日本最東端の市、根室市。オホーツク海と太平洋、ふたつの海に面した根室は漁業で発展してきました。根室市の中心街は根室港に隣接しており、かつては大いに賑わいを見せたそうです。現在は町に人通りは少ないものの、暖簾の隙間から覗けば満卓の酒場があり、遅い時間にはスナックから演歌の歌声が漏れ聞こえるなど、まだまだ元気な飲食店街があります。
そんな根室でご紹介したい酒場は、やきとりの「鳥っ子」です。ベテランの女将さんが中心となって切り盛りする鳥の店。港町だけあって魚を楽しませてくれるお店が多い根室ですが、地元の皆さんが集まる場所のひとつが大衆焼鳥なのは自然なことです。
根室へは、東京・羽田空港からANAの直行便で根室中標津空港までひとっ飛び。陸路では、日本最東端のターミナル、JR根室駅が街の玄関となります。根室駅前から路線バスに乗れば一般人が訪問可能な日本最東端・納沙布岬を訪ねることもできます。
日の入りの早い根室。根室湾に沈む太陽を眺めつつ、そろそろ飲み屋街に繰り出す準備を。
海に近い場所が街の中心。JR根室駅からひたすら下り坂が続きます。
根室の夜は町を歩く分には賑やかとは言えませんが、タクシーの流しはありますし、ぽつぽつ灯る飲食店からは笑い声が聞こえ、町を歩いていて寂しさは感じません。こんな情緒のなかを歩けることが、むしろ根室にきた価値に感じます。
パワフルで笑顔いっぱいの女将さんが迎えてくれる「鳥っ子」。カウンターに座る皆さんが地元の常連さん。根室の産業や都市機能を動かす人々が集う場所。
まずは恵庭でつくられたサッポロ黒ラベル(550円)の樽生で乾杯!
大きめのオープンキッチンで中央に女将さんの調理台。アイランドキッチンと言わずに「調理台」で。お手伝いのお姉さん、そしてお客さんも皆さん働き盛りの世代で、活力を感じる酒場です。L字カウンターは10席、いい感じで皆さんの顔をみてお話できます。
焼鳥は160円均一。こにく、せいにく、ぼんじりなど、鶏で統一。5本600円のコースが初めての方向けとのこと。漬物やポテサラは300円台。鶏屋のモツ鍋(630円)は寒い時期にピッタリだそう。
その他、雰囲気任せで女将さんや常連さんのトークから教わりながら、適当に出してもらうのも楽しいです。
流氷岬と別名があるほど冬季は流氷が流れ着いていた納沙布岬。その付け根にある根室はやはり冬季は大変な自然環境の中にあります。そうした根室の夜に、炭火で焼いた焼鳥はさぞかし美味しいに違いありません。もちろん、通年で女将さんの焼鳥は美味しいと常連の皆さんに評判です。
甘さ控えめ、濃厚醤油味のつくね。仕込みは最小限にされているとのことで、焼鳥は品切れもあるそうです。もちもち食感とジューシーな肉汁がサッポロビールを進ませます。
常連さんのイチオシ、こにくは塩で。ぷりっぷりに脂がのった砂肝は、表面がカリカリ。
鶏もそうですが、野菜ももちろん道産素材。元気に育ったアスパラは、炭ではなくてフライパンでバターたっぷりに調理。みずみずしくコリコリした食感が心地いいです。
あわせる飲み物は、黒ラベルと同じくディスペンサーにつながった氷彩サワー。全国で飲めるサッポロのホワイトブランデーベースの業務用チューハイですが、根室でみる「氷彩」の文字はまた特別に感じます。
そうそう、ナショナルメーカーばかり飲んでいてはだめ。根室は日本最東端の日本酒「北の勝」があります。都心部ではまず見かけない地元向けの銘柄が置いてあり、カウンターで同席した地元の皆さんイチオシ、町の酒です。
女将さんから「ぜひ食べていって。美味しいよー」と出していただいたすじこ。売り物ではないそうですが、地元の美味しいものをぜひ食べていって欲しいと、ほかにも色々ご紹介いただきました。
根室の人々の息遣いが感じられる、これぞ大衆酒場。根室に訪れた際は、ぜひ土地の風土を感じに「鳥っ子」の暖簾ほくぐってみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
鳥っ子
0153-24-3777
北海道根室市梅ケ枝町1-13
17:00~23:00(日定休)
予算2,300円