※現在は別の場所(愛知県名古屋市中区栄2-7-13 ヴィア白川 B1F)で営業しています。
名古屋では「お値打ち」という言葉をよくみかけます。お値打ちという言葉そのものは全国的なものでも、名古屋の人々がお値打ちという言葉に込めた「ただ安いだけでなく、特別にお得に感じるもの」という意味は独特です。
そんな名古屋の「お値打ち」を体感できる酒場が、名古屋駅から地下鉄東山線で1駅の伏見駅にあります。駅から直結した昭和ムードそのままの伏見商店街にある立ち飲みの「千」です。
超高層ビルが林立する名古屋駅の未来感とは打って変わり、伏見は昭和の繊維街の雰囲気を色濃く残します。商店街も時がとまっているよう。平日は昼間から開くいっぱい飲み屋が並び、ノンベエがどこからともなく集まってきます。
「呑み処 千」のオープンは2016年とまだ新しいのですが、すっかり街の色に染まっています。商店街にはみ出すようなテーブル席で語り合うベテラン感あるお姉さんたちは、もちろんハイボールを片手に。
日本酒をメインとした立ち飲み。ここまではよくある業態です。
お酒の種類がとにかく多い。これも魅力ですが、種類の多さとお値打ち感は別のもの。
なにがお値打ちなのか。その答えがこれ。カウンターにずらりと並ぶ惣菜は、なんと無料なんです。お酒を一杯以上飲めば好きなだけ食べていいという、知る人ぞ知る「お値打ち感」がここにあります。
主役級のおつまみはないかもしれませんが、立ち飲みでちょっとした時間を過ごすには十分な内容です。お皿に盛って、おつまみの準備完了です。
常連さんも一見さんもわいわいと交流しながら飲む楽しい店内。丸テーブルに陣を置き、まずは飲み物を。日本酒がメインなのですが、初めはビールやハイボールも。サントリーモルツの大瓶が480円と今どきリーズナブル。生はザ・プレミアムモルツです。
単品で頼むもよし。でも、さらにお得はセットがあるので、こちらでよりお値打ちに。おつまみ食べ放題に加え、セットのおつまみで唐揚げ、焼きそば、おでんが加わります。ドリンクとの差額を考えれば、どう見ても安いです。
乾いた喉を潤す一杯目はサントリーの生。ザ・プレミアムモルツで。乾杯!
セットのおつまみはおでんを選びました。店でくつくつ煮込み、夏場も変わらず提供されています。
このままだとゼロ円のお惣菜にセットのおでんと、なんだかお店に申し訳なく思え、一番大きく書かれた刺身450円を注文することに。
スジのないキレイな赤身。立ち飲みとしては十分な内容でしょ。日本酒のおつまみとしてよい脇役です。
これたけ日本酒が並ぶとどれを飲もうか悩みこんでしまいます。華やかな銘柄がメインで、人気の新政(秋田)はラベル別で7種も用意。特別な銘柄を除き均一価格で90ml500円。
日本酒と賑やかな飲み屋を愛するマスターの思いが伝わる酒空間。地下鉄の発着毎に軽く吹いてくる風を感じ、いつもの名古屋とちょっと違った雰囲気です。
楽しい雰囲気でテーブルの上はずいぶんお店を広げてしまいました。
さて日本酒を。ワイングラスで飲むオシャレなスタイルでいただきます。
銘柄は鍋島(佐賀)の純米吟醸生酒。また個性的なものをもっていらっしゃる。
安いだけ、賑やかなだけでなく、ちゃんと芯としてよいお酒を気軽に飲んでほしいというお店の方針はしっかり受け入れられているようで、飲んでいながらも次々と仕事帰りのお客さんが集まってきます。
名古屋の横丁は地下にある。平日の夜は伏見地下街で梯子酒をしてみては。他にも魅力的な一杯飲み屋がずらりと並びます。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
呑み処 千
愛知県名古屋市中区錦2-13-24 伏見地下街
17:00~23:30(平日営業・施設の営業日に連動)
予算1,500円