板前さんがつくるお店をモチーフにしたチェーン飲食店がここ数年でぐんと数を増やしましたが、そのベンチマークとなったのは、昭和うまれの「大箱大衆割烹」でしょう。和食修行をした板前さんが旬の食材を刺身、焼き物、揚げ物などをコース形式ではなく客のお好みで用意する…。大衆酒場に近い存在ですが、そこには独特なパリッとした雰囲気があります。
大塚で大衆割烹といえば大塚北口商栄会にある「豊川」がまずは名前が挙がります。調理場に向いたカウンター席はお一人の常連さんが多く、入れ込み座敷は各々寛いでいるお店。いまはこういうお店はだいぶ数を減らしてしまいましたが、座敷でぼんやり過ごす時間はやはり心地よいものです。
大塚駅徒歩3分という立地に加え、営業時間はお昼の11時半から夜の11時半までまるまる12時間とロングランで、いつでもやっている利便性も魅力です。大箱なので、酒場慣れした人たちの昼酒宴会のニーズも満たしてくれます。Syupoはだいたい個人飲み向けの酒場を紹介していますが、ここ豊川は宴会利用でもおすすめしたい場所。
老舗でも厨房機器はピカピカ。カウンターには近隣にお住まいの常連さんがいつもの席に座り、いつものお酒を傾けています。厨房の板前さん、そしてフロアの女将さんは親しみある印象。お手伝いの外国人店員さんも丁寧です。
店の大半は昔ながらの畳座敷。土足を各自レジ袋にいれ自席まで盛っていくスタイル。海の家とか、古い酒場の座敷にいくあの感じ。
まずは悩むことなくビールから。洗浄ばっちりの樽生ビールがありますが、今日は大ビン気分。さっとビアタン満たしたら、はい乾杯。
お通しの小鉢はその日の食材次第。この日は魚の唐揚げ。
ここの樽生の状態はとてもよく、生をおすすめできる一軒です。
樽生(550円・以下税別)、ビン(大ビン600円)ともにアサヒスーパードライ。酎ハイは嬉しい290円、ホッピーもあり白黒選べます。
さてさて、何をいただきましょう。定番の献立を見る前に、まずはホワイトボードからひとつ、ふたつ選びたいもの。ブリ、シメ鯖、ボタンエビ。つぶ貝焼き(480円)もいいですね。
ちょっぴり贅沢、ボタンエビ(780円)。カブトは揚げてだしてくれます。盛り付けが丁寧でまさに大衆割烹という一皿。
魚介から焼鳥までなんでも揃います。
そして、豊川最大の魅力といっても良いのが、甲類焼酎4合ビンのタイムサービス。
一般的にタイムサービスといえば早い時間に安いものですが、豊川は逆。15時を過ぎると、甲類がなんと一本税別980円。しかもハイトジンロの「JINRO」、サントリー「鏡月」、アサヒビール「サザン」の3銘柄から選べます。サザンって、久しぶりに見た気がします。
別途氷などのボトルセット300円を追加しても、これはかなり安い。二人で飲んでもかなりのアルコール量です。(お酒は適量で。)
そういえば、JINROのデザインがかわったのですね。
菜の花の辛子しょうゆ和え(400円)。
ソフトシェルクラブ(780円)。焼酎が安いので、料理は気持ち贅沢できるのも嬉しいです。脱皮したての蟹を揚げたソフトシェルクラブ。サワガニもそうですが、昔は結構、大衆割烹の定番でしたよね。
澤乃井(500円)。定番酒が290円と安く、地酒も500円均一で浦霞、酔鯨、八海山に久保田と昔ながらのお馴染みじ酒が揃います。
タラの芽天ぷら(550円)。
冬季ならば鍋料理も楽しめます。牡蠣バターなどをだしている豊川の牡蠣はとっても大ぶり。これをつかった牡蠣鍋は寒い季節の贅沢です。白味噌ベースのほっとする味付け。
17時から20時まで、居酒屋のピーク時にはなんと酎ハイや日本酒が150円。
料理は大衆割烹価格でもお酒がリーズナブル。上手に使って手頃な価格で楽しむもよし、座敷で数人でわいわいと料理を注文し時間を忘れて飲むのもよいものです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)
豊川
03-3915-2480
東京都豊島区北大塚2-6-8
11:30~23:30(基本無休)
予算2,500円