝のうま煮:550円
- 氷頭なます:500円
- アジフライ:580円
- ハモの天ぷら・タイカツ・タイの揚出し・蛸の天ぷら:各680円
- イサザ(琵琶湖の固有種)の甘露煮:480円
- 一本ずつ手作りだし巻き:520円~
- 海老芋田楽・揚出し・唐揚げ:800円~
- 米茄子田楽:800円
- 生れんこん:680円~
- 京漬物の盛り合わせ:550円
良心価格の酒と肴、気軽に楽しめます
サントリーザ・モルツ(660円)
酒造メーカーの直営店とはいえ、やはり最初はビールで喉を整えたい。樽生、瓶ともにサントリーザ・モルツです。それでは乾杯!
突き出し(お通し)は日替わりです。佃煮だったり、漬物だったり。この日はイカと小松菜の炊いたんです。
はもおとし(1,400円)
鯛、河豚、牡蠣、寒ぶりなど、これだけ魅力的な顔ぶれだと目移りしてしまいます。ですが、せっかくの京都です。やはり鱧(はも)を食べなくては。花板さんが手際よく仕上げてくれた「はもおとし」は、この通り盛り付けもキレイ。
鱧好きなので東京でもみかけたら積極的に食べていますが、やはり京都は味が違う。淡白だと言われがちな鱧。これは、脂が乗っていてしっとり。噛むほどに濃厚な旨味が広がります。これはすぐに日本酒へシフトしないと。
鱧のホネを揚げているなーと見ていたら、こちらにきました。鱧を注文の人にはサービスで提供しているとのこと。海老の造りを注文すると、そちらも頭は素揚げにしてくれるようです。
生酒にごり(420円)
濃い味の鱧骨せんべいにあわせるには、パワフルなお酒がいい。ということで、酵母が生きた濃厚なお酒、「生酒にごり」をもらいました。銘柄はもちろん金亀です。
世界的な”SAKE”ブームもあるからか、通っぽい外国人客も多く、私の隣も欧米系の一人客でした。にごり酒が気になったようで、私に続いて注文されていました。
琵琶湖モロコ唐揚げ(580円)
さて、つぎのおつまみはどうしましょう。滋賀の酒ですし、琵琶湖の魚にしましょうか。選んだのはモロコ唐揚げ。表面はサクッとしていて、中はモロコ特有の”チリチリ”と細かな身がしっとり。いい味です。
黒松(300円)
あぁ、楽しくなってきました。もう一杯。次は定番酒の本醸造を。湯煎で燗をつけたものを目の前で注いでくれます。バランス型で、食を進ませるお酒でした。
ごちそうさま
河原町・祇園周辺に勤める方が普段遣いの店としてやってくるような店です。もちろん、世界的な観光地ですから観光客の姿も多い。それでもリピーターが多いため、活気があってもソワソワした雰囲気ではなく、どっしり飲みたい人が集っているという印象です。
こういう場所で過ごす時間も、京都の魅力の一つだと私は思います。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 遊亀 祇園店 |
住所 | 京都府京都市東山区富永町111-1 |
営業時間 | 営業時間 [月~金] 16:00~22:00(L.O.21:30) [土・祝前] 16:00~23:00(L.O.22:30) 定休日 日曜日、祝日 |
創業 | 運営母体の岡村本家は1854年創業 遊亀は2009年オープン |