東京の下町はもつ煮込みで飲む文化が開花した場所。いまでは当たり前になっている「煮込み」は東京下町が発祥の地です。
まさに、東京の郷土料理と言えますね。
煮込みと甲類焼酎の組み合わせは戦後貧しい頃に登場したマリアージュです。
さて、そんな煮込みを食べさせてくれる歴史あるお店を紹介します。
東京メトロ日比谷線から徒歩5分。都電荒川線の三ノ輪橋駅のすぐ近くにある「弁慶」はこの界隈のお酒飲みにはなくてはならない場所です。
わかりづらい路地の、提灯・暖簾しかでていない店構えは一見さんだと躊躇される方もいらっしゃると思いますが、ここはとても美味しく、安くて、カッコイイお店なんです。
店内は10席ちょっとの小さなコノ字カウンター。内側がオープンキッチンになっている下町の典型的な飲み屋さんのつくりです。
「いらっしゃい、寒いね!」
雪の日に取材しましたが、18時前で店内はほぼ満席。奥の隅っこを常連さんからわけてもらって、まずはチューハイを。
ここの焼酎ハイボールは琥珀色をしていない純粋なもの。キンミヤ20度に自家製タンサンを注ぎ込んでスライスレモンを一枚。これだけで十分美味しいんですよね。値段はなんと250円。
名物の煮込みは串に刺さっています。フワ、ハチノス、シロ、ナンコツの4種類。1本50円なので、ひとりでひと通り頼むがよいです。シロは最近のお店で言う「シロコロ」状でして、とろとろのゼラチンのかたまりが実に美味。ナンコツは柔らかくくつくつに煮込まれていて、これもあとをひきます。見た目は味が濃そうですが、実際食べてみるととてもやさしい味。一人8本くらい食べる人も多いです。
今日は鰈が美味しいよと若大将。
ここの若大将は金髪で短く、声が大きくとにかく江戸っ子。喋りたがりさんで常連さんの輪の中で下町言葉をずっとしゃべっているのですが、それがまたかっこいい。女将さんはこの方のお母さんで、この方はとてもおしとやかで優しさがあふれています。家族経営の酒場ならではの温かみであふれています。
ビールはサッポロ生ビール。グラスビールは200円なのですが、結構な量があります。サーバーのお手入れが良いようで、泡立ち・ガス圧・香りともにいい感じ。
煮込み以外にもお刺身やフライものが揃っていて、常連さん方が毎日通っても飽きないような工夫をされています。この日はめずらしい、キーマカレーなるおつまみが。それをオムレツにしたキーマオムレツは、スパイスの香りとひき肉の旨味がなかなか。こういう家庭料理をおつまみに飲む焼酎ハイボールはやっぱり美味しいんです。
自家製のタンサンをそそぐディスペンサー。中心にある煮込みの鍋もそうですが、古いお店でもとても手入れが行き届いています。強タンサンを注ぐのでチューハイはしっかり泡立ちますが、ここも下町の酒場なので焼酎はめちゃめちゃ濃い目。グラスの半分近くまでキンミヤが注がれます。
うーん、このモツ煮込みとチューハイの組み合わせ、そして常連さんが集うこの温かい空間。下町酒場は、チェーン店には絶対に真似のできないものがあり、立派な文化だと思います。
常連さんと大将、女将、そしてお店のいぶされたこの空間。やっぱりいものですね♪
一見さんは、どうぞ常連さんに最大限の配慮をされた上で、覗いてみてください。きっと楽しいです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見なゆ)
店名 | 弁慶 |
住所 | 東京都荒川区南千住1丁目15-16 |
営業時間 | 営業時間 [平日・祝] 15:00~22:00 [土・日] 14:30~22:00 早仕舞いあり 日曜営業 定休日 水曜 |