鶯谷『ささのや』70余年続く鶯谷の顔。安さも嬉しい、もつ焼1本80円

鶯谷『ささのや』70余年続く鶯谷の顔。安さも嬉しい、もつ焼1本80円

2022年5月27日

昭和25年から続く鶯谷のランドマーク的なもつ焼き酒場『ささのや』。15時の口開けから常連さんでいっぱいになる人気店です。人気の理由は串焼きが1本80円という安さにありますが、この街の人々に親しまれてきた長い歴史もお酒を美味しくします。

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午後3時開店。鶯谷に狼煙が上がる。

JR鶯谷駅の南口をでると、10本以上の線路をまたぐ巨大な凌雲橋(新坂跨線橋)にでます。電車が行き交う線路を越えた先、言問通り側が鶯谷の歓楽街です。この橋の袂は、午後3時を過ぎると煙が立ち上ります。この狼煙が炭火もつ焼き『ささのや』営業中の合図です。

外観

ささのやの創業は戦後まもない1950年。以来、代々家族で経営を続けており、いまでは70余年の歴史をもつ界隈きっての老舗酒場となりました。

15時オープンと開店は一足早めなのですが、それでも”まってました”とばかりに常連さんたちが店内へ流れ込みます。店の奥は椅子のあるテーブル席ですが、あえて店先のP箱(ビールケース)を流用した立ち飲みコーナーを選ぶベテランさんも多いです。すでにお勤めをリタイアされていても、『ささのや』で飲むために遠方から電車で通うという黒帯飲兵衛さんも少なくありません。

焼台

店頭の焼き場は二人体制。炭火の焼台を目いっぱい使用し、待ったなしに串が焼き続けられています。というのも、店内で飲む人だけでなく、テイクアウトで購入する人も多く、10本単位で次々と売れていくのです。客層は近隣でお仕事をする人や家族連れ、会社帰りの人など、利用者は老若男女さまざま。

基本的にタレ味で焼かれており、焼き上がった串は焼台前のオリジナル容器にストックされていきます。店内で飲む人の中には、このストックされたもつ焼きを慣れた手つきで自分で串を持っていく人もいます。串の本数で会計するため、セルフも可能というわけです。※必ずアルコール消毒を。慣れていない人は店員さんにお願いしましょう。

立ち飲みスペースの一画には、デーンと昔ながらのドブ漬け冷蔵庫が鎮座しています。氷水でじっくり冷やしたキリンラガービールがちらりと見えたら、これはもう飲まずにはいられないでしょう。

品書き

お酒

生ビール大樽キリンラガー)中:500円、瓶ヒールキリンラガー):530円。サワー類はレモンサワー:350円、ウーロンハイ:350円、お茶ハイ:350円、すだちサワー:400円、ジョニーウォーカーハイボール:350円など。

日本酒は富貴:220円、にごり酒(喜久水酒造 あばれ天龍):260円など。

串焼き

串焼きはレバーシロタンハツカシラナンコツネギマチキンボールネギウィンナー:各80円。タレ事前に焼かれていますが、塩は注文を受けてから調理するため3本から。

サイドメニューは自家製のぬか漬けおしんこ:300円、オニオンサラダ:220円、梅くらげ:250円など。そのほか冬季(10月~4月)限定で牛もつ煮込み:360円があります。

ロケーション、歴史、安さ、すべてが特別です

キリンラガー中瓶(530円)

特別な酒場の定義はまちまちですが、唯一無二の場所といえば、ここ『ささのや』はまさしくそうした場所です。長年使い込んだ店に、連日大勢のお客さんがやってきては、さくっと千円ちょっとの晩酌を楽しんでいく――。ある意味、町のインフラです。飲み屋の多い鶯谷ですが、『ささのや』の役割をこなせる店は他にないでしょう。

時刻は16時。早めに仕事を終えたお客さんたちにまざって、水冷のキリンラガーで乾杯!

なんこつ・かしら・しろ(各80円)

常に手を止めることなく冷蔵庫からその日串打ちしたもが次々と焼かれていきます。その煙もまた酒の肴。

予め焼いてストックしてあるため、串は注文後すぐにでてきます。ですが、軽く温め直してくれているので冷たくはありません。

継ぎ足し続けてきた甘くてとろみのあるタレがモツ肉の隅々まで染み込み、串は夕日を浴びて輝いています。美味しそう!

もちもち、コリッコリのモツはどれもあと引く美味しさです。おすすめはナンコツですが、シロも下処理がよくクサミは感じません。カシラは安定の美味しさです。

おしんこ(300円)

長年育ててきたであろうぬか床の旨さが際立つキュウリが絶品。味の素が別途用意されており、軽くふりかけて食べるのも懐かしい味になってよいものです。

すだちサワー(400円)

お酒のラインナップはそれほど多くありませんが、お店独自のサワーがあります。それがこのすだちサワー。瀬戸内産のすだちを使用した爽快感と果実感を感じる一杯

お酒が合同酒精(松戸)の富貴であるように、ベースの焼酎も甲類焼酎大手の合同酒精です。キリっとした味で気持ちよくほろ酔いになりました。

安さだけではない、優しいお店

焼き番から接客まで、店の運営は女将さんやお姉さんたちが中心となって切り盛りされています。そのため女性一人でも安心して利用可能。初めての人、長く通う常連さんにも変わりなく親切に応対してくれるのも『ささのや』の魅力です。店先にお酒を飲む人があふれている空間だと初めての方は躊躇するかもしれませんが、勇気を出して立ち寄られてみてはいかがでしょう。

取材時、店員さんたちは歌を口ずさみながら陽気にやっていらっしゃいました。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名ささのや
住所東京都台東区根岸1-3-20
営業時間15:00~22:00(日祝定休)
開業年1950年