麻布十番「山忠」 創業半世紀。どっしり構えた渋い酒場は最高です。

麻布十番「山忠」 創業半世紀。どっしり構えた渋い酒場は最高です。

東京都港区、麻布十番。ハイソな街、インターナショナルな街、高級な飲食店が立ち並ぶ街。そんなイメージもある麻布十番ですが、実は大衆酒場もいくつかあります。

山忠(やまちゅう)は創業は1970年。半世紀を迎えた、街を代表する老舗の居酒屋のひとつ。家族経営で現在は2代目が中心となり切り盛りされています。

まぐろから始まるお刺身に、焼き魚、焼き鳥、フライなど、酒場のおなじみの顔ぶれが揃った王道の品揃えに、気の向くままに訪ねてもきっと食べたいおつまみがみつかるはずです。

 

東京タワーにも近い麻布十番。浜松町から増上寺、東京タワーを横目に見つつ15分ほど散歩をしつつ向かうのも楽しいです。最寄り駅は地下鉄麻布十番駅。

 

店構えも申し分ないほどに大衆酒場です。店先に置かれた黄色い通箱(P箱)は目黒の割材メーカー・博水社のもの。

 

大衆割烹のスタイルで、調理場に向いてL字のカウンターを配置し、その横にテーブル席が並び、奥に座敷というつくり。一日にお客さんは2回転するような人気ぶりで、ピーク時には満席になることも珍しくありません。

 

まずは一杯、樽生ビールから。銘柄はサッポロ黒ラベル。1L入る大ジョッキ(900円)もありますが、今回は中ジョッキ(500円)で乾杯です。

 

ビールは樽生のサッポロのほかに、アサヒスーパードライ、キリンクラシックラガーのともに中ビン(600円)も用意されています。

定番の日本酒は灘の大手銘柄「大関」。酎ハイ類の割材はハイサワーです。

 

さてさて、何を頂きましょう。600円前後の価格帯で、幅広い品ぞろえ。お店のイチオシは白エビ唐揚げ(750円)、焼きはまぐり(800円)など赤文字になっています。

これに加え、日替わりとしてかつお、ひらめ、とり貝、ホヤ、岩牡蠣などの旬の魚介類や、今日のお惣菜などがホワイトボードに書き加えられます。

 

お店のおすすめでもある「〆さば」(750円)。やや浅めに〆た鯖はまだ水々しさがあり、脂の旨味とコク、ほのかな酸味が大変に美味です。

 

酎ハイから緑茶割り(420円)を。老舗酒場でおなじみ、濃い黄緑色をした割材専用の業務用玉露茶(ポッカサッポロ)です。昔から続くこのお茶に、いろんな酒場の思い出があります。

 

特製肉豆腐(750円)。ちょっぴり小ぶりな鍋にクツクツと音を立ててやってきます。醤油、みりん、砂糖などのすき焼き風の味付けで、濃い味ながらあとをひきます。

 

口の中で程よい弾力を残しつつ溶けていく牛肉。ごぼうと食感と豆腐のコントラストも楽しいです。

 

小鍋は独り占めするのが贅沢で好き。そして、お銚子も今日は独り占め。大関の冷をもらって、トトトと注ぎひとくち。牛鍋風の甘い醤油味に、灘の辛口がすっとはまります。

 

焼き鳥は1本から注文可能です。焼き鳥(200円)とつくね(150円)。カウンターの一番入り口に近い内側に立つご主人が時折接客をはさみつつ、焼き鳥などを次々仕上げていきます。

カウンターでひとりお酒と肴に向き合いながら自分の時間を楽しむもよし、気の合う友人とテーブル席で日常的な宴を楽しむにも向いている酒場です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

山忠
03-3451-5003
東京都港区麻布十番2-19-11
17:00~23:00(不定休)
予算3,000円